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物価上がらないのは文化に近い、2%達成には時間-門間前日銀理事

  • 年齢層問わず消えない将来の不安-賃金や年金、社会保障
  • 金融政策は最大限に緩和された状態、追加措置は当面不要

日本銀行前理事の門間一夫氏は、消費者物価の上昇率が2018年度ごろ2%に達成するという日銀の新たな見通しについて「多少高めの目標だと言わざるを得ない。もう少し時間がかかる」と語った。

  日銀を5月末に退任し、現在はみずほ総合研究所のエグゼグティブエコノミストの門間氏が15日のインタビューで述べた。門間氏は、日本の消費者や企業は物価が上がらないことを前提に10年も20年も経済活動をしてきており、「物価が上がらないことは言ってみれば文化、慣習に近い。それを変えるには相応の時間がかかる」と述べた。

Federal Reserve Bank Of Chicago President Charles Evans Joins IMF Panel

門間氏

Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg *** Local Caption *** Kazuo Momma

  9月の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は前年比0.5%低下と7カ月連続のマイナスとなり、食料(酒類を除く)とエネルギーを除く総合、いわゆるコアコアCPIは横ばい、日銀が独自に公表しているエネルギーと生鮮食品を除いた日銀版コアCPIも0.2%上昇と一段と鈍化した。日銀は1日に公表した新たな物価見通しで、2017年度中としていた2%達成時期を18年度ごろに先送りした。

  門間氏はCPIは「今がだいたい底」とみるが、これからどんなスピードで上がるかはまだ見えないと指摘。今年前半の円高の影響が出尽くしてない可能性もある上、消費の低迷で企業の価格設定行動も慎重化しているという。日銀が9月会合でまとめた総括的な検証では、消費の低迷は「消費増税が一番大きな理由であるかのように分析されているが、必ずしもそうは思わない」と語った。

  門間氏は消費低迷の一番大きな理由として、「将来不安がなかなか消えないこと」を挙げた。賃金が今後順調に上がるのか、将来の年金や社会保障はどうなるのか、「老後が近い人もまだ若い人も、一様にいろいろな意味での不安を感じている」という。そういう中で、消費が目に見えて良くなったり、企業が持続的に価格を上げていったりするのは「そう簡単ではない」と語った。

最大限の緩和

  門間氏は、日銀が9月に導入した金融緩和の枠組みについて「金融緩和として最大限来ている」と述べ、見通し得る将来、追加緩和は必要ないとの見方を示した。

  新しい枠組みについて門間氏は、「非常にシンプルで分かりやすくなった」と評価。イールドカーブを最適な状況、最も緩和的に保つことが最大の目的であり、長期国債の買い入れペースはその下で市場動向によって可能なら80兆円を続ければいいし、もっと少なくてよければ減らせば良いと述べ、「あらかじめいつ、どの程度減らすかを考える必要は全くない」と語った。

  日銀は9月21日の金融政策決定会合で、操作目標をマネーの量から長期金利と短期金利を操作する長短金利操作付き量的・質的金融緩和に変更。さらに、消費者物価の前年比の実績値が安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続するオーバーシュート型コミットメントを導入した。

なくなった追加緩和求める声

  門間氏は、1月のマイナス金利導入決定から半年程度の試行錯誤の結果、政策金利がマイナス0.1%、10年物国債金利が0%というイールドカーブが「最も緩和的であることが分かったということだ」と指摘。これまでのように円高になっても追加緩和を求める声が出なくなる可能性が強まったことが「総括的な検証の最大のポイントだ」と語った。

  かつては日銀が精いっぱい緩和をしていると訴えても世間はそうは見なかったが、今はむしろやり過ぎではないかという声が上がる中で日銀は総括的な検証を行った。その結果、「これが最大限の緩和だと言っていることに対し、多くの人が納得感を持って受け止めているのではないか」と門間氏は指摘。「もっと金利を下げるべきといった議論はそう簡単に出てこないと思う」と述べた。

  新たな枠組みの今後の課題として門間氏は、今のイールドカーブの水準が本当に最適かどうかを毎回の会合で時間をかけて検証する必要があることと、円高の急激な進行など負のショックが発生した時、イールドカーブどう変えるのが良いかを判断すること、を挙げた。

「トランプ大統領」誕生の影響

  米大統領選のトランプ氏勝利については、「ある程度、景気刺激的な財政スタンスに変わるという方向性はかなりの確率で起きてくるだろう」と言う。保護主義的な政策についても、「それほどひどいことはやらないようだとの見方から、市場は今ユーフォリア的な状態になっている」と指摘する。

  トランプ氏勝利の背景として構造的な低成長と中間層以下の所得が2000年以降減少するなど所得格差の拡大があるので、「そこを変えられるかはっきりしない」と指摘。財政刺激は短期的な効果しかないかもしれず、中間層以下の人々がグローバル化や技術革新の恩恵を受けられる社会に変えていくことが重要だが、本当に米国が構造的に改善していくのか、「時間をかけてみなければならない」と述べた。

  米国が12月に利上げするとの見方が根強いことについて門間氏は「長期金利とドルがともに大きく上昇しており、米連銀の言葉を借りるとフィナンシャルコンディションは既にタイト化している」と語る。現在の金融環境が利上げした以上に引き締まっていると連銀が判断してもおかしくないので、「これで利上げで決まりという簡単な理屈ではないように思う」と語った。

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