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【コラム】トランプ相場を理解するための読本-Mエラリアン

ドル相場は今週、約10年ぶりの高値を付けた。それに伴い、ドル高の理由と持続可能性に加え、世界経済への影響が問われることとなった。

  ドルの値動きはどれほど大きいのか?

  ブルームバーグ・ドル・スポット指数は先週以降、3.1%上昇。ドル上昇は広範にわたるもので、他の主要通貨だけでなく新興国通貨に対しても大幅に値上がりした。

  これは米国内の動向で全て説明されるのか?

  大部分はその通りだ。米大統領選でのドナルド・トランプ氏の予想外の当選を受け、市場は過去1週間に急速に経済成長とインフレの加速の見通しを織り込んだ。その結果、12月の米利上げ確率は90%を上回り、その後の利上げの道筋も大幅に見通しが押し上げられた。

  他にも要因はあるか?

  答えはイエスだ。為替相場が相対的な価格であることを踏まえると、国内だけでなく海外の事象も反映される。

  米金融当局はハト派姿勢を後退させ、日本と欧州は通貨安が成長の追い風になると見込まれる事実があるにもかかわらず、日本銀行と欧州中央銀行(ECB)は極めて景気刺激的な政策を維持すると、市場は引き続き予想している。金利差の拡大と米経済のパフォーマンス強化を引き金とした、これらの国々や中国などからの資金流出の増大の影響も加わる。

  政治的な要因も挙げられる。トランプ氏勝利のサプライズにより、反エスタブリッシュメント(権力層)運動に突き動かされた形で、欧州が政治的な混乱に見舞われる可能性があるとの見方が広がっている。その皮切りはイタリアで12月4日に行われる憲法改正を問う国民投票だとされる。

  今後の展開とその影響はどうなりそうか?

  状況は複雑だ。ドルが他の主要国通貨に対してどのような相場展開となりそうか、ドルの対新興国通貨でのパフォーマンスとを比較すると、特にそうだ。

  ドルは円とユーロに対しては上昇し続ける公算が大きい。経済・金融動向を背景としたものだが、恐らく大きなぶれとなるだろう。新興国通貨が既に対ドルで大幅に下げている点を考慮すると、これら通貨をめぐる見通しはもっと不明確となる。それでも新興国通貨にはやがて反発する余地がある。

  全般的に見れば、このところのドル高は世界経済の再均衡化を容易にする方向に作用する。残念なのは、いらだたしいほど低調で十分包括的ではない成長が何年も続いた後、比較的低めの成長ペースの下でこうした展開となっていることだ。この結果、世界の他の地域で包括的な政策対応を欠き、米国が唯一の成長の機関車となるような事態では特に、ドル高進行は保護主義的な議論を呼び戻す契機ともなりかねない。

  (このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピー編集部の意見を反映するものではありません)

原題:A Primer to Understand the Dollar’s Surge: Mohamed A. El-Erian(抜粋)

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