1996年9月のことだ。米連邦準備制度理事会(FRB)理事に就任して2年余りのジャネット・イエレン氏は、同僚の理事であるローレンス・マイヤー氏と共にグリーンスパン議長のオフィスにいた。利上げの必要性を訴えるためだった。5%近辺にまで改善された失業率がさらに大幅低下すれば、インフレ高進を招くと懸念したからだ。

  グリーンスパン氏は理事2人の懸念に耳を傾けたが、翌年まで政策金利を据え置いた。失業率は結局、2000年に3.8%と30年ぶりの低水準まで下げたが、インフレ率が実際に大きく上昇することはなかった。

  そして現在、自身の同僚の一部が利上げを求める中で、イエレン議長は当時のグリーンスパン氏の役回りを演じている。20年前と同じように失業率は5%前後で推移し、エコノミストの多くが完全雇用状態に相当すると見なす水準に接近している。

イエレンFRB議長
イエレンFRB議長
Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg

  グリーンスパン氏の場合と同様、イエレン議長も主要政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標引き上げを求める圧力に抵抗し、さらなる景気拡大の余地を残す方を選んでいる。11月1、2日の連邦公開市場委員会(FOMC)は7会合連続で金利据え置きを決めると広く予想されている。

  イエレン氏の元同僚で、94-96年にFRB副議長を務めたアラン・ブラインダー米プリンストン大学教授は当時のイエレン氏について、「高圧経済(high-pressure economy)が何を成し得るかを目の当たりにした」と語った。

失業率はどこまで下げられるか

  とはいえ、イエレン議長が失業率の4%割れを容認する用意があるというわけではない。これが示唆するのは、賃金や特にインフレ率があまりにも急速に加速しつつある兆候がないか警戒しつつ、どこまで失業率の低下が可能かを探るつもりだということだ。

  現在はコンサルタント会社LHマイヤー(ワシントン)を率いるマイヤー氏は「調べ、そしていろいろ考えてみるという姿勢だ。唯一の危険は、事態があまりにもゆっくりと進展し、自分の行動が賢明だったかどうか分かるころには、手遅れになることだ」と述べた。

  マイヤー氏は、来週の米大統領選後に開かれる12月のFOMCで米金融当局が利上げを決定すると予想。それでもFF金利の誘導目標は引き続き低水準にとどまるため、金融政策による景気下支えは続くと見込んでいる。

原題:Yellen Imitates Greenspan in Reversal of Mid-1990s Rookie Role(抜粋)

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