コンテンツにスキップする

逆風にあらがう福証、IPOでお金の「地産地消」へ-九州は大将気質

  • 上場企業数は113社、2000年の268社から半分以下
  • 2009年から「九州IPO挑戦隊」活動、2社が上場果たす

東京への一極集中、電子取引の浸透と地方の証券取引所に逆風が吹いている。JR九州の上場で久々に表舞台に立った福岡証券取引所も上場銘柄数は減少の一途、存続へ新規株式公開(IPO)予備軍の発掘に力を注ぐ。巨大市場にあらがうモチベーションの源は、地域の活力には地方取引所が必要との信念だ。

relates to 逆風にあらがう福証、IPOでお金の「地産地消」へ-九州は大将気質

奥井洋輝理事長

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  福証の奥井洋輝理事長はブルームバーグのインタビューで、「単独上場を増やす。地域活性化のためには地域に取引所がないといかん」と述べた。企業が地域で成長すれば、雇用を生み、やがて株式の上場にもつながる。企業は「地域の預金を投入してもらい、成長資金を得ることができる。お金の『地産地消』、地域の経済規模を大きくしていくことが使命」と言う。

  11月24日時点の福証の上場企業数は113社。本則市場が99社、新興市場のQーBoard(Qボード)が14社で、2000年の268社に比べ半分以下に減っている。取引の電子化で東京と地方の重複上場の意義が薄れる中、福証単独上場は全体の27%となる30社にとどまる。ことしは6月に地方自治体の広告支援を行うホープ、10月に西日本シティ銀行と長崎銀行などが合併した西日本フィナンシャルホールディングス、JR九州が上場、今月22日にはコインランドリーをチェーン展開するWASHハウスがQボードに新規公開したが、全て東京証券取引所との重複だ。

  上場企業数の減少や日本株全体としてアベノミクス評価の動きが一巡、米国や中国など海外経済の先行き不安が強まった影響もあり、昨年の福証の売買代金は202億円と一昨年から24%減少した。13、14年とQボード市場の売買が急増していた反動減があった、と福証では説明する。アベノミクスに沸いた13年には、2000年以降で最高の817億円を記録した。

relates to 逆風にあらがう福証、IPOでお金の「地産地消」へ-九州は大将気質

  福証は九州地域の直接金融の手段を提供するため、全国の証券取引所が戦後再開された1949年、中心的役割を果たす東京、大阪、名古屋に続く地方6取引所の1つとして誕生した。日本版金融ビッグバンが進んだ98年に株式売買の取引所集中義務が撤廃されて以降、地方取引所の再編が加速。2000年に東京が広島と新潟を吸収、01年に大阪が京都を吸収すると、リーマン・ショック後の世界的な取引所再編の流れを受け、13年に東京と大阪が合併した。現物株の取引所は現在、東京と名古屋、札幌、福岡の4市場があり、昨年の株式売買代金は全国合計で746兆1770億円、うち東京が745兆9550億円を占めた。

IPO挑戦隊

  福証は09年から、IPO企業の開拓策として「九州IPO挑戦隊」の取り組みを始めた。入隊企業は株式公開に必要とされる経営力や組織力をおよそ2年かけて学び、上場適格基準に近づけることを目指す。これまでの入隊数は40社を超え、九州にとどまらず、広島や山口県に本社を置く企業もある。1期生で不動産会社の東武住販、4期生で住宅会社のエスケーホームの2社が上場を果たした。東武住販はブルームバーグの取材に対し、支援プログラムで「自社の課題を見つけ、どう克服するかさまざまな指導を受け解決策を導き出した。株式上場という目標をより強く意識し、前進できた」と電子メールで回答した。

relates to 逆風にあらがう福証、IPOでお金の「地産地消」へ-九州は大将気質

福証プレート

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  福岡市のまとめでは、15年度の開業率は7%と全国21大都市(政令市と東京23区)の中で3年連続トップ。奥井理事長は、九州人の気質として「大将、リーダーになりたい人が多い」とみる。ただし、実際にIPOまでこぎ着けるのは難しく、「その道筋のナビゲートをしていく」ことが挑戦隊の意義で、「ベンチャー企業は全国で名前を知られていないが、地域では知られている。福証なら資金を集めやすい」とアピールした。

  一方、福証に単独上場する企業からは地方取引所の問題点も指摘されている。ファミリーレストランチェーンのジョイフルはブルームバーグの取材に対し、93年の上場を機に信用面などで有利になり、九州エリアでの知名度を確立できたが、福証だけの上場では株式の流動性と全国での認知度アップには限界がある、と電子メールで応じた。福証では海外企業の上場誘致のため、10年に外国株の上場制度を創設したものの、いまだ具体的な話はない。

  野村総合研究所の大崎貞和主席研究員は、「地方取引所が意義がないと言われ始めたのは1960ー70年代から。とにかく売買がないのが問題」と指摘。海外投資家は地方に取引所があることすら認識せず、個人にとっては売買できさえすれば、どこで注文が執行されようと興味がないと言う。地方取引所の存続は、「残したいという地元の思いがあればこそ。地域企業の新規上場に力を入れるのは妥当で、東京市場一つだけではきめ細かい対応ができないという企業があるなら、上場の場の一つとして意義がある」との見方を示す。

  福証は現在、福岡証券ビルのワンフロアに入り、立会場があった部屋は改築され、別のテナントが入居する。オフィス面積は全盛期の2分の1で、社員も約20人とピークから6割ほど減少。総務部の西村茂幸部次長は、九州企業の発掘では東証には負けたくないとし、「5ー10年先に多くの中小企業を上場させ、良い軌道に乗っていきたい」と意気込みを語った。

relates to 逆風にあらがう福証、IPOでお金の「地産地消」へ-九州は大将気質
    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE