5日の東京外国為替市場ではユーロが主要通貨に対して全面安となり、対ドルで1年8カ月ぶりの水準まで下落した。イタリアの国民投票で敗北したレンツィ首相の辞意表明を受け、同国の政治や金融システムが不安定化し、欧州で反欧州連合(EU)の流れが強まるとの懸念が広がった。

  レンツィ伊首相は5日未明、進退をかけた国民投票(4日投開票)で憲法改正案が否決されたのを認め、辞任すると表明した。EUに懐疑的立場を取るイタリアの野党「五つ星運動」を率いるベッペ・グリッロ氏は、できるだけ早期に上下両院の選挙を実施する必要があるとブログへの投稿で発言した。

  改憲案否決優勢との出口調査を受け、ユーロは早朝の取引で急落。対ドルでは1ユーロ=1.06ドル台後半から、一時1.0506ドルと昨年3月以来の水準まで値を下げた。午後3時40分現在は前週末比0.9%安の1.0565ドル。ユーロ・円相場も1ユーロ=121円台から、一時118円73銭と約1週間ぶりの水準までユーロ売り・円買いが進行。その後いったん120円台半ばまで反発したが、上値は重く、午後にかけて119円台後半へ値を切り下げた。

  野村証券の池田雄之輔チーフ為替ストラテジストは、「もともと改憲案否決と首相辞任はほぼ織り込み済み」だとし、「ここからのポイントは与党が政権を維持できるか」だと指摘。今週の欧州中央銀行(ECB)の政策委員会で、「ドラギ総裁が非常にハト派的なことを言ったり、資産買い入れの延長が予想以上に長いと、ユーロが1.05ドルを抜けることはある」と語った。

  ポピュリストのうねりを読み間違えた結果、今年辞職の憂き目を見た欧州の指導者は、英国のキャメロン前首相に次いで2人目。今回の結果を受けてマッタレッラ伊大統領はポピュリストに対する防火壁を構築できる次期首相を選定することになるが、世論調査では解散総選挙となった場合、「五つ星運動」が大躍進する見通しが示されている。
  
  一方、イタリアの銀行モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナと同行に助言を行う同国の銀行メディオバンカ、米銀JPモルガンは、モンテ・パスキの50億ユーロ(約6000億円)相当の資本増強計画を続行するかどうか判断するため、5日午前にも協議する。事情に詳しい匿名の複数の関係者からの情報を引用し、英紙FT(オンライン版)が報じた。シニアバンカーらは引き受け責任を引き続き負うか、市場環境の異変を理由に契約を打ち切る権利を行使するか判断する。

  みずほ証券の鈴木健吾チーフFXストラテジストは、「イタリアが解散総選挙となり、『五つ星運動』が票を得て、より反EU的になってくると非常に嫌な感じになる」と指摘。銀行問題への積極的な対応ができなくなるとの懸念もあるとした上で、来年にオランダ、仏独の選挙を控えて、反EU的な流れが続いていくかが問題だと語った。

  8日にECBの定例政策委員会が開かれる。ブルームバーグが調査した大半のエコノミストは、ドラギ総裁が資産購入プログラムを月800億ユーロの現行ペースで延長することを発表すると予想した。一方で、回答者のうちの4分の3が、量的緩和のテーパリング(段階的縮小)が2017年遅くに始まると想定した。

  IG証券の石川順一シニアFXストラテジストは、「量的緩和の期間を延長しても、テーパリングを示唆すれば、ユーロの買い戻しを誘発するだろう」とし、「緩和が限界に近づいているので別の政策にシフトすることを示唆するかを見極めたい」と話した。

  ドルは主要16通貨に対してほぼ全面高。主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は前週末比0.4%高となっている。米10年債利回りはアジア時間5日の時間外取引で低下。先週末発表された11月の米雇用統計は失業率が9年ぶり低水準となった一方、賃金が予想外に低下するなど強弱まちまちの内容だった。

  ドル・円相場はリスク回避の円買いが先行し、一時1ドル=112円88銭と3営業日ぶり安値を付けた。米国の利上げ観測やトランプ次期大統領のリフレ政策への期待が根強い中、その後113円86銭まで反発したが、午後に入り伸び悩んだ。同時刻現在はほぼ横ばいの113円46銭。

  クレディ・アグリコル銀行の斎藤裕司外国為替部長は、イタリア国民投票の結果は事前予想通りで、ドル・円は「ユーロ・円のストップとアルゴ主導で動いたものの、ストップを付けただけ」と朝方の動きを説明。「もともとトランプラリーのシナリオを転換するほどの材料ではない。下がれば買いが出てくるだろう」と語った。

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