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伊国民投票を乗り切れるかトランプ相場、欧州不安が円高の火種に

更新日時
  • 来月4日に憲法改正の是非問う伊国民投票、オーストリア大統領選も
  • 欧州の政治は明らかにリスク、持っていたら安全なのは円-みずほ銀

「トランプラリー」を演じてきたドル・円相場に試練の時が迫っている。憲法改正の是非を問う今週末のイタリア国民投票の結果次第では欧州の政治的混乱への警戒感が高まり、リスク回避の円高が再燃する恐れがあるからだ。

  欧州連合(EU)離脱を選択した6月の英国民投票に続き、ドナルド・トランプ氏が今月8日の米大統領選に勝利したことで、イタリアではレンツィ政権打倒を目指すポピュリストの運動が勢いを増している。12月4日の国民投票で政治改革に向けた改憲案が否決されてレンツィ首相が公約通り辞任する事態となれば、反体制政党「五つ星運動」に追い風となり、来年の早い時期に総選挙が前倒しされる可能性がある。同党はユーロ圏残留・離脱を問う国民投票の実施を公約している。

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レンツィ伊首相

Photo by Nicol Campo/LightRocket via Getty Images

  ドル・円相場はトランプ氏の当選を受けて9日以降、急速に上昇し、先週末には一時1ドル=113円90銭と3月15日以来の高値を付けた。トランプ氏勝利なら保護主義の台頭を懸念して株安・円高になるとの大方の予想に反し、同氏の財政拡張策への期待から米国株は史上最高値を更新。米利上げペースの加速観測や財政悪化懸念を背景に米金利は急上昇し、ドル独歩高となる中で円安が進んだ。

  先週末までの3週間のドル・円の上昇率は約10%と、1995年以降で最大となった。この間、ヘッジファンド勢は1月以来となる円の売り越しに転じた。一方、オプション市場ではドル・円のリスクリバーサルが、度合いこそ弱まっているものの、円買いオプションの需要が円売りオプションの需要を上回る「円コールオーバー」の状態が続いており、円の先高観測がくすぶっていることを示唆している。
  
  みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケットエコノミストは、大幅なドル高・円安進行で「普通の投資家は利益確定のタイミングを探るステージに来ている」とし、トランプラリーにとってイタリアの国民投票が「最初の試金石になる」と指摘。否決シナリオが迫る中、「ずっとリスクモードというのは無理がある」と語る。

くすぶる円先高警戒

  12月4日にはオーストリアの大統領選も行われ、西欧で第2次世界大戦以後初めて極右政党の候補者が当選する可能性がある。また、来年はオランダ総選挙、フランス大統領選、ドイツ総選挙が予定されており、反EUや反移民を掲げるポピュリスト政党の台頭が警戒されている。

  唐鎌氏は、「ヨーロッパの政治は明らかにリスク」だとし、来年はどちらかというとリスクオフの時間帯が多くなると予想。「持っていたら安全というのは円になる」とみている。

  イタリアの国民投票以外にも、目先は30日の石油輸出国機構(OPEC)総会や米雇用統計など注目のイベントが続く。また、12月13、14日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)では1年ぶりの追加利上げがほぼ確実視されており、利上げ後は目先の材料出尽くしからドルが売られる可能性も指摘されている。  

  急激なドル高・円安進行を受け、アナリストの間ではドル・円の見通しを引き上げる動きが出ている。ブルームバーグが集計するアナリスト予想で、来年3月末の予想中央値は米大統領選以降、それまでの103円から108円まで上昇。来年末の予想も107円から110円までドル高・円安方向にシフトしている。

  米商品先物取引委員会(CFTC)によると、シカゴマーカンタイル取引所(CME)国際通貨市場(IMM)の先物取引で、レバレッジドファンドの円のネットポジションは22日時点で1月5日以来となる売り越しに転じた。

  一方、3カ月物のドル・円のリスク・リバーサルは米大統領選当日のマイナス1.8%台からマイナス0.49%程度まで上昇しているが、円コールオーバーを示すマイナス値のままだ。2014年10月末の日銀の金融緩和強化をきっかけにドル・円が07年以来の113円台へ上昇した時には、11カ月ぶりにプラスとなり、円売りオプションの需要の方が強い「円プットオーバー」に転じた。また、第2次安倍晋三政権の経済対策への期待を背景に株高・円安のアベノミクス相場が始まった12年末には、少なくとも03年10月以降で最高のプラス1%台まで円プットオーバーが拡大していた。

  JPモルガン・チェース銀の佐々木融市場調査本部長、棚瀬順哉為替調査部長らは23日に公表した17年のドル・円見通しで、欧米で保護主義の高まりが予想される中、過去数年間に積み上がってきた本邦勢の円ショートの巻き戻しが加速するリスクがあると指摘。来年末の水準を99円と予想した。  

  円は月初から対ドルで約7%下落。主要16通貨ではメキシコペソに次ぐ下落率で、このままいけば月間で09年12月以来の大幅安となる。ブルームバーグ・ドル指数は米大統領選以降、4%以上上昇し、データでさかのぼれる04年12月以降の最高値圏に達している。

  三菱東京UFJ銀行グローバルマーケットリサーチの内田稔チーフアナリストは、期待で相場が動くことは否定しないが、ドル高の進行は米製造業の復権もうたった上で支持を集めてきた「トランプ氏勝利の根幹を揺さぶりかねない不整合な動きだ」と指摘。「トランプで財政というエンジンだけで果たしてドル・円がどこまで上がっていくのかと言うと、そろそろいいところまで来たのではないかと思う」と語った。

(第11段落以降を追加して更新します.)
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