何十年も世界の政治的な安定の「とりで」と考えられてきた米国と欧州が、今や政治リスクを他の地域に輸出しようとしている。

  ブルームバーグの年次調査でアナリストやエコノミスト、ストラテジスト146 人が示した意見を集約すると、このような分析が導き出される。来るべき年に夜も眠れないほど彼らを心配させる心配の種とは何か。ブルームバーグがまとめる毎年恒例の「ペシミストガイド(悲観論者の手引書)」にその所見が反映されている。

  英国民投票での欧州連合(EU)離脱の選択と、ドナルド・トランプ氏の米大統領選勝利が、地政学的な天空を今年激しく動揺させたが、不確実性が周辺国や新興市場から先進諸国にシフトする状況で、これら2つは投資家を待ち受けているわなのほんの一例にすぎないだろう。

  来るべき年もペシミストは世界中で不安の種に事欠かない。われわれの調査結果を地域別に見ていくことにしよう。

欧州

  英国のEU離脱の選択に続き、欧州はさらなる衝撃の震源となる可能性がある。危機管理を専門とするコンサルティング会社ベリスク・メープルクロフトは、今後3年の政府の安定性に関する分析で、ギリシャが欧州大陸最大の懸念材料になると予測。他の警戒を要する国として、ポピュリスト的な理念が最近勝利を収めた英国とポーランドを挙げた。

  ブルームバーグの調査では、フランスの大統領選やドイツの総選挙など欧州で予定される国政選挙が、トランプ次期米大統領の外交政策に匹敵する不安材料と認識されていることが分かった。アナリストらの回答をさらに詳細に分析すると、英国の総選挙が前倒しで実施される可能性に備えている回答者が多いことも明らかになった。

移民反対のFNルペン党首
移民反対のFNルペン党首
Photographer: Christophe Morin/Bloomberg

  レール・カピタル・セキュリティーズのエコノミスト、エンベル・エルカン氏によると、欧州の政治不安の可能性が最大のリスクであり続けることは間違いない。具体的にはフランス大統領選で移民に反対する極右政党・国民戦線(FN)のルペン党首が当選し、反EU・反グローバリゼーションのアジェンダを推進するリスクや、イタリアの政治危機を指摘した。

米州

  トランプ次期米大統領の将来の政策をめぐる不透明感が、世界の安全保障にとって単独の最大のリスクだと考える回答者は、全体の38%を占めた。メキシコ国境の壁は最も実現しそうにない選挙公約の一つと受け止められているが、中国製品への関税や北米自由貿易協定(NAFTA)の解消、不法移民の強制送還はいずれも可能性が幾分高いと考えられており、専門家は圧倒的にトランプ氏が減税を実行すると確信している。

  ボルタン・キャピタル・マネジメントのアリソン・グラハム最高投資責任者(CIO)は、外交紛争の仲介役の役割をトランプ次期大統領が放棄することで生じる「空白」の結果こそが、2017年の最大のリスクになるとの見方を示す。グラハム氏は「トランプ氏の米大統領選出が地域の権益をより積極的に追求できる好機になるとロシアと中国は解釈している。欧州および中東諸国は、軍事的安全保障に自ら対処せざるを得なくなり、いずれも不安定さが増すだろう。個人攻撃を行い、対立をエスカレートさせるトランプ氏の傾向は、グローバル危機が進行しているという不安感をあおるだろう」と分析した。

ブラックスワン

  ニューヨークの独立系グローバルマクロ調査会社ナイトバーグの専門家に「ペシミストガイド」の議論に加わり、可能性の度合いを評価するよう依頼したところ、仏大統領選でルペン氏が当選する可能性を相当深刻に捉えるべきだとしながらも、「まず起こりそうにないと考えられる」2つのシナリオも同時に示した。それは「ハードBrexit(強硬なEU離脱)」の結果、メイ首相が退陣を余儀なくされ、イングランド銀行(英中央銀行)の独立性に終止符が打たれる事態と、米中の通商戦争勃発(ぼっぱつ)だった。

原題:Finding Risk in All the Wrong Places as Trump Era Begins

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