イタリア、早期ユーロ離脱の公算小さい-でも国民投票が心配な理由

英国民投票や米大統領選の結果にショックを受けた投資家は、欧州通貨同盟におけるイタリアの将来を心配している。12月4日の国民投票でレンツィ首相が望む憲法改正が否決される結果となれば、ただでさえ脆弱(ぜいじゃく)な同国政治の安定性が損なわれる。だが、イタリアのユーロ圏離脱は差し迫った脅威ではないようだ。政党横断的な支持のほか、気の遠くなるような立法プロセスが必要になるためだ。

1. 市場はなぜ懸念しているのか?

  国民投票の実施を提案し、否決なら辞任すると当初語っていたレンツィ首相にマイナスの結果となれば、総選挙が前倒しされポピュリスト政党「五つ星運動」への支持が高まる可能性がある。同党はイタリアのユーロ圏残留・離脱を問う国民投票の実施を公約している。一部の投資家は既に通貨同盟どころか、EUの終わりさえ予想。SEIインベストメンツの資産運用担当者、ジム・スミジール氏は「EUが崩壊し、イタリアがユーロ圏を離れるとわれわれは考えている」と発言。「しばらく前なら、こんなことは考えられなかったし想像だにしなかったが、少なくとも今はそれに向けて歯車が回り始めたのを目撃している」と付け加えた。

イタリア国旗

Photographer: Marc Hill/Bloomberg

2. 五つ星はどれぐらい反ユーロなのか?   

  五つ星に所属するルイジ・ディマイオ下院副議長は同党が政権を握れば、ユーロ参加について民意を問う諮問的な国民投票の実施を進めるとしている。しかし、ユーロの替わりをどうするかについては明確にしておらず、レプブリカ紙とのインタビューで「2段階のユーロなのか、あるいは自国通貨なのか」と述べている。

3. なぜ投資家の懸念は行き過ぎなのか?

  ユーロ圏から離脱するには時間もかかり、複雑な交渉が必要となるためだ。英国がEU離脱に際しリスボン条約50条の発動をめぐる問題で学んだように、EUあるいはその一部からの離脱は簡単ではない。また、総選挙前倒しとなった場合に五つ星が政権を取れるかも選挙制度の変更に左右され、選挙に勝利しただけでは議会での多数派形成には不十分かもしれない。さらに、EU離脱には法的に障害がある。

4. 法的な障害とは何か?

  イタリア憲法は国民投票による国際条約の破棄を禁止している。従って、国民投票前に憲法改正が必要になるとも言える。その改正には上下両院で3分の2議席以上の賛成票が必要な上、ユーロ参加継続の是非をめぐる国民投票に道を開くための国民投票が必要かもしれない。また、ここでイタリア国民が離脱「賛成」を選んでも、その結果を憲法裁判所が阻止する可能性がある。

5. 市場の反応はどの程度か?

  政界的意図が垣間見えるだけで市場は反発を示すと、JPモルガン・チェースのエコノミストらは指摘する。「ユーロ離脱をめぐるノイズは資本逃避や深刻な市場混乱を引き起こすため、市場の圧力がユーロ離脱を主張する政党に計画修正を迫るかもしれない」と、同行のジャンルカ・サルフォード、マルコ・プロトパパ両氏がリポートで指摘した。市場は既に、12月4日の国民投票を前にストレスを示している。ユーロは今月これまでに3%余り値下がりして2015年3月以来の安値を記録したほか、イタリア10年債利回りも上昇し1年ぶりに2%を上回った。

6. イタリア国民はユーロ圏を脱けたいのか?

  そうではなさそうだ。スタンパ紙が21日掲載した世論調査によると、離脱派は15.2%のみ。67.4%は欧州単一通貨ユーロを支持していた。

7. それなら心配ないのでは?

  実際どうなるかは分からない。来月の国民投票でレンツィ首相に否定的な結果が出れば、政治的・経済的混乱が起きるのは間違いない。どれぐらいの混乱になるかは人それぞれ判断が異なる。

原題:Why Italian Vote Unlikely to Mean Swift Euro Exit: QuickTake Q&A(抜粋)


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