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アニメで夜のエンタメ外国人に、生き残りで明治座がメリル元幹部と

更新日時
  • 観客や演者の高齢化に見舞われた明治座が新規市場開拓
  • 訪日観光客の消費、モノからコトにシフトし商機

143年の歴史を誇り、日本を代表する劇場の一つである日本橋・明治座。観客の高齢化から生き残りをかけて、訪日外国人を新たな客層に取り込もうとしている。世界に誇るコンテンツのアニメを日本舞踊など伝統芸能と融合させ、和の美や四季を表現する舞台を9月から始めた。

  この舞台「SAKURA」は、主人公の女子高生サクラがアニメとシンクロしながら、玉手箱から飛び出したさまざまな世界を旅する筋立て。元メリルリンチ日本証券で副社長を務めた福原秀巳氏(66)が共同プロデュースしている。

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Hidemi Fukuhara

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  11月5日土曜日の公演は、座席の約半分が中国などアジア系団体客や欧州の観客で埋まった。ベルギー出身のスベニア・クラースさんは、インターネットで舞台の存在を知った。見に来たのは「アニメと日本に興味があったから」。「日本語が話せなくても大丈夫」という気楽さも手伝った。スウェーデンのエリン・ヤコブソンさんは、ミュージカル「セーラー・ムーン」のチケットが売り切れてしまい、やって来た。

  時代劇などの演劇界では観客と演者が高齢化しており、新たなスターも出て来ていない。明治座業務管理室の赤俊哉室長は、「先行きが見えないところがある。新たなマーケット創出が必要な時期に来ている」と危機感を募らせる。伝統芸能の歌舞伎を理解するには知識が必要で、この舞台では「いろいろな日本がごちゃ混ぜで玉手箱みたいな世界を追求し、知識無しで見られる入門編を目指している」と説明する。

  欧米諸国ではニューヨークのミュージカルやパリのムーランルージュなど夜のエンターテインメントが充実しているが、「東京は夜のエンターテインメント市場が空いている」と、政府のクールジャパン戦略推進会議のメンバーも務める福原氏は話す。今春から中国で高額品の持ち込みに対する関税が引き上げられた影響で、訪日観光客の爆買い消費は「モノ」から体験重視の「コト」に変わりつつあり、商機が存在する。

  観光庁によると、7-9月期の訪日外国人の消費額は11年以来初めて前年同期を下回り9717億円だった。1人当たりの平均支出も同17.1%減の15万5133円。内訳は買い物35%、飲食費21%に対し、娯楽やサービスは3.3%にとどまっている。

明治座

  歌舞伎座などと並び日本を代表する劇場の明治座は、現在は主に時代劇や演歌歌手による座長公演が行われている。地方から観光バスで訪れる60ー80代の女性客に合わせ午後4時台で終了することも多い。明治座の赤氏は、「劇場経営からいうと稼働率を上げる必要がある」と話す。

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The Meijiza theater in Tokyo.

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  今回の公演「SAKURA」は、使われていない夜の劇場を利用し、主に午後8時半に開演する。舞台上には昼間のセットを残したままスクリーンで区切って客席側3分の1だけを使っている。

  「クールジャパン」として日本文化の普及を図る国や東京都もバックアップし、が費用の一部を助成。明治座のある日本橋地区の再開発を手掛ける三井不動産は、特別協力している。かつては江戸を代表する街だった日本橋は、銀座や秋葉原、浅草に挟まれ外国人観光客にも素通りされてきた。日本橋街づくり推進部の中原修氏は、「夜のエンターテインメントができれば、街全体の活況にもつながる」と話す。

元金融マン

  舞台のエグゼクティブ・プロデューサーの福原氏は、野村証券を経て1984年にメリルリンチ証券に入社。99年の副社長就任以来、年間200億円規模の赤字が続いていたリテール部門のリストラに着手、店舗や人員削減を通じて収益体質の改善を進めた。03年4月に「人の首を切っておいて自分だけ残る訳にはいかない」と退社した。

  いつかは就きたいと思っていた映画の仕事への近道として、渡米し集英社と小学館が設立したビズメディア社長に04年に転身。英語版「少年ジャンプ」の出版や、マンガやアニメなどの海外展開を手掛け、14年7月に日本公開のトム・クルーズ主演の映画「オール・ユー・ニード・イズ・キル」をプロデュースした。
 

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The Sakura show at the Meijiza theater.

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  福原氏は、ミュージカルのキャッツ再演が終了する際には追加公演をわざわざニューヨークに見に行くほど、エンターテインメント好きだ。海外からプログラムを輸入して日本人キャストによるミュージカルもあるが、「コピーとオリジナルではすごさが違う」と実感。日本でも「オリジナルを作らないと外国人には見てもらえない」と言う。

ロングラン

  今回は第1期として来年3月まで約100公演が組まれており、明治座は2020年までのロングランを目指す。外国人を誘致するには外国語の字幕やチラシ等の追加投資が発生する上、海外に情報が浸透するには時間がかかるため、投資回収にはロングラン公演が欠かせない。 明治座にとっては制作・運営費がかかるが、もともと公演のなかった夜の時間帯は新規市場開拓につながる。

  米英では実験的な作品が評判となれば、エンゼルと呼ばれる投資家から資金を募れる文化がある。福原氏は「10本に1本ヒットが出ればいい」という投資感覚だと話し、日本ではさまざまなスポンサー企業が出資する制作委員会方式が多く、「サラリーマン的でリスクを誰も取っていない」と言う。

  金融でもエンターテインメントでも「お金を追っかけるより、お金が後ろから追いかけてこないといけない」と福原氏。作品が評判となってお金を出したいという投資家が現れて、「そういうサイクルにうまく持ち込めれば勝ち」とみている。

(第12段落を追加して、更新しました.)
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