オフィスビルやホテルなどの開発を手掛ける森トラストは、米国での大型ビル投資に取り組む。創業以来初めて事業を海外にも広げ、成長に弾みをつける狙い。良い投資案件があれば1000億円を超える多額の投資にも積極的に取り組むとしている。

  森トラストの伊達美和子社長は、取材に対し「海外に向けて投資の機会を拡大していく」と述べた。米国大都市のオフィスビルへの投資を検討しており、「良い物があれば、結果的に1000億円を超えても投資することは可能だ」と語った。ニューヨークについては「非常に今高く、難しい」と述べ、米国内の大都市で幅広く投資案件を探していることを明らかにした。同社は保有・運営する不動産の90%が港区など都心で、実現すれば初の海外進出となる。

  80年代の日本のバブル経済期には、ジャパンマネーによる海外の大型投資や買収が相次いだ。ニューヨーク市のロックフェラーセンターやカリフォルニア州の高級ゴルフコースを高額で購入し、その後損失を計上、海外事業の縮小を余儀なくされた。しかし、日本企業による海外不動産投資は11年以降、再び拡大傾向にある。不動産サービス会社CBREの調査では、国内の人口減少や投資リスク分散などを理由として、14年は約18億ドル(約2100億円)に達し、10年当時の約11倍に膨らんだ。

伊達美和子氏
伊達美和子氏
Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  米国の不動産市況について、伊達社長は「オフィス賃料はリーマンショック後に下がった後、まだ上がり切れていない」と指摘し、「今後米国の景気が良くなり、金利や物価が上昇してくれば賃料はまだ上昇する」との見方を示した。また「海外への投資は3年くらい前から検討し始めた」とも述べ、トランプ次期大統領の選出との因果関係は特にないとした。

  トランプ政権誕生については、財政状態が歳出拡大に耐えられるかどうかや、日本経済への影響など懸念材料があるものの、過去の慣習や発想にとらわれない改革に踏み切れるのが米国の強みだとして、「期待はある」と前向きにとらえている。

  六本木ヒルズを手掛けた森ビルグループに対して、森トラストグループは丸の内や京橋など都心部で保有する高層ビルを賃貸するほか、都心部や地方の観光地でも「マリオット」や「コンラッド」など高級ホテル事業を展開。外資系高級ホテルの誘致に向け岐阜県高山市に用地を取得している。

日本は買いにくい

  一方で、日本の不動産投資市場については「新規では非常に買いにくい。低い利回りで他社や海外からのニーズが入ってくる」と慎重な見方を示した。

  日本銀行のマイナス金利政策などを背景に都心のオフィスビルを中心に不動産価格は高止まりしている。CBREの調査では、第3四半期の日本の不動産取引額は前年比約2割減の7860億円と5期連続で前年割れだった。東京のオフィスビルや商業施設などすべての不動産セクターで、物件価格の上昇を受けて期待利回りは過去最低を更新した。

  日本不動産研究所が世界14都市を対象にまとめた世界のオフィス価格の上昇率は過去2年間、東京の1位が続いている。10月現在、半年間の前期比上昇率は東京3.4%に対し、ニューヨークは0.7%、欧州連合(EU)から離脱する英国のロンドンは5.8%下落だった。

総資産1兆円

  伊達美和子氏は、港区など都市開発を得意とする森グループを創業した故・森泰吉郎氏を祖父に持つ。泰吉郎氏の三男、森章氏は父に当たり、森グループのうち森トラストグループを継承した。伊達氏は、章氏の3人の子どもの末娘。叔父の故・森稔氏は森ビルの前社長だ。

  森トラストはオフィス賃貸やホテル事業の好調を背景に、16年度の連結純利益は過去最高の570億円を見込み、さらに16ー27年度には6000億ー8000億円規模の設備投資を計画している。伊達社長は「8000億円というのはミニマムにやるという額なので、これ以上の投資余力は持っている」と意欲的だ。上場の可能性については、グループ内の「ホテルリートを年度内めどに上場したいが、森トラストの上場は考えていない」と否定した。

  森トラストが港区虎ノ門で総事業費3000億円を投じて地上36階の複合施設の開発計画を進める中、森ビルも同地区に総事業費約4000億円で超高層ビル3棟の開発を予定している。森ビルとの今後の協力の可能性について、伊達社長は「あらゆる同業他社と必要に応じて協業していくことは可能性としてある」と述べるにとどめた。

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE