イタリアのレンツィ首相は5日未明、進退をかけた国民投票(4日投開票)で憲法改正案が否決されたのを認め、辞任すると表明した。欧州の政治・金融が再び混迷する恐れが出てきた。

  議会上院の権限を抑制するレンツィ首相案に対する反対票は開票作業がほぼ終了した段階で約60%と、賛成票40%を上回った。同首相はマッタレッラ大統領に5日中に辞表を提出すると述べ、暫定政権発足の支援で留任しない考えを示した。ユーロは1年8カ月ぶりの安値に下落した。

  首相は記者会見で「敗北した」と述べ、敗北の全責任を負うと語った。また、支持者の前では声を震わせ涙を流しながら、「イタリア政治は勝者不在のままだ」と発言した。

  ポピュリスト(大衆迎合主義者)の台頭で今年失脚した欧州の指導者はこれで、英国のキャメロン前首相に次ぎレンツィ首相が2人目。今回の結果を受けてマッタレッラ伊大統領はポピュリストに対する防火壁を構築できる次期首相を選定することになるが、世論調査では解散総選挙となった場合、「五つ星運動」が大躍進する見通しが示されている。

  4日公表のEMG調査によると、総選挙で決戦投票となった場合に五つ星がレンツィ首相の民主党に対し53-47%で勝利する。国民投票でレンツィ首相が敗北なら解散総選挙を要求するとしていた五つ星は今後、イタリアのユーロ圏離脱の是非を問う新たな国民投票を迫る見通し。ただ、先月の世論調査結果では、ユーロ圏離脱を支持したのは15.2%にとどまり、67.4%はユーロの信奉者と答えていた。

国民投票後に辞意を表明したレンツィ首相
国民投票後に辞意を表明したレンツィ首相
Photographer: Chris Ratcliffe/Bloomberg

  イタリアの主流派政党はレンツィ首相が退陣を迫られても政府が確実に機能し続けるよう備えていた。暫定政権の首相を打診される可能性があるのはパドアン経済財務相やグラッソ上院議長、フランチェスキーニ文化相ら。

  調査会社テネオ・インテリジェンスのウォルファンゴ・ピッコーリ共同社長は今回の結果について、「イタリアの政治の安定と経済の両方にマイナスの結果だ」と指摘。「しかし、解散総選挙といった最悪のシナリオが直ちに展開することはないだろう」と予想した。

  5日の金融市場取引の開始時にはイタリアの銀行モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナの動きが注目されそうだ。モンテ・パスキは50億ユーロ(約6000億円)の資本増強計画を推進中で、株価は年初以降に83%下落し、融資の約3分の1は不良債権化している。

  イタリア債券市場にも衝撃が走りそうだ。イタリア国債相場は投票日前数日に上昇し、10年物の同年限のドイツ国債に対する上乗せ利回り(スプレッド)が24ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)縮小し162bpとなっている。

  欧州では伊国民投票を皮切りに選挙の1年が始まった。主流派政党は移民問題や景気低迷に対する有権者の不満を吸い上げる新興勢力に脅かされる状況にあり、フランスのオランド大統領は先週、再選を目指さないと表明。共和党のフィヨン元首相が極右政党・国民戦線(FN)のルペン党首と対決することになる。ドイツではメルケル首相が来秋に4選を目指すが、反移民を掲げる政党「ドイツのための選択肢(AfD)」と対立している。

原題:Renzi Quits as Italy Referendum Defeat Deepens Europe’s Turmoil(抜粋)

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