国内ビール4位のサッポロホールディングスは、税制上のビールの定義を広げる与党方針を受け、クラフトなど個性ある商品開発を拡大させる。

尾賀次期社長
尾賀次期社長
Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  年明けに社長に就任予定の尾賀真城氏がインタビューで明らかにした。税制改正でビールに使用できる原料の範囲が果実などにも拡大することで、商品開発の幅も広がり単価の高いビール造りに取り組むチャンスが増えると述べた。

  「ビールでもっといろんなものを追求できる」と尾賀氏は述べ、「ヱビスビール」や「黒ラベル」など日本人が飲み慣れた後味がすっきりとしたピルスナータイプを展開する傍ら、「クラフトビールで新しいビールを造るのは需要の活性化」につながるとした。

  米国では13%近くの市場シェアを占めるクラフトビール。ブームが日本にも波及し、コンビニやスーパーでは、常温発酵で造るエールタイプなども並ぶようになった。ただ、クラフトを「地ビール等」として統計を取っている国税庁の調べによると、最新の2013年のデータでビール全体に占めるシェアは0.8%にすぎない。大量製造、大量販売を追求してきた大手各社にとっては小さすぎる市場だが、ビール消費の大きな伸びが期待できない中、メーカーは多様な商品で需要喚起を狙う。

カキ原料「それこそクラフト」

  与党が8日に決定した税制改正大綱では、ビールの副原料として現在は認められていないオレンジの皮や果汁、香味料の使用が可能となる。サッポロHでは北海道の一部地域限定でカキを原料に使った発泡酒などのビール系飲料を造っているが、現在はビールとして販売できない。

  こうした製品について、尾賀氏は「それこそクラフトビールだと思う」と述べ、「一番得意とする分野」なので「いろいろ手を変え品を変えやっていきたい」と話した。広報担当の福嶋禎久氏によると、税制改正でカキを原料に使った製品がビールに分類されるようになるかは「まだ分からない」という。

変わりつつあるビール消費についてはこちら

  消費者のビールに対する感覚が、「従来考えているのとは違ってきた」と尾賀氏は話す。大人数でにぎわいながら飲むビール以外に、「1人でじっくり味わうビール」も求められるようになったと言う。こうした消費者の嗜好(しこう)の変化もにらみつつ個性的な商品の開発を進め、昨年の同社売り上げ実績で酒類全体の約6割を占めたビールの割合をさらに高める方針だ。

  年始から11月までの国内販売動向で、同社は発泡酒の主力ブランド「極ZERO」の販売数量が前年同期比14.6%減となったが、ビールなどの販売増加で補った。今期のビール事業の業績はほぼ予定通りだと尾賀氏は述べた。

ベトナム市場

  一方で海外市場にも成長を求める。サッポロHは20年までの中期経営計画で、国際事業の売上高について16年見込み対比22%増を掲げており、既存の主要事業の中では最も伸び率が高い。その中で北米と並ぶ柱の1つがベトナム市場だ。

  サッポロHは同市場で10年から工場を建て、ホーチミン市のレストランなどでビールを販売している。尾賀氏はベトナム事業の黒字化は来年時点では厳しいとしたものの、20年までに達成したいと述べた。同市場は6-7年後には日本を抜く可能性があり、販路の拡大に力を入れているという。

  同国では国営ビール大手のサイゴンビール・アルコール飲料総公社(SABECO)とハノイビール・アルコール飲料総公社(HABECO)の民営化を図るため、現地政府が株式売却を計画している。尾賀氏は状況を注視しているとしたものの、「投じたものに対するリターンがきちっと早く得られるか」を見極めたいとした。これまでに国内ビール首位のアサヒグループホールディングスと2位のキリンホールディングスなどがSABECOの株式売却に応札登録していることが明らかになっている。

  サッポロH株は12日取引で一時、前週末の終値比3.7%高となり、約3週間ぶりの上昇率となった。TOPIXは同1.2%高まで上昇した。

(第8段落の発泡酒を「極ZERO」に改め、第10段落の地名を訂正.)
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