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【コラム】米大統領選、市場の反応はこうなる-エラリアン

  • いずれの選挙結果でもボラティリティは高まる公算
  • 基本シナリオ通りでも数年以内に現在の安定試される

米国民は8日、史上最も異様な選挙戦を経て大統領選の投票日を迎える。そこで投資家が留意しておくべき点は多い。

  選挙の行方は過去10日間で接戦の様相を呈したが、大方の予想は引き続き民主党候補のクリントン氏勝利だ。一方で同時に行われる議会選は共和党が勝利し、大統領と議会のにらみ合いが長引くというのが最も一般的な予測だと言える。この場合、市場の反応は比較的穏やかで秩序立ったものになる公算が大きい。株式は全体としてレンジ内の動きにとどまり、債券や為替もそうなるだろう。

  この基本シナリオに加え、2つの「テールリスク」が存在する。

  共和党候補のトランプ氏が大統領選で勝利し、従来の通商関係を崩す政策姿勢、つまり中国やメキシコ製品に対する関税強化や、北米自由貿易協定(NAFTA)撤回をすぐさま実行に移す意思をあらためて表明すれば、株式市場は急落するだろう。同氏が信頼できる代替案の提示もなくドッド・フランク法の即時停止など、金融システムの将来像に不透明感を生み出す場合、市場の下げはいっそう大きくなる。

  この第1のテールリスクシナリオでは、株式市場の混乱が投資適格級とハイイールドの両方の社債にも広がる恐れがある。国債市場の反応はより微妙になる可能性が高い。普通国債は低成長見通しとインフレ上昇期待の間で綱引きが続く。インフレ連動国債(TIPS)などインフレに敏感な証券は、財政政策主導によるインフレ加速の可能性が高まることから、市場がこれらの証券の見通しを上方修正しそうで、不透明性は後退する。

  もう1つのテールリスク、クリントン氏だけでなく議会選でも民主党が勝利して同党が議会の過半数を握る場合も、株式市場は売りに見舞われる。特定の業界(製薬や従来型エネルギー)の動きは、いっそう大きくなるだろう。財政出動の可能性が上昇し、債券市場も売り圧力にさらされる。

  この2つのテールリスクシナリオで、為替には異なった影響が出る。トランプ氏勝利で保護主義的な政策が打ち出される場合、ドル高が実現することになりそうだ。通商戦争になれば、当初は米国とその主要貿易パートナーの両方が打撃を受けるだろうが、米国経済はあまり開かれていないため失うものが比較的少ない。対照的に、民主党大勝のシナリオではドル安に動く。

  クリントン大統領誕生、議会は共和党支配が続くという基本シナリオの下では、低いが安定した経済成長、金融市場の低いボラティリティーという2つの特徴が持続すると見込まれている。これは市場の一致した見方ではあるが、向こう数年で試される公算が大きいことを個人的に指摘しておきたい。

  まず第1に、低成長の長期化はそれ自体が混乱の要因を助長する。もう1つは金融市場のボラティリティーを抑えている中央銀行の政策効果の持続性が問われていることだ。一部の中銀はこの能力が低下したことを露呈した(円相場における日銀の影響力低下がいい例だ)。米連邦準備制度など別の中銀は以前のような政策の実施に消極的だ。さらに欧州中央銀行(ECB)や中国人民銀行を含む多くの中銀は、意図しない結果や副作用に対する脅威が大きくなっているため多くを語ろうとしていない。中央銀行の政策効果については懐疑的になる必要があろう。

  (モハメド・エラリアン氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストです。このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピー編集部の意見を反映するものではありません)
  

原題:How Markets Will React to U.S. Elections: Mohamed A. El-Erian(抜粋)

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