日本は経済成長に向けた高い潜在力を持っている-。そんな指摘がある。人口減に伴う内需縮小が懸念される中、能力の高い女性や高齢者の労働力を活用し、豊富な資本を元手に持ち前の技術力でビジネスを拡大し、何十年も改善していない生産性を向上させれば、急成長が期待できるとの見方だ。

スマホを操作する女性(銀座)
スマホを操作する女性(銀座)
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  経済協力開発機構(OECD)の村上由美子東京センター長は2日のインタビューで「経済活動をするなかで、とても重要な基本条件がヒト、モノ、カネだ」と説明。日本にはこれらの素材がそろっているとした上で、経済成長に向けた「伸び代と言う意味では、日本が1番あってもおかしくない。伸びるための潜在的な余力がある」と話した。

隠れた人材

  村上氏がまず挙げるのは基礎能力が抜群に高い女性の社会進出だ。24カ国・地域に住む16-65歳の男女を対象に実施したOECDの調査によると、日本の女性は数的思考力で282点、読解力で295点を獲得し、いずれも参加国中トップだ。

  しかし、高等教育を受けた日本の女性の就業率は低い。OECDの「図表で見る教育」によると、高等教育を修了した25-64歳の男性は93%と平均の88%を上回る一方、女性は72%と平均の80%を下回っている。

  日本の女性は結婚後、出産・育児に手がかかる30ー40歳代で職場を離れ、賃金の低いパートタイムで戻るケースが多い。出産後も仕事を続ける女性は増加傾向にあるが、同世代の女性の就業率が落ち込む「M字カーブ」を描く現状は変わらない。

  OECDの調査では、女性と同様に調査対象の最高齢となる55-65歳の年齢層でも、日本は読解力と数的思考力でいずれも1位だった。しかし、多くが55歳以上で定年を迎えることから就業率は急激に下がる。村上氏は高齢化が進み、生産年齢人口が減少する日本にとって隠れた人材の活用が不可避とみる。

  日本の高齢者は他国に比べて勤労意欲も高い。米国、スウェーデン、ドイツ、日本の4カ国で実施した内閣府の調査によると、「今後も収入の伴う仕事をしたい」と答えた高齢者は日本が44.9%と一番多かった。理由は「収入がほしい」が49%、「体に良いから」が24.8%、「仕事が面白いから」が16.9%の順番だった。

「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」
「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」
内閣府

技術力と生産性

  世界知的所有権機関(WIPO)によると、14年の特許取得件数で日本は1位となる29万7251件を記録。2位の米国(25万6047件)を大きく引き離した。3位は中国(17万6398件)だった。特許庁によると日本の出願件数も3位だ。

  しかし、必ずしも製品化につながっていない。OECDによると、新商品を市場に導入した企業割合は、製造業で12.7%、サービス業では6.4%にとどまっている。村上氏は「日本にはイノベーションの種はたくさんある。ただ、アイデアを商品化するのにもリスクがいる」とし、リスクを取りやすい環境整備が重要だと言う。

  生産性もしかり。日本生産性本部によると、1970年から2014年まで、日本の時間当たり労働生産性は主要7カ国(G7)の中で一貫して最低だ。OECD加盟国の中では、日本は21位(14年)と低位に甘んじている。長時間労働がまん延し、週50時間以上働く雇用者の割合は日本が22.2%とOECD平均の12.51%を上回った。

内部留保


  村上氏が人件費をはじめ、技術力や生産性を高めるための資金源として注目しているのが日本企業が抱える膨大な内部留保だ。財務省の法人企業統計によると、内部留保に当たる国内企業の「利益剰余金」は年々増加。15年度には378兆円に上った。

  日本銀行の資金循環統計(16年4-6月期)によると「民間非金融法人企業」が保有する現金・預金は242兆円に上る。さらに貸出・預金動向(10月速報)では、銀行の預金残高と貸出残高の差額が218.5兆円と、融資余力の大きさを示している。

  資金を借り入れる際の金利も下がっており、企業が積極的に投資する環境も整っている。日本銀行によると、主要行の長期プライムレートは1月にマイナス金利の導入を決定して以降、1桁を割り込み、8月10日時点で0.95%となっている。

  村上氏は「お金があるのに回っていない。マイナス金利でお金はあるはずだが、投資やリスクマネーに向かっていない。これは仕組みの問題だ」と指摘。その上で、「日本の1番の課題は、持ち腐れとなっている宝を結果につなげるための仕組みをいかに構造改革で作っていくかだ」と述べ、痛みを伴う構造改革の必要性を訴えた。


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