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米大統領選後も円高終わらず、試金石は1ドル=100円の「堅さ」

  • 先物市場でもヘッジファンドが1月から44週連続で円を買い越し
  • 1カ月物のドル・円のリスクリバーサルは円の先高警戒を示唆

数カ月にわたり外国為替市場を揺るがした米大統領選。いよいよ日本時間9日に結果が判明するが、選挙通過後も米国の保護主義などがテーマとなり、円高圧力になるとストラテジストはみている。

  円は対ドルで年初から15%上昇し、2008年の世界金融危機以来の大幅高となっている。その原動力となったのは、新興国経済への不安や英国の欧州連合(EU)離脱、米大統領選の混迷といったリスクを回避する動きだ。オプション市場では円の先高観が強まり、通貨先物市場でもヘッジファンドが1月から44週連続で円を買い越し、9月下旬には約8年ぶりの買い越し幅を記録した。

円強気派

  JPモルガン・チェース銀の佐々木融市場調査本部長は、米大統領選でクリントン氏とトランプ氏のどちらが勝っても、次期米政権では保護主義的政策が強まり、ドルの上値の重さが続くと予想。12月に米金融当局が1年ぶりとなる追加利上げに踏み切った場合も、「利上げするところまでドルと金利が上がり、その後下がるといういつものパターン」になるとみている。

メール問題

  米連邦捜査局(FBI)がクリントン氏の私用メール問題をめぐる訴追を否定したのを受け、週明け7日の円相場は急落。トランプ氏の優勢さと逆相関関係を示しているメキシコペソは主要通貨に対して全面高となった。

 

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クリントン氏

RHONA WISE/AFP/Getty Images

  先週はFBIによるクリントン氏のメール問題再調査を受け、「トランプ大統領」への警戒感から円高が再燃。3日の円相場は対ドルで1カ月ぶり高値となる1ドル=102円55銭を付け、週間ベースでは7月以来の大幅高となっていた。

  米フェデラルファンド金利先物市場は、米連邦公開市場委員会(FOMC)による12月の利上げをほぼ織り込んだ状態。ブルームバーグの先物を基にした算出によると、年内利上げの予想確率は8割に達している。ドル・円は10月末に日米金利差拡大見通しから3カ月ぶりとなる105円台まで円安が進んでいた。

If Trump Wins Election Where Does the Money Go?

トランプ氏

JEFF KOWALSKY/AFP/Getty Images

  
  1カ月物のドル・円のリスクリバーサルは7日に6月以来の水準までマイナス幅が拡大。円を買う権利を付与するオプションの需要が売る権利を付与するオプションを大きく上回っており、市場で円の先高警戒感が強まっていることがうかがえる。

クリントンにせよトランプにせよ

  米商品先物取引委員会(CFTC)の集計によると、シカゴマーカンタイル取引所(CME)国際通貨市場(IMM)の先物取引非商業部門でレバレッジドファンドの円の対ドルでの買い越しポジションは1日時点で2万8114枚。9月下旬には6万枚を超え、過去最大を記録した金融危機前の08年3月以降の高水準となった。

  HSBC証券金融法人営業本部の城田修司マクロ経済戦略部長は、投機筋のドルの買い越しが膨れ上がっている状況の中、ひとたび何か材料が出ると一気にドル売りが出やすいと指摘する。「大統領選しかりで、クリントンにせよトランプにせよどちらかというとドル安志向の候補なので、大統領選を機にドル安に進む可能性もある」と予想。「ドル・円が100円を割るリスクは年末から来年にかけて出てくる」とみている。

長期的な円ロング

  円は6月の英国のEU離脱ショックで一時、13年11月以来の水準となる99円ちょうど付近まで急騰したが、その後100円前後が堅くなり、チャート上ではドル・円に底打ち感も出ている。こうした中、日本銀行の量的緩和とマイナス金利政策で国内債券での運用が限界に来ている生保など国内機関投資家には、為替リスクをヘッジしない外債投資の機会をうかがう動きが出ており、円売り圧力となる可能性がある。

  ドイツ証券の田中泰輔チーフ為替ストラテジストは9月28日付のリポートで、海外の利回り低下とヘッジコスト上昇でヘッジ付き外債でも十分な利回りが得られなくなった中、ドル・円が100円台にとどまるとの見方が強まれば、100円台前半でオープン外債の購入を増やす生保も現われ、相場下支えの一助となる可能性があると指摘した。

  逆に100円を割り込んで円高が進めば、「既保有外債へのヘッジ率を高めるべく100円付近でのドル売り意向を強める可能性がある」と分析。ドイツ証は、ドル・円は17年にかけて90円台へ向かうリスクが潜在的に大きいと予想している。

  JPモルガンの佐々木氏も、100円近辺が底堅いと思えばオープン外債投資も多少出てくるだろうが、買ってはみたもののドル・円の上も重いということになれば、「すぐに利食って、結局ヘッジ付き外債の方が多かったという話にもなりかねない」と指摘。投資家の外債投資はドル・円を下支えする一因としては考えるが、ドル高・円安の大きなトレンドを生むことにはならないとみている。

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