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【コラム】「トランプ大統領」で金利に何が起こるのか-エラリアン

  • FOMC政策当局者見通しと市場予想が収れんも
  • 金融当局の独立性に疑問符なら景気に逆風

市場は2年以上にわたり、米連邦公開市場委員会(FOMC)政策当局者の見通しよりもはるかに少ない金融引き締めを織り込んできた。

  しかし、ドナルド・トランプ氏勝利という意外な米大統領選挙結果でこれが変わる公算が大きい。その理由は二つ考えられるが、そのどちらが優勢になるかによって意味合いが違ってくる。

  FOMC政策当局者の個人個人の金利予想を示すいわゆる「ブルー・ドット」の中央値と金利フォワード取引が示す市場の予想を比較すると、興味深い状態が見えてくる。両者は2014年1-3月(第1四半期)に乖離(かいり)し始め、その後、ともに低下しながら差が拡大した。

  しかしこの格差は今後数カ月に縮小するかもしれない。

  トレーダーらはトランプ氏の選挙直後の演説内容からリフレ-ション(経済再膨張)シナリオに飛び付いた。中でもインフラ支出や法人税改革、規制緩和といった成長重視の経済政策に注目が集まった。一方でトランプ氏は選挙運動中と異なり、中国とメキシコに対する関税や北米自由貿易協定(NAFTA)撤廃など、スタグフレーションをもたらしかねない保護主義的政策を強く主張することはしなかった。

  さらに、9日の勝利演説の論調は全員参加型の融和的姿勢を示唆。対立候補だったヒラリー・クリントン氏、共和党のライアン下院議長、オバマ大統領らの発言もトランプ氏のメッセージを補強した。

  対立色の薄い論調と成長重視の政策姿勢が市場のセンチメントを好転させ株価は上昇。一部のアナリストは早くも米成長予想を上方修正することを考えている。世界経済にももちろん好影響が見込まれる。

  しかし、トランプ氏の今後のかじ取りによっては、景気に関するこのような期待以外が、市場の金利見通しの変化をもたらすことになるかもしれない。市場の見方の変化は既に10年物米国債利回り2%超えに表れたが、その要因として考えられるもう一つはトランプ氏の経済顧問たちからの選挙後の発言だ。それは、金融政策当局の長期にわたる景気刺激措置の効果に対する疑問であり、そうした政策措置が「偽物の経済」を創り出しているのではないかという懸念だ。選挙運動中にも、連邦準備制度の独立性とその指導者の能力に不満を示す発言があった。

  このような論調が今後数週間に顕著になった場合は、当局者と市場の金利見通しの収れんは違った意味合いを帯びることになるかもしれない。米経済に貢献してきたと見なされる中央銀行の独立性への懸念が市場に生まれれば、債券利回り上昇と同時に株価が下落し、経済成長への逆風となる可能性が高い。

  トランプ氏の大統領当選は極めて重大な政治シフトであるばかりでなく、既に市場を動かし景気見通しに影響を及ぼしている。同氏が自身の経済政策の前向きの側面を強調し続けスタグフレーションを招くような行動を控え、そのような政策の実践に議会がしっかりと取り組めば、金利見通しの収れんは、より高い水準の成長と金融安定を反映したものとなるだろう。

(モハメド・エラリアン氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストです。このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピー編集部の意見を反映するものではありません)

原題:What Trump Will Mean for Interest Rates: Mohamed A. El-Erian(抜粋)

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