金融の世界を描くマイケル・ルイス氏の著書は、発表されるたびに話題を呼んできた。しかし最新作の"The Undoing Project: A Friendship That Changed Our Minds"は毛色が違う。エイモス・トベルスキー氏とダニエル・カーネマン氏という2人の学者の経歴と出会い、かけ離れた2つの個性がいかにして1つの頭脳となり、人間の心理についてのわれわれの誤解を解くに至ったかの物語だ。

  同著は2人の主唱者の伝記という形を取った行動経済学の入門書だ。頭脳明晰な2人の心理学者が互いの中に自らを高められる運命的な存在を見いだしていく知的ロマンスと言える。この2つの頭脳が刺激し合いながら生まれた理論こそ、人間の意思決定に関するわれわれの認識を変えた。

  ルイス氏は数十年にわたる心理学の発展についてさりげなく説明した後、最後にトベルスキー氏とカーネマン氏に行き着く。人間は合理的で、完璧な判断力をもって自身の利益に最適な決定を下すという経済学の大前提を、2人はゆっくりと覆していく。人が意思決定する時のあらゆる認識上の偏りや弱点が白日の下にさらされ、人間の判断の誤りは予見可能なばかりが秩序立っていることが明らかになっていく。

  そこにあるのは喜びと光ばかりではない。カーネマン氏とトベルスキー氏の関係にはねたみやあつれきも入り込む。共同作業の避けられない代価だ。トベルスキー氏は1996年に転移性黒色腫のため59歳で没した。

  究極のところで、これは2人の人間の特別な関係がいかにして、人間の意思決定について新しく、より深い理解をもたらしたかを描いた本だ。この本を読む決定をした読者が後悔することはないだろう。

  (バリー・リットホルツ氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

原題:Lewis’ Portrait of Two Men Who Changed the World: Barry Ritholtz(抜粋)

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