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クリントン氏勝利の日本株、上昇は「短期」「小幅」-ストラテジスト

  • 政策継承で米国景気の劇的好転は期待薄、TPP反対も懸念
  • 予想覆すトランプ氏勝利なら5-10%の下落リスク

8日投票の米国大統領選で、市場関係者が望んだ民主党のクリントン氏勝利のシナリオが実現しても、日本株の上昇は短期、小幅にとどまるとストラテジストらはみている。新政権の下で米景気が劇的に良くなるとの期待に乏しく、貿易政策などで懸念も根強いためだ。日経平均株価は1万7500円の壁を越えられない。

  三井住友アセットマネジメントの石山仁チーフストラテジストは、「今回の米大統領選はどちらの候補が良いかでなく、どちらがましかの選択。クリントン氏勝利の場合でも、現在の民主党政策の延長線との認識に立てば、日本株への影響はニュートラル」とし、共和党のトランプ氏勝利のリスクを織り込んで下げた日経平均の戻りは鈍い、と予想する。

Democratic Presidential Nominee Hillary Clinton Holds New Hampshire Campaign Rally

ヒラリー・クリントン氏

Photographer: Scott Eisen/Bloomberg

  経済統計の堅調で米国の年内利上げ観測が再燃、為替が1ドル=105円台半ばまでドル高・円安が進んだこと材料に日経平均は1日、およそ半年ぶりの高値となる1万7473円まで上昇した。しかし今回、最大の不透明要因だった米大統領選を通過し、世論調査の支持率で優位に立つクリントン氏が勝利しても、この直近高値や心理的節目の1万7500円を一気に上抜けるとみるストラテジストは少数派となっている。

  上値に慎重な市場関係者が多いのは、クリントン氏の主要政策が製造業の雇用創出やインフラ整備、富裕層への課税強化といったこれまでの民主党政権の継承に過ぎず、米経済の大幅な回復期待は高まらないとの判断からだ。また、トランプ氏と同様、クリントン氏は環太平洋連携協定(TPP)に反対の姿勢で、TPPを推進する日本政府との温度差、保護主義的傾向が強まった際の日本の輸出企業に対する悪影響も懸念されている。

  さらにマネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジストは、クリントン氏は国務長官時代の私的メール問題を抱え、大統領就任後に辞任に追い込まれる可能性もゼロとは言えず、何が起こるか分からないブラックスワン的なリスクがあると指摘。「クリントン勝利で一時的に買い戻されても、日経平均はせいぜい直近高値の1万7500円まで」とみる。

  バリュエーション上も、1万7500円を超えて買い進みにくい状況だ。日経平均の予想株価収益率(PER)は、4日時点で14.56倍と年初来平均の14.16倍をやや上回る。ことしの最高は4月22日の15.99倍、最低は6月24日の12.62倍。髙木証券の勇崎聡投資情報部長は、「一段の円高リスクが弱まり、EPSの下振れがないとみれば妥当。15倍まで買われるのはきつい」としている。

  一方、共和党のトランプ氏が事前予想を覆し勝利した場合、英国の欧州連合(EU)離脱選択時の相場混乱を念頭に、シティグループ証券の飯塚尚己ストラテジストは「短期的に5-10%の株価調整のリスクがある」と警戒する。英国民投票の結果を受けた6月24日の日経平均は1286円(7.9%)急落、米S&P500種株価指数も3.6%安、ストックス欧州600指数も7%安と世界的な株安連鎖に見舞われた。

  米ABCニュースとワシントン・ポストが6日に発表した世論調査では民主党クリントン氏の支持率が48%、共和党のトランプ氏は43%で、ウォールストリート・ジャーナルとNBCニュースの調査ではクリントン氏44%、トランプ氏40%だった。オハイオやフロリダなどの激戦州では接戦が続いている。

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過去5回の米大統領選翌年の日経平均株価の推移

【市場関係者の見方】
◎三井住友アセットマネジメントの石山仁チーフストラテジスト
  「クリントン氏勝利なら、『トランプリスク』を警戒し売られた分を埋め、初動段階では買われる。ただし、クリントン氏がTPPに反対とまで言い切っていることには注意が必要。貿易に対するネガティブ・ファクターとなれば、為替が安定し、来年度に製造業の業績が回復するとのシナリオに水を差しかねない。トランプ氏が勝つと、今後の政策運営に支障を来すとの懸念からリスク回避の円高プレッシャーもかかり、日本株はしばらく低迷する」

◎東海東京調査センターの長田清英シニアグローバルストラテジスト
  「クリントン氏勝利の可能性が高く、あとは議会選挙で上院が民主党、下院は共和党が制するというのがバランスが良い。財政拡張でインフラ投資を充実させる両党の共通政策に進展が見込める。この場合、米国株高やドル高・円安が日本株にも寄与する。一方、クリントン氏はTPP反対のスタンスで、円安を背景とした輸出株上昇の持続性には疑問がある。高額な薬価の抑制や金融規制強化の思惑から米国で医薬品、銀行株が下落すれば、日本の同業も連れ安する」

◎岡三証券の阿部健児チーフストラテジスト
  「クリントン氏勝利がメーンシナリオ。現在の政策が大枠で変わらないとの安心感から、リスク回避の反動で日本市場は円安・株高で反応する。12月の米利上げの可能性が高まることで円安も期待でき、自動車など輸出株がけん引役となって日経平均は1万7000円台半ばまで上昇する場面がありそう。トランプ氏が勝てば、再びリスク回避の動きが鮮明化、円高を通じ外需セクターは売られる。半面、食料品や医薬品、情報・通信といったディフェンシブセクターは相対的にアウトパフォームしそう」

◎マネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジスト
  「クリントン氏が勝っても、メール問題を抱えているため、株価反発は一時的。逆にトランプ氏が勝利した場合、ショック安で急落するものの、公共投資や大規模減税といった景気刺激策を掲げており、来年以降に米経済が減速するとの懸念を緩和させる可能性もある。選挙対策としての過激発言も中道的スタンスに戻る可能性があり、株安後に意外と反発する場面も出てきそうだ」

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