2016年の債券トレーディング手法で最良の取引の一つが、ドナルド・トランプ氏の米大統領選勝利でますます有利となり、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントなどの資産運用会社が恩恵にあずかっている。

  この背景には、ドルが対ユーロで10数年ぶりの高値に上昇、米国債利回りが15年以来の高水準に達し、世界中でドル調達需要が高まっている事情がある。このおかげで米国の債券投資家は、クロスカレンシースワップと呼ばれる異なる通貨間の金利交換を通じて為替リスクのヘッジコストを下げるという非常に有利な立場を享受している。

  これはつまり、ドルベースのファンドマネジャーが運用する外国債券のリターンが膨らむ一方、日本や欧州の投資家にとっては米国での投資価値が下がることを意味する。債券投資の世界では、新たなフロンティアとも言える。世界のヘッジ市場では、14年ならドルを借りてもプレミアムはほとんどなかった。だが、金融危機後の規制強化で米国の銀行のドル貸し出し能力が抑制され、ドル需要は逼迫(ひっぱく)するとの見方が台頭。これで、資産運用会社がドルを貸す役割を担うようになった。

  ゴールドマン・サックス・ストラテジック・インカム・ファンド(資産規模88億ドル=約1兆円)で運用を担当するマイク・スウェル氏は「ドルを貸し出す機会は本当に魅力的だ」と語る。同ファンドが9月末時点で抱えていた最大のポジションは18年償還の日本国債。「欧州やアジアの金融環境が非常に緩和的で金利がマイナスの一方、米国の金利が上昇に向かう限り、ドル需要は続く」と付け加えた。ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントは16年初めから、クロスカレンシースワップを活用する取引のポジションを増やしてきたという。

  トランプ氏当選が財政刺激による経済成長加速の期待を高め、こうした取引を勢いづかせた。ドルと円のクロスカレンシースワップは3カ月物スプレッドが先週92ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と、ブルームバーグが11年にデータ集計を開始して以来の水準に達した。ドルとユーロでのスプレッドは62bpで、これは12年の欧州債務危機以来の大きさ。

  ドルベースの投資家にとっては、クロスカレンシースワップを考慮すれば、利回りがマイナス0.33%の日本の3カ月物証券でさえプラスリターンを生み出す。

  同証券を買うのに、ドルベースのファンドマネジャーは円を借りてドルを貸し出すが、その際に3カ月物ロンドン銀行間取引金利 (LIBOR)で円のマイナス0.06%を支払い、ドルのプラス0.95%を受け取る。これに加え、ドルの貸し手としてクロスカレンシースワップでスプレッドも受け取る。これでヘッジ後の利回りは1.5%近くとなる。

  今月は米国で利上げが見込まれていることもあり、クレディ・スイス・グループとドイツ銀行によれば、スプレッドは来年に向けて一段と広がる見込み。クロスカレンシースワップを活用する取引は、ますます魅力的となりそうだ。

原題:Winning Bond Trade of 2016 Gets Even Better in Trump’s New World(抜粋)

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