コンテンツにスキップする

予想外のトランプ大統領誕生、日本株下値は1万5000円か-市場関係者

  • 短期はリスクオフ優勢、安保・外交抱えBREXITと異質の声
  • 中長期では楽観論も、インフラ投資や減税が米経済刺激の可能性

事前予想を覆し共和党のドナルド・トランプ氏が米国大統領選を制したことで、政治・経済の不確実性が高まったと株式市場で警戒されている。米国と同盟関係にある日本への影響も読み切れず、リスク回避の動きが世界的に広がれば、日本株も一段の下落は免れない。

  アイザワ証券投資顧問室の三井郁男ファンドマネジャーは、日本時間9日午後の時間外取引で米S&P500種株価指数先物が値幅制限いっぱいまで急落した点に触れ、「今回の米大統領選の開票速報は予想と逆だった投資家が多い」と指摘。ろうばい的な売り圧力が高まっていることで、日経平均株価の短期的な下値めどを「25日移動平均線からマイナス8%に相当する1万5700円。ボラティリティが高く、瞬間的に1万5500円を割り込む可能性もある」と予想した。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長は、「マーケットの問題にとどまらず、日本の安全保障、外交上の問題も一気に五里霧中になる」とし、英国が欧州連合(EU)からの離脱を決めた「『BRXIT』と全くレベルが違い、短期で戻るとは考えられない。国内外の年金からもヘッジ売りが入り、世界的に急転直下のリスクオフに傾く」と警戒する。

Republican Presidential Nominee Donald Trump Hosts Election Night Party

トランプ氏が勝利スピーチ

Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg

  9日の日本株は、米大統領選の開票速報でトランプ氏優勢の展開が続くと次第に売り込まれ、日経平均は前日比5.4%安の1万6251円54銭と急落して終了。下げ幅の919円は、英国の国民投票を受けた6月24日(1286円)以来、4カ月半ぶりの大きさとなった。為替市場ではリスク回避のドル売り・円買いが強まり、一時1ドル=101円20銭とおよそ1カ月ぶりの円高水準に振れた。

  日本時間9日午後5時前から勝利スピーチを行ったトランプ氏は、対立でなく協調を目指す考えを示唆。米国は、「われわれと仲良くなっていく意思のあるどんな国とも付き合っていく」と述べた。NBCニュースは、民主党のヒラリー・クリントン氏がトランプ氏に電話で敗北を認めたと報じた。大勢決定を受け、大阪取引所のナイトセッションの日経平均先物は反発、ドル・円も円高の勢いは一服したが、米国株の動向がなお不透明で、日本株の下方圧力は目先続くとみる市場関係者は多い。

  SMBC日興証券の圷正嗣株式ストラテジストは、BREXIT後よりもシクリカル業種へのポジションが大きくなっていたことで悪影響が甚大になる可能性があるほか、足元で進んでいた円安の巻き戻しもあり、当面はリスクオフが見込まれると予想。ことし2月、6月の安値時に付けたPER12倍に当たる1万5200円程度を下値めどとみる。大和証券投資戦略部の木野内栄治チーフテクニカルアナリストは、「米国株が下げ止まらない場合は、5週移動平均乖離(かいり)のマイナス12%の1万5000円どころ。PBRが1倍に近く、信頼性が高い底値」と指摘した。

米経済失速の政策は取らない

  一方、中長期目線でトランプ大統領の誕生を捉えれば、楽観的な声も聞かれる。アセットマネジメントOneの武内邦信シニアフェローは、今回のショック的な下げは3日から1週間程度で収束するとし、「トランプ氏の政策は不透明だが、基本的に内需振興で、財政投入により米景気は上向く」との見方だ。アイザワ証の三井氏は、「トランプ氏は米経済を失速させるような政策はとらない見込みで、日経平均は年末までに1万6000円台に戻す」と話している。

  ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナルのチーフエコノミスト、ルイス・アレキサンダー氏が8日付でまとめた米国スペシャルリポートによると、トランプ大統領が誕生すれば、「最初の100日間で大幅な政策変更を追求しよう」と指摘。税制では所得税・法人税の基本税率を35%から15%に引き下げる提案をしており、歳出ではインフラ、国防、退役軍人に対する歳出拡大について多くコメンとしているとした。通商では北米自由貿易協定(NAFTA)、環太平洋連携協定(TPP)、世界貿易機構(WTO)との再交渉ないし離脱を示唆している。

過去1年の日経平均株価と米恐怖指数の推移

【市場関係者の見方】
◎ニッセイアセットマネジメントの久保功株式ストラテジスト
  「トランプ氏の政策に不透明感がある。ドル安誘導で日本にとって厳しいとの見方もあり、選挙前に円安を材料に上げた分の反動が出た。同盟国との関係も見直すと述べていたことも日本にはマイナス。ただし、9日の急落で日経平均は8月の水準に戻し、初動の下げとしては十分。今後はトランプ氏がどのような政策を取るか見極めが必要。ここから売り込む動きは限定されよう」

◎アセットマネジメントOneの武内邦信シニアフェロー
  「トランプ氏の政策は基本的に内需振興で、財政投入によって米景気は上向く。欧米市場をみないと分からないが、これで相場が崩れることはなく、日経平均の下げ余地はあと500円程度。ここからの日本株は買い下がり、リスクを上げていって良い局面だ。ディフェンシブではなく、シクリカル銘柄に投資妙味がある」

◎しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹運用部長
  「クリントン氏が勝つとの市場の読みが外れ、英国のEU離脱時と同様に日本株市場が投機の場となった。トランプ氏の政策は保護主義的な傾向が強く、為替がドル安方向に振れるリスクから、短期的には輸出株が売られやすい。クリントン氏の勝利を織り込んできた反動で、流動性の高い日本株が売り込まれるのはやむを得ない。一方で食料品や医薬品、小売といった内需・ディフェンシブ株が買われよう」

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE