欧州中央銀行(ECB)の量的緩和(QE)プログラムの行方をめぐってドラギ総裁が投資家に発した8日のメッセージには、減額と増額が入り混じっていた。

  総裁は「テーパリング」を強く否定、議論に上がりさえしなかったと述べた。ECBはQEでの購入月額を600億ユーロ(約7兆2650億円)と、これまでの800億ユーロから減らした。一方で、期間はエコノミストらが予想していたよりも3カ月長く延長し2017年末までとした。さらに、QEプログラムは本質的にオープンエンドだとして再延長に含みを持たせるとともに、2019年に予想されるインフレもまだ弱過ぎるとの認識も示した。

ECBは量的緩和での購入月額を600億ユーロに減らした
ECBは量的緩和での購入月額を600億ユーロに減らした
Photographer: Krisztian Bocsi/Bloomberg

  矛盾をはらんだメッセージを受け、目先の購入ペース鈍化と最終的な増額に、投資家の注目先が分かれた。とはいえ、2015年に1兆1400億ユーロ規模のプログラムとして始まったものが今では少なくとも2兆2800億ユーロ規模に膨らんでいる。膨大な流動性注入は域内各国で選挙が続く来年の政治不安定化から投資家を保護する役割を果たす可能性がある。

  ジェフリーズ・インターナショナルの欧州担当シニアエコノミスト、マーシェル・アレクサンドロビッチ氏(ロンドン在勤)は、「ドラギ総裁は賢明にもバランスシートの拡大に焦点を絞った」と評価。「QEは依然として無期限で、テーパリングは視界に入っていない」と話した。

  購入を停止した後でも、バランスシートへの影響は長く残る。米国では「テーパリング」開始を宣言してから3年後も、当局の資産規模は過去最大の4兆5000億ドル(約513兆円)からほとんど縮小していない。ECBの最新の発表に基づけば、中銀のバランスシートは4兆1000億ユーロと域内総生産のほぼ40%に達する。

  ドラギ総裁は記者会見で、「購入の期間延長はECBの市場におけるプレゼンスが持続することを意味し、従って中銀の景気刺激措置の効果浸透がより長く続くことになる」と説明。目的は「インフレ率を2%弱の水準に遅滞なく戻すために必要な大量の金融緩和を継続させることだ」と語った。2019年に想定している平均1.7%のインフレ率はその目標に「近いとは言えない」とも言明した。

  ECBはより短期の債券や利回りが中銀預金金利を下回る債券も購入対象に含めるとの変更も発表した。それでも、月間購入額の減額はタカ派の政策委員の意に沿ったものだと見る向きもあった。BNPパリバ・インベストメント・パートナーズのエコノミスト、リチャード・バーウェル氏(ロンドン在勤)は、「テーパリングのように見えるのだから、恐らくテーパリングなのだろう」として、ドイツ連邦銀行は「名前以外のあらゆる点でのテーパリングを勝ち取った」とコメントした。

  英国の欧州連合(EU)離脱やトランプ次期米大統領の保護主義的姿勢といった政治的リスクへの懸念はあるが、最近のユーロ圏の経済指標にはかなり明るい兆しが見られる。明るさを増す見通しに対応しながら、将来リスクが顕在化した場合に備えて景気刺激措置を継続するために、ドラギ総裁は「非常に賢明な手を打った」とステート・ストリート・バンク・アンド・トラストのマクロ戦略責任者ティム・グラフ氏は述べた。「選択肢を温存したまま9カ月の時間を稼いだ」と指摘した。

原題:Draghi’s Anti-Taper Keeps ECB Stimulus Live to Tackle 2017 Risks(抜粋)

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