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トランプ氏勝利、世界秩序への脅威に-過激な公約の実行が焦点

  • 当選すれば対ロ制裁解除を「検討する」とトランプ氏は発言
  • 米主導の同盟の弱体化で中国に南シナ海での勢力拡大の機会提供も

英国の欧州連合(EU)離脱の選択は準備運動だった。米大統領選でのドナルド・トランプ氏の勝利によって、先進諸国に押し寄せていたポピュリズムのうねりが世界最強の民主主義国家をのみ込んだ。

  これが米国以外の国々にとって実際に何を意味するかは、不動産王でリアリティー番組の元司会者であるトランプ氏が選挙公約の実行にどれだけ真剣に取り組むかにかかっている。次期大統領の下で想定される事態には、貿易戦争や北大西洋条約機構(NATO)の弱体化、新たな核軍拡競争も含まれる。

  トランプ氏は9日未明の勝利宣言で、「われわれは常に米国の利益を最優先とするが、どの国も公正に扱うと国際社会に伝えたい」と世界各国の指導者に呼び掛けた。

Republican Presidential Nominee Donald Trump Hosts Election Night Party

トランプ氏

Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg

  トランプ氏が選挙公約通りに行動すれば、第2次大戦後の西側世界の安全保障と繁栄を支えてきた米国主導の同盟や制度が崩れる危険がある。1989年のベルリンの壁崩壊で始まったリベラルな国際主義の広がりは大きく後退し、特にメキシコやウクライナの経済や安全保障には深刻な打撃となる恐れがある。

  中国からの輸入品に高い関税を課し、同国を為替操作国に認定するといった過激な公約をトランプ氏が実行に移した場合、金融市場がさらに不安定になり、リスク回避の動きが強まることは確実だとスタンダードチャータード前最高経営責任者(CEO)で、現在は米ハーバード大学ケネディ行政大学院のシニアフェローを務めるピーター・サンズ氏は指摘。「大規模なリスクオフの動き」となり、米国自体が不安定さの震源となることが事態を複雑にするだろうと同氏は述べた。

  トランプ氏は、当選すればロシアによる2014年のクリミア編入を承認するかどうかや、ウクライナ東部でのロシアの軍事介入に対抗して導入された対ロ経済制裁の解除を「検討する」ことになろうと述べていた。さらに米国は集団防衛を定めた北大西洋条約第5条に従ってバルト諸国を守るが、これらの国が費用を十分に負担することが条件だと主張していた。

Cold Welcome for Trump

  中国では米国主導の同盟へのトランプ氏の無関心が、南シナ海や極東での勢力拡大の機会を提供すると捉える向きがある一方、保護主義的な脅しを同氏が実行する可能性について懐疑的な見方もある。

  シンガポール国立大学(NUS)リー・クアンユー公共政策大学院のアジア・グローバリゼーション・センターの黄靖所長は、トランプ氏の勝利で中国が経済的に失うものは多いが、「安全保障の面では得るものが多く、中国の一部の人々がトランプ氏の勝利を切望していたのはそのためだ」と分析した。

原題:Trump Victory Threatens a New World Disorder as Putin Looks On(抜粋)

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