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元IEA事務局長田中氏:米国離脱なら「パリ協定無意味」-一問一答

  • 米国で供給増えOPECは減産のインセンティブを失う恐れ
  • トランプ氏の原子力政策は注目のポイント

国際エネルギー機関(IEA)の事務局長も務めた笹川平和財団の田中伸男理事長は10日、ブルームバーグとのインタビューに応じ、米大統領選でのドナルド・トランプ氏の勝利によって、地球温暖化対策で「思い切った政策変更があり得る」と述べ、注視する必要があると述べた。一問一答は以下の通り。

-トランプ氏のエネルギー関連政策がどういう変化をもたらすか
 「今までの政権と地球環境問題に対する政策が大きく違い、資源開発や石炭でも違う。思い切った政策変更があり得る。本当に米国がパリ合意から離脱するかわからないが、そのインパクトが一番大きい気がする。世界で2番目の排出国である米国が抜けると、協定そのものが無意味になる」

The 2016 Republican National Convention

オバマ大統領の環境政策撤廃を公約に掲げたトランプ氏に反対する人々

Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg

-世界のエネルギー市場に与える影響は
 「シェールガスや石油の探査、生産、沖合掘削に対する制限を緩和していくはずなので、供給は増え、ガスや石油の値段はもっと下がる可能性がある。米国は明らかに供給を増やす方向でいるので、OPEC(石油輸出国機構)が減産するインセンティブがなくなる。OPECは11月末の総会では様子見しか取る手はないのではないか。市場はOPECが何かやることを期待していたので、何もやらないと決めた途端に油価はまた下がるかもしれない」

-米国第一主義によって価格高騰や供給不安、供給途絶時に米国からの輸出が止まる可能性は
 「米国のエネルギー輸出はたいした量ではなく、無理やり止めて国内に回すというふうにはあまり考えにくい。石油の供給が途絶えるときに融通する国際的なフレームワークから脱退することも考えにくい。いくらアメリカ・ファーストといっても、全て国際的なリーダーシップをやめてしまうと言っているわけではない」

-トランプ氏の原子力政策をどう見ているか
 「原子力について全く発言していないのでわからないが、これまで共和党政権は原子力に前向きで、民主党はどちらかというと慎重だった。米国は2030年代になると、老朽原発をリプレースするのか廃炉するのか、大きな政策の分かれ道となる。しばらくはシェールも石炭も石油もあるから原子力はいらないという可能性もあるし、シェールの生産は続いても20年くらいなので、その先を見据えた次世代原子炉の開発をまた始めるかもしれない。これは日本の核燃料サイクルと絡んですごく面白いポイントだ」

-2018年に失効する日米原子力協定の行方は
 「日本が核燃料サイクルを続けるうえで日米原子力協定は必須で、当然延長が必要になる。民主党政権内には核不拡散への懸念が強い人が多かったので、共和党政権になってより延長は通りやすくなるのではないか。反原発派の方が言うように日本は核燃料サイクルを放棄し、日米原子力協定もなくていいという議論もあり得るが、協定がないと使用済み核燃料などのごみ処理もできない。日米安全保障とも直結する話なので、協定をやめるオプションはないと思う」

-今後の米国の外交政策が日本の対外経済協力にどう影響すると考えているか
 「日本とロシアは北方領土問題と絡めてエネルギー含む経済協力の話が進んでいるが、ロシアと米国の関係が改善すれば、米国は日ロの経済協力に寛容になると期待できる。トランプ政権になると、日ロ間の天然ガスパイプライン、電力線連係などでも日ロ協力の道が開かれる可能性が大きい」

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