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トランプ氏の経済政策「トランプノミクス」に楽観、悲観の両論

  • 減税案などは景気にプラス、反自由貿易的措置は成長圧迫
  • 投資家はこれら2つの見方で「綱引き」に

次期米大統領に選ばれたドナルド・トランプ氏は、驚くべき勝利で同国の政治体制に衝撃をもたらした。これからは、同氏の経済政策「トランプノミクス」が米国および世界の経済を同じように一変させるかどうかが問われることになる。

  メキシコからの移民制限のための壁建設や、中国製品の輸入を抑制する関税などを呼び掛けるトランプ氏は、過去50年余りにわたり世界経済のグローバル化の進展を支えてきた基本原則の一部に挑んでいる形だ。

  ただ同氏はこうした過激な手法と並行して、大型減税や広範な規制緩和といった共和党の定石通りの正統的な政策も打ち出し、それが米国や世界の成長促進につながる可能性もある。

  過去に共和党の連邦議会スタッフを務め、現在はコーナーストーン・マクロ(ワシントン)のパートナー、アンディ・ラペリエール氏は「トランプ次期政権下で市場と経済にはかなりの潜在的な上振れがあるが、潜在的な下振れの方が大きい」との見方を示した。

  米国株は9日、トランプ氏当選が経済に打撃となるとの懸念を背景に、通常取引開始前の時間外取引で急落したものの、同氏の減税案とインフラ支出拡大計画およびその景気刺激効果に投資家の関心が集まり、結局、上昇して終了した。

  現時点では、トランプ次期大統領が何をするのか、明確な部分よりも不確実性の方が多い。同氏はまだ、選挙戦で公約したアイデアの多くについて詳細を明らかにしておらず、新政権の主要経済ポストに誰を起用するのかもあまりヒントを示していない。

中国報復も

  トランプ氏の減税案やインフラ、国防関連の歳出増の計画実現に鍵を握る共和党支配の議会とどのような関係を築くのかも不透明だ。同氏はライアン下院議長とあからさまに対立し、ワシントンの既存政治を一掃すると有権者に訴えてきた。

  トランプ氏はまた、現行のままでは中国やメキシコなど米国の貿易相手国に大幅に有利だと主張し、両国からの輸入に高関税を課す方針を警告。それはトランプ氏当選の原動力の一部にもなった緩慢なペースの景気拡大にとって最大のリスクとなる。

  米ピーターソン国際経済研究所のゲーリー・ハフバウワー上級研究員は、たとえスケールダウンした形であっても、トランプ氏の計画が実行されれば、中国は恐らくそれに報復し、貿易戦争の不安が高まると話す。

  トランプ氏はこのほか、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を求めるとともに、日米など12カ国が発効を目指してきた環太平洋連携協定(TPP)からの撤退を公約している。同氏の顧問は、次期大統領の狙いは貿易を落ち込ませることではなく、米国が確実に公平な扱いを受けられるようにすることだと説明するが、ハフバウワー氏は「貿易と海外投資はこの60年間、世界経済の成長の土台だった」が、「それは今や過去のものだ」と語った。

差し引きプラスか

  メキシコなどからの不法移民の強制退去を掲げるトランプ氏について、ディシジョン・エコノミクスのアレン・サイナイ最高経営責任者(CEO)は、米労働市場がほぼ完全雇用の状態にあり、企業の人材難が深刻化する中で、労働力の伸びを抑制しようとする措置は経済の障害につながりかねないとみる。

  しかしその一方でサイナイ氏は、トランプ氏が借り入れた資金を活用して減税と支出拡大に充てれば、トランプノミクスはマイナス面を差し引いたネットの効果でプラスとなるだろうと予想。「結論から言えば、トランプ次期大統領の経済プログラムは成長促進に向けたものだ」とし、「それは古典的なマクロ経済刺激策であり、経済の強化、物価と金利の上昇を意味する」と説明した。

  マクロエコノミック・アドバイザーズ(セントルイス)のジョエル・プラッケン氏は、その結果としての金利上昇が将来的に成長を抑制すれば、国内総生産(GDP)押し上げ効果は短期的なものにとどまると分析。同氏はさらに、議会の財政規律重視派がトランプ氏の政策がもたらすであろう財政赤字拡大を容認するのか疑問だとも述べた。

  ジャナス・キャピタル・グループの世界株式戦略担当ディレクター、アダム・ショア氏は「トランプ氏の極めて景気刺激的な計画と、貿易をめぐる同氏の発言との間の綱引きが続くだろう」とコメント。「市場は貿易や対立の多い他の政策を比較的考えないようにし、プラス面の方を見ているというのが現状と考えられる」と論じた。

原題:Trump’s Array of Economic Ideas Arms Both Pessimists, Optimists(抜粋)

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