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トランプ氏勝利、アベノミクスに衝撃ーTPPなど政府は対応苦慮も

  • 世界の課題に協力して取り組みたい、同盟の絆を強固に-安倍首相
  • 市場変動で政府日銀が当局者会合、情報収集で河井首相補佐官派遣へ

米大統領選で共和党のトランプ氏が勝利宣言した9日、日本国内にも衝撃が走った。同盟国の駐留米軍経費の負担増を求めたり、環太平洋連携協定(TPP)に反対したりするなど日米関係に関わる発言も繰り返してきた同氏。日本政府は新大統領の出方によっては外交安全保障、経済政策などの面で対応に苦慮する可能性がある。

  安倍晋三首相はトランプ氏の勝利を受けて、官邸で記者団に対し、次期大統領と「世界のさまざまな課題に共に協力して取り組んでいきたい」と発言。日米同盟については「普遍的価値で結ばれた揺るぎない同盟。その絆をさらに強固なものにしていきたい」と語った。

  大統領選でトランプ氏の優勢が伝えられる中、為替相場は急激な円高、ドル安が進み、一時は1ドル=101円台まで円が急騰した。日経平均株価の下落幅は一時、1000円を超えた。

  みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは、新政権はロシア、中国との関係、日米同盟の在り方など「いろんな意味でこれまでの国際的な枠組みを全部見直しにかかる可能性」があるとの見方を示した。日本にとっては経済的にも政治的にも不透明感が強まり、リスクオフで円高になりやすいことから、「アベノミクスにとっては胸突き八丁というか、非常に大きな障害物が政治的に急に降ってわいたとの印象が強い」と語った。

  財務省、金融庁、日銀は為替相場で円が急騰したことを受け、当局者会合を開催。浅川雅嗣財務官は記者団に対し、為替市場の動向について「非常に投機的な動きが出ていて、こういう激しい動きになっているのだろうという気がする」と指摘した上で、「今後とも注意深く市場をウオッチしながら、今までに見られたような投機的な動きがさらに継続するようなことがあるなら、必要な措置を取りたい」と語った。

TPP

  安倍政権はTPPを成長戦略の柱として位置付けてきた。自民、公明両党は民進党などの反対を押し切って4日の衆院TPP特別委で、承認案と関連法案を可決。10日の衆院本会議での採決、今国会での成立を目指している。

  菅義偉官房長官は9日午前の記者会見で、大統領選結果にかかわらず日本政府は主導して進めるのかとの質問に「そこは当然のことです」と発言。トランプ氏の当選でもTPP推進の姿勢は崩していないが、民進党の笠浩史国対委員長代理は同日、「新大統領の出方を見極めるべきであり、慎重で徹底した審議をすべきだ。急ぐべきではない」と政府、与党の対応を批判している。

  元外交官の岡本行夫氏はトランプ氏の当選でTPPの発効は「無理でしょう」と指摘。日本は中国、韓国、インドなどとの東アジア地域包括的経済連携(RCEP)や欧州連合(EU)との間で自由貿易のネットワークを求めて行かざるを得ないとの見方を示した。

日米同盟

  トランプ氏優勢が報道された9日午後、安倍首相は官邸で河井克行首相補佐官と会談。河井氏は記者団に対し、早速米国を訪問して新政権の関係者と会談するよう指示されたことを明らかにした。河井氏は来週早々には訪米したい考えも示し、日米同盟の重要性や価値について「しっかりと安倍首相の考えを伝えるということに尽きる」と述べた。

  米国政治外交の専門家、慶応義塾大学の中山俊宏教授はブルームバーグの事前インタビューで、トランプ大統領の誕生がした場合は「巨大なショック」であり、「どうなるかということが分からない」と政権運営が見通せない状況に懸念を示した。

  その上で、中山氏は「予測不可能」であることが「米国内では既存のものとは違うというイメージでプラスに作用した」ものの、大統領として外交面で予測ができないことは諸外国との関係構築が難しく、「最大の懸念だと思う」と指摘している。

  菅官房長官は午後の記者会見で、「どなたが大統領になったとしても、日米が緊密に連携することができるような体制は作っていく」と述べた。

駐留米軍経費

  大統領選を通じてトランプ氏が言及してきたのは同盟国への駐留米軍負担増だ。防衛省によると、米軍基地で働く日本人従業員の労務費などを日本が負担している在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)は2016年度で1920億円(歳出ベース)。これに地主に払っている借地料などを合わせると、在日米軍駐留の関連経費として防衛省予算に3772億円を計上している。

  中山氏は日米同盟については、選挙戦での発言のように駐留米軍経費の負担増額などがそのまま新政権の政策になるかは不透明としながらも、「米国が不利益を被っている」との主張は「1980年代頃から一貫して言っている」と警戒感を強める。

  元国防次官補でハーバード大学教授のジョセフ・ナイ氏は10月のインタビューで、トランプ氏はさらに、米軍の日本駐留維持は米国にとって一段のコストがかかると、事実に反する内容の発言を行っている、と指摘。トランプ氏が当選した場合、どうするのかは分からないが、政策顧問が同氏に事実を伝えるのかどうか疑問との見方を示した。  

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