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国会:TPP承認案が衆院通過-トランプ氏の米大統領選勝利でも

更新日時
  • トランプ氏は選挙戦でTPP脱退に言及
  • 国内では相次ぐ失言で国会紛糾、政策論争は深まらず

衆院は10日午後の本会議で、環太平洋連携協定(TPP)承認案と関連法案を自民、公明両党などの賛成多数で可決した。与党は今国会中の成立を目指しているが、米国の次期大統領で勝利した共和党のトランプ氏が選挙戦で脱退にも言及していることから、野党側は現時点での採決に反発していた。

  民進党の蓮舫代表は9日、トランプ氏がTPPに「繰り返し否定的な発言を行っている」ことから、「今後の同協定に対する米国の動向を一層注視する必要があることは言うまでもなく、現状での採決の必要性は全くない」との談話を発表。米国でも共和党のマコネル上院院内総務が9日の記者会見で、議会がTPP承認案を年内に取り上げることはないとの見解を示した。

  菅義偉官房長官は10日午前の記者会見で、米国でのTPPをめぐる状況について「現職のオバマ大統領も議会通過に向けて全力で取り組んでいる。米国を含むそれぞれの国々が国内の支持を得て手続きをすると認識している」と指摘。その上で、「自由貿易というのは日本だけではなくて米国はじめ世界で極めて重要だと思う。TPP含めて日本は主導的役割を果たす」と語った。

  TPP交渉は2015年10月、米アトランタで開かれた閣僚会合で大筋合意。発効には域内の合計国内総生産(GDP)の85%以上を占める6カ国以上が手続きを終える必要があると定められており、域内GDPの8割以上を閉める日米2カ国の国内承認は不可欠だ。交渉に当たった甘利明前TPP担当相は8日の取材に対しオバマ政権下で承認が得られれば「ベストだ」と話していた。

トランプ大統領

  トランプ氏は選挙戦を通じて、大統領就任直後にTPPから脱退すると宣言してきた。7日のミシガン州での演説では、「雇用喪失につながるTPPはすぐに止める」と明言。さらに、「TPPでは、為替操作が話題になることもなかった。話したくなかったからだ」と批判した。トランプ氏は、中国や日本は為替操作をしていると主張した。

  オバマ大統領はTPP承認を残り任期の最優先課題の1つに掲げる。3日に発表した試算では、TPPが発効しないまま、中国が主導する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)が実行された場合、対日貿易に関係する米国の470万人が失職する可能性があると推計した。米国はRCEP交渉に参加していない。

  第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは米大統領選結果を受けた9日付のリポートで、「TPPに反対するトランプ氏のもとで、貿易連携は仕切り直しを余儀なくされるだろう」と指摘している。

日程闘争

  政府が3月にTPP承認案と関連法案を国会に提出して以降、国内での審議は混迷を極めた。4月には、政府提出資料の大部分が黒塗りだとして野党が反発。さらに、当時の西川公也衆院TPP特別委員長が交渉の内幕を描いた本を出版しようとしたことから、野党は黒塗り資料との整合性などを問題視し審議拒否に転じる一幕もあった。当初与党は通常国会での成立も視野に入れていたが、参院選も控えていたことから、臨時国会に持ち越さざるを得なくなった。

  9月の臨時国会が始まってからは、山本有二農相の相次ぐ失言に野党が猛反発。共同通信によると山本農相は10月、自民党議員のパーティーで、TPP承認案を強行採決する可能性に言及。批判を受けて発言を撤回したが、1日に冗談を言ったらクビになりそうになったと再び発言した。

  与党は当初、米大統領選当日の衆院通過を予定していたが、先送りを余儀なくされた。自民党の二階俊博幹事長は7日の会見で、「1日も早くわが国の方針を国内外に示すことが重要だと思っていたが、それがかなわなかった」と述べ、審議に「やや時間がかかりすぎている」との見方を示した。民進党などは10日、山本農相への不信任決議案を提出した。

  第一生命経済研究所の西浜徹主席エコノミストは、TPP交渉への参加は民主党(現・民進党)政権時代に決まったため野党も内容について反対しづらいと指摘。現在の国会審議については「党利党略で、政策論は深まっていない。TPPには痛みが伴うが、それをどう解消するかという議論がない」と語った。政権支持率への影響については、TPPを受けた対策や、今後の経済状況によって挽回可能だとした。

  7日付読売新聞が報じた世論調査では、TPPを今臨時国会で承認することに「賛成」が43%で、「反対」が39%。10月の前回調査は「賛成」45%で、「反対」33%だった。内閣支持率は58%で、前回の57%とほぼ変化は見られなかった。

(衆院本会議で可決したことを受け、見出し、第1段落を更新します.)
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