ドナルド・トランプ氏の米大統領就任で幕を開ける2017年の投資戦略に迷っていませんか。中国は成長率を持続可能かつ比較的高い水準に保とうとするかもしれないし、欧州ではポピュリズムが広がり続ける公算もある。

  そんな迷える投資家には、米銀ゴールドマン・サックス・グループが顧客向けに公表した、17年のトップ戦略に関するリポートが参考になる。グローバルマクロ・マーケッツ部門共同責任者フランチェスコ・ガルザレリ氏率いるチームが作成した。

  紹介しているのは6つの投資戦略で、一部は従来からゴールドマンが強いコンビクションとしている戦略の継続だ。

ゴールドマン本社(ニューヨーク)
ゴールドマン本社(ニューヨーク)
Photographer: Mark Kauzlarich/Bloomberg

  ただ、同行が年末に打ち出す翌年の投資戦略の実績は最近芳しくない点には注意が必要だろう。年初から市場が混乱した今年の場合、トップ戦略としていた6つのうち5つが2月のバレンタインデー前までに取り消された。

1.先進国のポピュリズム伸長で上昇するのはドル

  16年の投資戦略で市場関係者が最も一致し、散々言いはやされたのは金融政策の乖離(かいり)を材料としたトレーディングだった。これがまた唱えられている。ただ、このトレーディングの根拠となっているのが今回は政治的な現象、ポピュリズムの伸長という点でやや趣が異なる。

  ガルザレリ氏のチームはリポートで「米国ではドル高になりやすい方向に展開が動いた。財政刺激策の可能性上昇、保護主義の強まり、移民制限、これらすべてが相まってインフレ圧力上昇と金融引き締めを促す」と指摘。「欧州では、英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる不透明性がポンドを圧迫しそうなほか、12月4日の憲法改正を問うイタリアの国民投票やその後のフランス、ドイツ、オランダの総選挙など一連の選挙がユーロの重しになるだろう」との見方を示した。

  ガルザレリ氏らはユーロとポンドを均等加重した通貨バスケットに対し、ドルの10%上昇を目標としている。撤退のめどはドルの5%下落。このドル上昇が実現すれば、向こう1年でユーロはドルに対してパリティ(等価)に、ポンドは1.14ドルへと下落することになる。

  このトレードの主なリスクは欧州中央銀行(ECB)のテーパリング、EU離脱手続きの正式な開始となるリスボン条約50条の発動を英国が遅らせることだ。

2.トランプ政権誕生で中国は人民元の一段安容認へ

  ゴールドマンは、中国当局が対ドルで管理しながら人民元安に誘導する政策を17年も継続するとみる。1年物ノンデリバラブル・フォワード(NDF)でのドル買いが有利だとし、1年以内に1ドル=7.07元になると予想。7.30元までの元安が進行する可能性も意識しつつ、6.75元へと元高が進んだ場合は撤退する構えだ。

  「中国の為替制度の根本的なジレンマは、ドルが上昇する環境下で通貨バスケットの安定を保つには、大幅なドル高・元安を許容する必要があることだ。だがそれは、資本の流出を再燃させるリスクもはらむ。弊社の基本シナリオは、中国人民銀行(中央銀行)が基準値を緩やかにドル高・元安方法に動かし続けるというものだ」とリポートで指摘した。

  過去1年間でドルは人民元に対し7.5%上昇。となると来年に7.3元までドル高が進んだとしても、上昇幅は今年よりも小さくなることを意味する。

3.落ち着いて正しい新興国通貨を選べ

  ゴールドマンのストラテジストらは、ブラジル・レアル、ロシア・ルーブル、インド・ルピー、南アフリカ・ランドを均等加重した通貨バスケットを韓国ウォン、シンガポール・ドルに対して買うよう勧めている。売りの2通貨は投資家が中国資産をショートにしたい際に使われることが多い通貨だ。

  ガルザレリ氏は「約7%の金利差(年間ベース)と7%の値上がりで、14%前後の投資リターンを見込む」とし、この取引で「買いの側にある通貨は米国の貿易や需要に左右される度合いが比較的限定される国だ」と付け加えた。

4.「一線を画した成長シナリオ」を持つ新興国株式は買い

  ゴールドマンのチームは「新興国株全体を見渡すと、ブラジル、ポーランド、インドは中国の成長や米国の貿易政策に取り立てて影響されず、通常の新興市場シナリオとは一線を画した成長シナリオを描くことができる」との見方を示す。

  このためポーランドWIG指数、ブラジル・ボベスパ指数、インド・ニフティ50指数を等価加重して為替ヘッジなしでバスケット買いすることを推奨。ゴールドマンは20%の上昇を見込むものの、現水準から10%下がった時点で手じまうとしている。

5.今度こそ、リフレ予想のトレーディング

  なんと、ゴールドマンは今年早々に撤退を迫られたのと同じトレーディングを挙げてきた。

  いま一度勧めているのは米10年物ブレークイーブンレートの買い。ゴールドマンのストラテジストチームはブレークイーブンレートが230bp(bp、1bp=0.01%)に拡大すると見込む。逆に160bpに縮小すれば撤退する。

  今回はスワップを使った欧州のブレークイーブンレートの買いも勧めている。エネルギー価格の上昇や緊縮政策の終了、中央銀行のインフレ許容見通しなどに触れ、「さまざまな要因から17年はリフレを見込んだトレーディングが良好になる余地があると考える」と指摘した。

6.欧州企業の配当の伸びに買い

  最後のお勧めは、為替ヘッジありで欧州ストックス50指数の18年12月限の配当指数先物に買いを入れておくことだ。

  同チームでは18年はそれほど遠い先でなく、大きなデュレーションリスクがあるわけではないと指摘。欧州企業の配当の70-80%は通常1-3月期末に発表されるため、配当の伸びに関する見通しは急速に明らかになるとの見方を示した。

  「実施日が比較的近い配当金は株価のバリュエーションの変化にはあまり影響されず、基調的な利益やキャッシュフローに左右される。16年の利益の伸びはわずかだったにもかかわらず、ストックス50の17年12月限の配当指数先物は6%上昇した。価格変動は年初来で7%だ」と説明した。

  18年12月限の同指数は現在112前後。ゴールドマンでは125への上昇を目標にしつつ、撤退ラインを105に設定している。
 

原題:Here Are Goldman Sachs’ Top Trade Ideas for 2017(抜粋)

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