与党は8日、2017年度税制改正大綱決定した。政府が進める働き方改革の一環として焦点になっていた配偶者控除は、配偶者の年収要件を「150万円」に引き上げる一方、世帯主の年収上限「1120万円」を新たに設ける。

  政府・与党は当初、配偶者控除を撤廃し、共働き世帯にも恩恵が及ぶ「夫婦控除」の新設も検討したが、最後は配偶者控除の要件調整で決着した。パートで働く主婦の就業時間延長には寄与するが、専業主婦世帯優遇との批判の余地を残す形となった。

  大綱によると、現行制度で「103万円以下」となっている年収要件を引き上げ、「150万円以下」の世帯に満額となる38万円の控除を適用する。控除額は年収が増えるにつれて9段階で縮小し、「201万円」超は適用外とする。控除対象の拡大に伴う税収減を補うため、新たに世帯主の年収に上限を設けることも決めた。控除枠は1120万円から徐々に縮小し、1220万円で消失する。新制度は18年分以降の所得税に導入する。

  自民党税制調査会の宮沢洋一会長は同日午後の記者会見で、パートタイム労働者が意識している「103万円の壁」は「税の部分ではほぼなくなった」と強調した上で、「就業調整をしなくて済む」と説明。公明党税制調査会の斉藤鉄夫会長は働き方改革に向けて大きな一歩を踏み出したと述べるとともに、「働き方に中立な税制をしっかり議論していく1つのスタートになった」と語った。

  安倍晋三首相は9月9日、政府税制調査会の初会合で、日本経済を成長させるための最大のチャレンジは働き方改革だとし、個人所得課税の見直しによって改革を進めていきたいと意欲を示した。そのうえで、「女性が就業調整をすることを意識せずに働くことができるようにするなど、多様な働き方に中立的な仕組みを作っていく必要がある」と話していた。

  民進党税制調査会の古川元久会長は、大綱決定後に談話を出し、「ライフスタイルに中立な税制を築く観点からの改革と真逆で問題外の措置」と批判している。

「変わらない」というメッセージ

  働き方改革実現会議の有識者委員を務める白河桃子相模女子大客員教授は、「今回の改正は女性の就業を促進するメッセージにはなっていない。むしろ『変わらない』というメッセージを感じる」と述べ、「抜本改革にはなっていない」と評した。

  麻生太郎財務相は11月15日の会見で、配偶者控除について「家族の在り方、配偶者というものに関して国民の価値観が問われる話だ」として、「丁寧な議論が必要」と話していた。

  大和総研の是枝俊吾研究員は「税制改正そのものによる女性の就業促進効果はほぼない」と指摘。一方で、なお残る企業の配偶者手当の「103万円の壁」を来春闘で見直すよう政府が働き掛けていく必要があると述べた。配偶者控除の水準を「150万円」としたことについては、最低賃金の上昇が続く中で、「ベストな解ではないが、現時点では次善の策」と論評した。

  大綱は「就業調整を意識しなくて済む仕組みを構築する観点」から今回の改正を行うと明記。併せて、これは「個人所得課税改革の第1弾であり、今後も改革を継続していく」との方針を示した。一時検討された夫婦控除については「国民の理解が深まっているとは言えない」と記した。

GDP600兆円

  与党は配偶者控除の見直しによる「働き方改革」と合わせて、国内総生産(GDP)600兆円経済の実現を改正の基本方針に据えた。

  具体的には、研究開発税制の対象に人工知能やビッグデータなどを活用したサービス開発も新たに追加。一定以上の賃上げを実施した企業に対して法人税の控除を実施することで、所得拡大を促し、低迷する個人消費の底上げを狙う。

  家計の安定的な資産形成を支援するため「積立NISA(少額投資非課税制度)」も新設。非課税期間を20年、年間投資上限を40万円と定めた。分散投資などの要件を満たした投資信託に商品を限定する。当面は現行NISAとの選択制としているが、将来的には積立NISAへの一本化も検討する方針を明記した。

  自動車税については、エコカー減税を2年間延長した上で、燃費基準を厳格化する。経済産業省によると、対象車は17年度に8割、18年度に7割程度に絞り込まれる。現行制度では市販車種全体の9割が対象となっている。ビール系飲料の税率を26年10月に350ミリリットル当たり54.25円に一本化することなども盛り込まれた。

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