日本銀行は1日の金融政策決定会合で、長短金利操作付き量的・質的緩和の枠組みによる金融調節方針の維持を決定した。従来2017年度中としていた2%の物価目標の達成時期は「18年度ごろ」に先送りした。18年4月までの黒田東彦総裁の任期中の達成は難しい情勢となった。

  会合後公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)によると、17年度の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の上昇率見通し(政策委員の中央値)は1.5%と、前回7月の見通し1.7%から下方修正、18年度の見通しも1.9%から1.7%に引き下げた。

会見する黒田総裁(1日)
会見する黒田総裁(1日)
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  同リポートは「経済・物価ともに下振れリスクの方が大きい」と指摘。物価面では「2%の物価目標に向けたモメンタムは維持されているとみられるものの、前回見通しに比べると幾分弱まっており、今後、注意深く点検していく必要がある」としている。

  黒田総裁は記者会見で、物価目標達成時期を先送りしたにもかかわらず金融政策を据え置いたことについて、過去にも同様の判断をしたなどとして、両者の直接の関連性を否定。物価見通しの下方修正の理由については、予想インフレ率の弱含みが続いているためなどと説明した。

  黒田総裁任期中の物価目標達成が難しい見通しになったことについては、2年で達成できなかったのは「残念」と述べながらも、「成長率あるいは物価上昇が先行きどうなるかということと、私自身の任期の間には特別な関係はない」と述べた。求められれば再任するかとの質問にも「任命は国会両院の同意を得て内閣が決める」としてコメントを控えた。

  金融調節方針は、10年物国債金利を「0%程度」、日銀当座預金の一部に適用する政策金利を「マイナス0.1%」といずれも据え置いたほか、「おおむね現状程度(約80兆円)」をめどとしている長期国債の買い入れペース(保有残高の年間増加額)も維持。指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)の買い入れ方針も据え置いた。前会合に続き、木内登英、佐藤健裕両審議委員がこれらの方針に反対した。

  黒田総裁は、2%の物価安定目標の早期実現は「政府との共同声明でも明らかにしたコミットメント」であり、「あらゆる手段を動員して実現しなければならない」点は「まったく変わっていない」と言明、「必要なことはなんでもやる」とあらためて述べた。

  政策委員の見通しの中央値(単位%、カッコ内は前回7月の見通し)

 16年度 17年度 18年度
CPI(除生鮮) -0.1(0.1) 1.5(1.7) 1.7(1.9)
GDP(実質)  1.0(1.0) 1.3(1.3) 0.9(0.9)

  ブルームバーグがエコノミスト43人を対象に10月21-25日に実施した調査では、41人が現状維持を予想。4月までに追加緩和があると予想したのは18人(42%)と半数以下にとどまる一方で、追加緩和なしは15人(35%)と前回9月会合前の調査(14%)から大きく増えていた。

  SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは日銀決定後、17年度に1.5%上昇に修正した物価見通しは「まだかなり強気」で実現可能性は低いと指摘、18年度中に2%に達することも「かなり難しい」とみている。

80兆円めどの行方

  シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストは20日付のリポートで、日銀は政策の枠組みを2%物価目標達成に向けて「長期戦に沿った方向」に修正したと指摘。今や「物価見通しを下方修正したという理由だけで金融緩和を行う可能性は大きく後退したとみられる」として、これまで来年1月としていたマイナス金利深掘りの予想時期を来年7月に修正した。

  ブルームバーグ調査では、今会合に限らず追加緩和を予想した人が挙げた手段(複数回答)は、短期金利のマイナス幅拡大(27人)が最多で、長期金利の引き下げ(4人)、J-REIT買い入れ増(2人)、ETF買い入れ増(1人)と続き、マネタリーベース拡大と長期国債買い入れ増はいずれも皆無だった。

  9月の全国コアCPIは前年比0.5%低下し7カ月連続のマイナスとなった。日銀は独自に公表するエネルギーと生鮮食品を除いたいわゆる日銀版コアCPIを、物価の基調をみる上で重視しているが、9月の同指数は前年比0.2%上昇と、前月(0.4%上昇)から一段と鈍化した(下記チャート)。

  金融市場では、日銀が約80兆円をめどとしている長期国債の買い入れをいつ減額するのかも注目点。ブルームバーグ調査では、来年1月会合までに減額するとの予想は7人と少数派にとどまった。日銀は「めど」として示している長期国債の買い入れ額について、近い将来、金融調節方針(ディレクティブ)から削除することを検討していることが複数の関係者への取材で分かっている。

  明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミストはブルームバーグ調査で、「80兆円はもはや明確な目標ではなく、あくまでめどなので、目標引き下げを明確に宣言せずに徐々に減額を進める可能性が高いのではないか」としている。

  円相場は会合結果の発表前は1ドル=104円80銭近辺で取引されていたが、欧州時間に入ると105円台に下落している。

木内氏は引き続きテーパリング提案

  木内審議委員は決定会合で、長期国債保有残高が年間約45兆円に相当するペースで増加するよう買い入れを行うなどの議案を引き続き提出したが、1対8で否決された。

  決定会合の「主な意見」は11月10日、「議事要旨」は12月26日に公表する。決定会合や金融経済月報などの予定は日銀がウェブサイトで公表している。

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