三井物産の松原圭吾最高財務責任者(CFO)は、米国の次期大統領にドナルド・トランプ氏が決まったことについて、「エネルギー政策が原油価格に与える悪影響には懸念している」との見方を示した。シェールオイルの増産に意欲を示す同氏の政策が原油価格の上値を抑える可能性が高いとみている。

  1日、ブルームバーグのインタビューで述べた。三井物産の油ガス田権益の持ち分生産量は国内商社最大で、原油価格の変動が業績に与える影響は大きい。石油輸出国機構(OPEC)が8年ぶりの減産実施で合意したが、「原油価格が1バレル当たり50ドルを超えてくるとコスト競争力を強めたシェールオイルの増産が見込まれる」と指摘。「トランプ氏の政策が後押しすると上値は非常に重く、一本調子で60-70ドルへと上昇していくとはみていない」と慎重な見方を示した。

Keigo Matsubara  Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
Keigo Matsubara Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  トランプ氏はシェールオイル・ガスの掘削に使われるフラッキング(水圧破砕法)規制の廃止を掲げる。環境重視のオバマ政権下では、大量の水や化学物資を使用するシェール事業で汚染された水の処理方法など掘削基準を厳格化した。規制が緩和されればコスト競争力は高まる。

  原油価格が1ドル下落すると三井物産の純利益は年間で29億円減少する。強みの鉄鉱石は1ドルの価格変動が32億円の影響につながる。原油価格の本格的な回復は需給バランスが改善する2020年以降と想定。足元で上昇している鉄鉱石価格については「期初から前提価格を見直しておらず、今期業績には一定の効果が見込まれる」と指摘。ただ、価格上昇は「中国や米国でのインフラ投資拡大への期待が先行している」として、新規鉱山の稼働などから2019年までは供給過剰が続くとみている。

非資源で2000億円の利益

  前期は銅や石炭などの資源価格の大幅な下落によって創業来初の赤字に陥った。「資源価格は今年すでに底を打った」とみているが、市況変動に左右されずに安定的な利益を生み出す体質構築が急務となっている。来期(18年3月期)からの新中期経営計画では「資源エネルギー以外の分野で2000億円の純利益を稼げることを目標に考えている」と述べた。

  今期(17年3月期)の純利益予想は2200億円。期初に資源エネルギー以外で1400億円の利益を計画していたが、「現時点でおおむねそのレベルの利益が出せる状況にある」という。海外での持ち分発電容量が商社最大となった発電・売電事業を抱える機械・インフラ分野で550億円、米国で飼料添加物などの生産を手掛ける化学品分野で350億円の利益をそれぞれ見込む。「ある程度の利益が出せるようになった分野での収益力を今後も高めるとともに、メディカルヘルスケアなどでも一定の収益が出るよう取り組む」との考えだ。

  メディカルヘルスケア分野では11月、糖尿病患者向けの血糖値測定器を中心とした医療機器の製造販売を手掛けるパナソニックヘルスケアホールディングスの株式22%を約541億円で取得すると発表。11年に資本参加したシンガポールやマレーシアで高所得者向けの病院事業を展開するIHHヘルスケアへの出資などヘルスケア・サービス事業での投資残高を前期(16年3月期)末の2000億円から20年3月期には4000億円規模へと積み増す方針だ。

  来期からの株主還元については「キャッシュフローに着目した配当方針の考え方をより鮮明にしていきたい」と語った。財務体質の悪化を防ぐためフリーキャッシュフローの黒字化を引き続き重要課題とし、配当水準を決める判断基準に純利益よりも基礎営業キャッシュフローの動向を重視する。今期の配当は減配となる計画だが、配当の下限設定の導入に関しても議論していくという。

  英国の欧州連合(EU)からの離脱や米国第一主義を掲げるトランプ氏の大統領選挙での勝利など保護主義的な動きが世界的に高まっている。「総合商社にとって自由なモノ、人、カネの移動は欠かすことの出来ない事業環境。保護主義は経済活動にも障害となり、商社のビジネスにとっても決して望ましいことではない」と語った。

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