トランプ氏の自動車関税政策、フォードのほかトヨタやVWにもリスク

  • メキシコ産自動車への高い関税が実施されたら業界全体に影響も
  • トランプ氏の政策は「貿易戦争」を引き起こす恐れ-エコノミスト

フォード・モーターは、米大統領選挙で勝利したドナルド・トランプ氏の格好の攻撃対象だった。同氏は選挙戦中ずっと、フォードがメキシコで自動車を生産していることを批判した。だが、トヨタ自動車や独フォルクスワーゲン(VW)、他の米自動車メーカーも、同じようにリスクにさらされている。

  トランプ氏は選挙戦でトヨタ日産自動車を名指しで批判はしていない。しかし、米ゼネラル・モーターズ(GM)も含めあらゆる自動車メーカーがメキシコ工場に自動車と部品の大量生産を委ねているのが現状だ。トランプ氏はメキシコで生産された自動車に高い関税を科す方針を表明しており、この公約が実行されたら自動車メーカーは打撃を受ける。

デトロイトで演説するドナルド・トランプ氏(8月8日)

Photographer: Sean Proctor/Bloomberg

  独デュースブルク・エッセン大学の自動車リサーチセンター(CAR)でディレクターを務めるフェルディナンド・ドゥーデンホッファー氏は、「トランプ氏は貿易障壁を築こうとするだろう」と指摘。「そのため、米国に工場がある自動車メーカーは勝ち組だ。自動車業界にとって『黄金郷』であるメキシコは苦境に陥る可能性がある」と述べた。

  GMやフォード、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)など世界の自動車メーカー9社は2010年以降、メキシコへの総額240億ドル(約2兆5400億円)超の投資を発表してきた。VW傘下のアウディおよびBMWダイムラーは低コストのメキシコでそれぞれ高級車、エンジン、大型トラックを製造しているか、その計画がある。トランプ氏はメキシコが米労働者を犠牲にして恩恵を受けたと批判。こうした主張で有権者の支持を集め、大統領選での勝利につなげた。ミシガン州アナーバーの自動車研究センターによると、メキシコでの生産は20年までに200万台から500万台と、2倍余りに増える可能性がある。

  ミシガン大学の労働・雇用・経済研究所のエコノミスト、ドナルド・グライムズ氏は、トランプ氏が貿易協定を破棄し、反ダンピング規定を使って多数の国に対して広範な関税を科すことを決意したら「世界的な貿易戦争を引き起こすことになる」と指摘した。

  トランプ氏は10月12日、遊説先のフロリダ州で「日本は自動車でわれわれを搾取している」と批判。また、7月にはオハイオ州でボランティアに対し、日本から米国に向けて「巨大船舶」が自動車を運搬しており、日本は「われわれのおかげで裕福」になったと主張した。

  トヨタと日産、ホンダの担当者はコメントを控えている。

  日本の自動車メーカーのメキシコでの年間生産能力の合計は約136万台で、さらに年間生産能力が計43万台の新工場の計画も発表している。メキシコで生産され米国で販売されるモデルは、トヨタ「カローラ」、日産「バーサ」と「セントラ」、ホンダ「フィット」など。

  住友商事グローバルリサーチの高井裕之社長は、北米自由貿易協定(NAFTA)がいずれ議題に上れば、特にメキシコでの自動車関連投資などで日本企業に極めて大きく影響するだろうと指摘。新大統領のために取引や投資が非常に困難になれば、他の場所に移動する可能性があるとの見方を示した。

原題:It’s Not Just Ford: Trump’s Trade Barbs Threaten VW, Toyota Too(抜粋)

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