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日銀は小春日和で当面ごろ寝、トランプ勝利でドル高必至-早川元理事

  • 減税は実現へ、金利・物価ともに上昇で1ドル100円割れ薄れる
  • 米国経済が復活する「保証はない」、保護主義的側面強く出る可能性

元日本銀行理事の早川英男・富士通総研エグゼクティブフェローは、共和党のドナルド・トランプ氏の大統領選勝利で米金利上昇、ドル高は必至だと予測した上で、恐れていた円高が遠のくことにより、「日銀は何もしないでこのままごろ寝をしていればよい。久しぶりに日銀に訪れた小春日和だ」と述べた。

  早川氏は17日のインタビューで、トランプ氏の政策について、「伝統的に小さな政府を志向する共和党が上下両院を制したので、インフラ投資はともかく、減税はある程度実現するだろう。財政赤字が相当大きくなることは避け難い」と指摘。米国は完全雇用にあり、10月の雇用統計で賃金上昇の兆候が見えてきたので、「金利は上がるし、物価も上がるだろう」と語る。

  米国経済は財政赤字拡大、保護主義の強まり、インフレ圧力の高まり、長期金利の上昇、ドル高という流れはまず動きようがないと指摘。日銀が一番心配していたのは、政策の枠組み変更が緩和縮小と取られ円高に進むことだったが、「1ドル=100円割れのストーリーはかなり消えた」とみる。

Hideo Hayakawa

早川氏

Source: Hideo Hawakawa)

  ドル・円相場は9日、トランプ氏の米大統領選勝利で一時1ドル=101円台まで急落したが、景気刺激策への期待を背景にドル高が進み、翌10日には105円台まで急反発した。17日は109円前後で取引されていた。

米国経済復活の保証はない

  一方で、トランプ氏勝利で米国経済が復活する保証はないと話す。富裕層に減税をしても財政赤字を大きくするだけで「何の経済効果もないことは、ブッシュ減税で証明済みだ」と指摘。減税を行い金融規制を緩和すればウォール街は喜ぶが、苦しむのはそれ以外の人々であり、トランプ氏は「保護主義的な側面を強く出してくるだろう」という。

  早川氏はトランプ氏の対中国政策を心配する。ドル高になると中国からの資本逃避を誘発するからだという。「トランプ氏は中国が人民元安に誘導していると誤解しているが、介入で人民元安を止めているのであり、それをやめれば人民元安が加速する」と話す。また、中国からの輸入に高関税をかければ、「日本を含め、サプライチェーンで結ばれているアジア全域に高関税をかけるのと同じだ」と指摘する。

総括的な検証

  日銀が9月に導入した金融政策の操作目標の変更について早川氏は、「量から金利へのシフトは、ああする以外に選択肢はなかった。幸運も手伝い、思った以上にうまくいった」と語った。

  消費者物価が安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続するオーバーシュート型コミットメントについては「既定方針の再確認であって何ら新しいことではない」と指摘。「イールドカーブコントロールで実際には長期金利を上げることになり引き締めになるので、バランスを取って入れたのだろう」と分析する。

  同時に行った総括的な検証については「真面目に読むと支離滅裂だ」という。マネタリーベースと期待インフレには長期的な関係があるとの分析について「どこにそんな関係があるのか」と批判。2%が未達成の原因も検証で挙げられている消費増税、原油安、海外経済ではなく、「賃金が上がらなかったことが原因だ」という。

  黒田東彦総裁や原田泰審議委員など「量を重視する一部の政策委員の票を得なければならないので妥協したのだろう。強いコミットメントさえ示せば期待はついてくる、と思ってやってみたが、そうはならなかった、ごめんなさい、というのが正しい結論だ」と語った。

課題は長期金利のコントロール

  早川氏は黒田総裁の3年半の金融政策について「最初は皆を驚かせて、それから強気一辺倒で、それはそれで役者としてうまくやったが、結局物価がずるずる落ちてきて、場面が変わっても同じ演技を続けてしまった」と振り返る。

  これからの課題として「長期金利をどれくらいコントロールできるか、やってみないと分からない」ことを挙げる。10年物国債金利を0%にペッグしているわけではないので、「本当にインフレ率が上がってくれば、どこかで調整する必要があるが、財務省も含めて結構抵抗が大きいだろうから、これは大変だろう」と指摘。

  その上で、「現時点では持久戦への備えとして量的拡大より圧倒的に良いが、物価が上がり始めたときにどう調整するか、その時の摩擦はむしろ大きいかもしれない」としている。

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