日本銀行の岩田規久男副総裁は7日午前、長崎市内で講演し、今後とも「必要と判断すれば、躊躇(ちゅうちょ)なく、追加的な金融緩和をすべきと考える」と述べた。

  岩田副総裁は「新しい政策枠組みの下でも、マネタリーベースは将来にわたって拡大を続けることをあらためて強調しておきたい」と指摘。「イールドカーブ・コントロールの下での長期金利の操作は、日銀が多額の国債買い入れを行うことで初めて実現できるものだ」と述べた。

  その上で、新たな枠組みは「一部にみられるように『政策の軸足を量から金利にシフトするものである』との理解は適切でない」と指摘。「日銀は量的・質的金融緩和導入以降、一貫して量と金利の両面から強力な金融緩和を推進してきており、この点に全く変化はない」と語った。

  日銀は9月の金融政策決定会合で、マネーの量を操作目標としてきた従来の枠組みから、金利を操作目標とする長短金利操作付き量的・質的金融緩和に転換。同時に、消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)の前年比の実績値が安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続する「オーバーシュート型コミットメント」を導入した。

就任時の岩田副総裁(左、2013年3月)
就任時の岩田副総裁(左、2013年3月)
Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg *** Local Caption *** Haruhiko Kuroda; Kikuo Iwata; Hiroshi Nakaso

  量的緩和の導入を早くから主張し、日銀が2001年3月に同政策を導入する端緒を開いた元審議委員の中原伸之氏は9月のインタビューで、「レジームを量から金利に変えたということ自体、日銀内でリフレ派が敗れたということだ」と指摘。リフレ派の岩田副総裁、原田泰、桜井真両審議委員が反対しなかったことに疑問を呈していた。

トランプ新政権誕生で「必要なら対応」

  岩田副総裁は講演後に行った会見で、トランプ次期米大統領の政策について、「具体的にどういう政策をするのか、かなり不確実性があり予断を許さない」と指摘。「どうなるか見守りつつ、金融政策で対応することが必要になれば対応する」と述べた。

  現在、80兆円をめどとしている長期国債の年間買い入れ増加ペースについては、「イールドカーブ・コントロールを行い金利を下げるためには相当の量を買わないと維持できない」と指摘。「当面の間は、減ったとしても微減に過ぎない」とし、大きく減ることはないとの見方を示した。  

  米長期金利の上昇を受けて国内の長期金利にも上昇圧力がかかっていることについて、「現在の長期金利はほぼ0%の範囲に納まっていて、2%の物価上昇に向けたモメンタムに悪影響を及ぼしているとは思わない」とし、「差し当たって何かする必要はない」との見方を示した。  

長期金利が一段と上がった場合は

  長期金利が一段と上昇した場合の対応については、「しばらくして経済が良くなり0%程度を維持しなくても少し上がっても大丈夫という時には、イールドカーブコントロールの値を変えていく。それによって量が若干変化することもあるかもしれない」と述べた。

  一方で、「逆に悪い金利上昇ということもあるので、それが物価目標2%へのモメンタムを崩すということであれば0%程度に引き下げるためには量を増やすこともある」と語った。

  岩田副総裁はその上で、「長期金利が上がることによって2%の物価目標に向けたモメンタムがどう変わるか、それが量をどういうふうに調整するか、あるいは金利の上昇を抑えるか、あるいはそのまま市場に任せて、その値を新しい金利目標にするか決めていく」と指摘。「あくまで2%の物価目標へのモメンタムの維持がされているかどうかを考察することに尽きる」と語った。

マイナス金利の導入「一番迷った」  

  2013年4月に量的・質的金融緩和を導入した際、2年で2%の物価目標を達成すると表明したにもかかわらず、いまだ達成できないことについては、消費増税による景気の落ち込みや原油安など、「逆風が吹かなければ、2年以内に達成したと思っている」と述べた。

  また、これまでの政策を振り返って、「私が一番迷ったのはマイナス金利の導入だ。これは少し迷った。金融機関や生命保険なども含めて、どういうふうになるかは少し心配した」と語った。

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