コンテンツにスキップする

渡辺元財務官:米大統領選の円への影響一時的-当局対応は不要の公算

  • 円相場は1ドル=105円より少し安くてもよい-米利上げ見通せれば
  • 安全通貨求めて欧州から円にも資金が流入-足元の相場

元財務官の渡辺博史国際通貨研究所理事長は、米大統領選で共和党のトランプ候補が勝利したとしても、円相場へのインパクトは一時的で、政府・日本銀行による対応策の必要はないだろうとの見方を示した。

  渡辺氏は4日のインタビューで、トランプ氏が勝てば先行き不透明感から「リスクオフになる」と述べ、その場合日本でも株価は下がり、為替は1ドル=100円に近くなると予想。一方で、先行きの冷静な分析が進めば「じわじわと今のラインに戻ってくる」とし、「特段、官邸も日銀も慌てて何か対応する必要があるとはならない」と述べた。クリントン氏が勝利した場合は市場に大きな動きな変化はないとみる。

Japan Bank For International Cooperation Governor Hiroshi Watanabe Interview

渡辺博史氏

Photographer: Akio Kon/Bloomberg *** Local Caption *** Hiroshi Watanabe

  渡辺氏は1972年に大蔵省(現財務省)に入り、国際局長、財務官などを歴任。退官後は一橋大大学院教授などを経て国際協力銀行総裁を務め、10月1日付で現職に就任した。

105円

  足元の為替相場は英国の欧州連合(EU)離脱問題や新興国の景気減速を背景に対ドルで年初来約15%の円高になり、1ドル=100円台前半で推移している。渡辺氏は「今の100円台は日本の産業全体としてそんなに不満を持っているところはないという気がする」とみるが、年明けからの米国の利上げペースによっては、「105円より少し安いベースになってよいのではないか」と述べた。

  円相場が100円台前半にとどまっている背景については、6月の英国民投票後、欧州から引いた資金を「米国だけでは受け止めかねている」ことから、その3分の1程度が安全通貨の円に流入していると分析。このため、一時105円まで下げても「すぐ戻す」という。

介入機能失われず

  市場では米国のけん制があって日本は介入に踏み切れないとの見方が根強い。しかし渡辺氏は「為替介入の手段を日本が放棄したわけではない」と述べると同時に、米国も「介入の権利をすべて放棄しているわけではない。安易にやるのはやめてくれという話がある」と解説した。

  日本も「水準維持の介入はしない」が、仮にトランプ氏が大統領選で勝って急激な変動が起きた場合には「自衛する権利はある」と述べ、「スムージングオペレーションは常に起こり得るだろう」と指摘した。英国民投票後に一時1ドル=100円台を突破した際に介入しなかったことについては「しばらくしたら戻るという時に手を付けることはない」とした上で、「介入の機能が失われたわけでもないし、米国から止められているわけでもない」という。

  米財務省が10月14日公表した今年の外国為替報告書は中国、日本、ドイツ、韓国、台湾、スイスの6カ国・地域を「監視リスト」に指定。日本については為替介入は約5年間していないものの、当局者が「円高抑制を狙って」何度も公に発言したと指摘。ドル・円相場は円滑に機能しているとも付け加えている。

外為報告書は議会対策

  渡辺氏はリストの最大の関心事は為替安によって膨大な利益を得ているドイツであり、その場合でもリストに「ドイツだけ挙げるわけにはいかない」ことから、「人民元と併せて韓国ウォンや円が書いてあるだけだ」と指摘。貿易赤字問題を恒常的に抱える米財務省にとって為替へのけん制は「議会対策だ」と述べた。

  米国が12月に利上げする可能性については、米失業率は下がっているが、雇用の実態をみると中長期の契約に基づいた賃金上昇が可能にはなっていないと分析。イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長は「全然得心していない」とし、「地合いとしては良くないので、利上げはしない確率の方が高いと思っている」と予想した。

  日銀の物価安定目標2%達成については、原油価格を除いたモメンタムが弱いことから「最初から無理だと思っている。白川方明前総裁が言っていた1%の方が近い。インフレターゲットを採用した瞬間に、他の国が2%なのに日本だけ1というのは宣言としてあり得ないという意味で2になっただけだ」と述べた。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE