2017年の日本株に専門家から強気の声が増えている。5年ぶりの下落が濃厚な16年からの逆襲予想の背景にあるのは、マクロ経済環境や企業業績の改善期待だ。えとの相場格言でみると、17年は「騒ぐ」酉(とり)年。海外投資家を中心に売買が盛り上がれば、日経平均株価は2万円の大台を超えていく。

  昨年まで4年連続で上昇していたTOPIXと日経平均は、2日時点でそれぞれ15年末値を4.5%、3.2%下回っている。新興国経済への懸念から年前半に予想外の大幅安となったことが響き、アベノミクスが始まって以降、初の年足陰線となる可能性がある。一方、11月の米国大統領選挙で共和党のドナルド・トランプ氏が勝利し、経済活性化やインフレ観測から米長期金利が上昇、為替はドル高・円安方向に振れ、輸出や金融セクターを中心に日本企業の収益環境が好転するとの期待が膨らんでいる。11月月間では両指数とも5%以上上昇、TOPIXは世界の主要94指数の中で上昇率ベスト10に入った。

株価ボードを眺める通行人
株価ボードを眺める通行人
Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  日興アセットマネジメントの神山直樹チーフ・ストラテジストは、初期のアベノミクス相場では「円安による価格効果が大きな変化をもたらしてきた」と分析。これに対し、今後はファンダメンタルズが強い米国でトランプ政権が誕生、マーケットフレンドリーな政策も予想され、「米消費そのものが伸びれば、量的に売れるという期待に変わる。これは重要な変化」とみている。

  神山氏は、「米国の変化で最も恩恵を受けるのは日本」とし、来年9月末のTOPIXを1600ポイント、日経平均は2万円と予想した。

業績は7-9月を底に回復へ

  来年の日本株に対し、専門家が強気となっている最大の理由は企業業績の回復期待だ。野村証券によると、ラッセル/ノムララージキャップ(除く金融)の7-9月期経常利益は前年同期比8.9%減と、4-6月期の16.6%減から減益率が縮小した。為替前提の1ドル=110円への円安方向への変更や足元で生産や企業物価がやや上振れ傾向にあることを踏まえ、17年3月期通期では2%減から2%増へ増額修正。来期は6-7%の増益を見込む。松浦寿雄チーフストラテジストは17年末のTOPIXを1680、日経平均は2万1000円と予想。これは19年3月期の利益予想をベースに、13年以降の平均PERである14.3倍から算出している。

  シティグループ証券は、11月にカントリーアロケーションでの日本株の推奨を「オーバーウエート」へ引き上げた。日本企業は7-9月期まで大幅減益となっていたが、米大統領選後に為替想定を円安方向に見直したため、収益環境は10-12月期までには底入れし、来年は循環的な改善局面に入るとみる。17年度のTOPIXの1株利益成長率は10%と予測、17年末のTOPIXターゲットを1625、日経平均は2万250円に据えた。飯塚尚己チーフストラテジストは、長期投資家にとっては今年末にかけてが「日本株再投資の適齢期」と位置づける。

バリュエーションは拡大せず

  企業業績の改善が予測される半面、日本株のPERは拡大しておらず、株価は業績期待をまだ十分織り込み切れていない可能性がある。ゴールドマン・サックス証券がアベノミクス相場が始まった13年以降の米国と欧州、日本の株価上昇を比較したところ、米S&P500種株価指数とストックス欧州600指数はバリュエーション拡大が主要因だったという。対照的にTOPIXは利益成長が唯一の要因で、米金利の低下による円高警戒などからバリュエーションは拡大しなかった。

  キャシー・松井チーフ日本株ストラテジストは、日本は「利益が2倍近くに拡大する中で、来期予想ベースのPERは12年の18倍から現在は15倍に低下している」と指摘。欧米は「期待」が株価上昇の最大の原動力だったのに対し、「今なお多くの投資家が将来の成長見通しに懐疑的な日本市場にはほとんど期待は存在しない」と分析する。ゴールドマン証では、来年12月のTOPIXの目標値を1600、日経平均は2万100円に設定した。

海外勢はアンダーウエート状態

  17年の日本株を予測する上で、日興アセットの神山氏やゴールドマン証の松井氏に共通するのは為替と日本株との相関関係が良い意味で崩れ、乖離(かいり)していくとの見解だ。神山氏は、アベノミクスの初期は為替と株の関係は1対1で、為替が10%円安になれば株価も10%上昇していたが、今後は数量効果が期待でき、1%の円安でも「株価は2-3%程度上がる」とみる。このため、17年はドルベースでも日本株はアウトパフォームするだろうと言う。松井氏は、労働市場の著しい逼迫(ひっぱく)が所得増加を促し、消費と内需が回復すれば、結果的に「株価と円相場の相関関係が断ち切られる可能性がある」としている。

  需給面では、日本株売買代金の7割を占める海外投資家の姿勢に変化が起こりつつある。海外勢は11月第2週から3週連続で現物株を買い越し、累計買越額は1兆2000億円近くに達した。

  ゴールドマン証が2日時点で試算したところ、海外投資家の現物・先物合計の売越額は年初来4.9兆円に達し、1987年以来で最大。国際株式ファンドの日本株組み入れ比率は、基本ポートフォリオを平均7%アンダーウエートしているという。アンダーウエート幅は第2次安倍政権が発足した12年12月と同規模だとし、日経平均のドル建てリターンが相対的に高い状況が続けば、17年は海外投資家の投資資金を呼び寄せられる可能性がある、松井氏は予想した。

  週明け5日の日本株は続落。米国11月の雇用統計発表後に米長期金利の上昇が一服し、為替市場で円がやや強含んだことが重しとなった。シティグループのストラテジストを務めるケン・ペン氏(香港在勤)は、日本株は「トレンドとしてブルマーケットの中にある」としながらも、足元の米国のドル高と金利上昇のラリーは行き過ぎとし、「短期的には株価の方向性は下」との認識を示している。

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