ホンダ、AI技術開発を東京・赤坂に集約へ、商品への反映を加速

  • 主要自動車会社がシリコンバレーを拠点にする中、国内の連携重視
  • 四輪、二輪車、汎用以外の分野で事業確立も目指す-松本専務

Yoshiyuki Matsumoto Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

自動運転技術の開発をめぐり、世界の自動車メーカーが米シリコンバレーに開発拠点を設ける中、ホンダは来年4月をめどに都内・赤坂に設置した研究所に人口知能(AI)技術開発を集約することを検討している。複数地域の研究開発を再編・統合することで、商品への反映を進める。

  情報通信産業と人材が集積するカリフォルニア州のシリコンバレーではなく赤坂でAIを統括する理由について、ホンダでAI技術を統括する松本宜之専務は「研究のための研究でなく、ハードウエアと絡む必要がある」と述べ、国内研究所との連携で成果を製品に反映させていく意向を明らかにした。

  ホンダは2003年、知能化技術などを研究するホンダ・リサーチ・インスティチュート(HRI)を日本、米国、欧州にそれぞれ設立。シリコンバレーでは自動運転に関わる研究もしている。11年には別組織としてシリコンバレー・ラボを設けて外部企業や研究者との連携強化を図っているほか、14年にはクルマ用アプリケーション開発スタジオのデべロッパーズスタジオを設置した。松本氏は、こうしたAI関連技術を赤坂に集約した上で、既存の研究所ではさらに将来を見据えた技術研究に取り組む体制を検討していると述べた。

  コンサルティング会社ローランド・ベルガー日本法人の長島聡社長は、開発スピードを考えるとシリコンバレーで情報ネットワークを活用していくことは必要としながらも、日本にも分野によっては優れた知識や技能があり、今後は強みのあるAI企業などが吸引力となって国内にも拠点ができる可能性はあると指摘した。

  国内では東京大学出身者がつくったロボットベンチャーのシャフトが米国のロボット競技会で注目され、後に米グーグルに買収された。また、自動運転技術開発用プラットホームを開発し、無人タクシー実現に取り組むZMP、AIの学習による制御で自動走行実現を目指すプリファード・ネットワークスなどは「シリコンバレーに匹敵する力を持つ」と長島氏は評価する。

  シリコンバレーには独メルセデスベンツが1995年に先端技術の研究開発施設を開設して以来、独フォルクスワーゲン(VW)、BMWなど大手自動車メーカーが拠点を構えている。トヨタ自動車は今年1月に新会社を設立し、5年間で約10億ドル(当時のレートで約1200億円)を投じると発表していた。同地域にはグーグルやアップルなど有力な情報技術(IT)先端企業が集まっているほか、スタンフォード大学などで研究体制も整っている。

  AI研究開発の赤坂への統合は正式決定したものではなく、来年度に向けてさらに検討を重ねている段階だと松本氏は述べた。

開発競争

  自動運転技術に関わる開発競争は激化しており、人材と技術の争奪戦が続いている。トヨタはシリコンバレーの拠点に、米国防省国防高等研究計画局(DARPA)で災害救助用ロボット競技大会を指揮していたギル・プラット氏を採用。プラット氏のもとでトップクラスの人材を集めて開発チームを構築した。無人運転技術を目指すグーグルは、2足歩行ロボットの開発で実績のあるボストン・ダイナミクスなど複数社を買収している。

  調査会社IHSマークイットのエーギル・ジュリュセン氏は、トヨタのようにシリコンバレーの人材を取り込み、スタンフォード大学やマサチューセッツ工科大学と共同研究をすることは正しい戦略とした上で、IT企業やベンチャーがひしめく同地域で自動車メーカーが専門性を持つ人材を確保するのは難しく、コストも高くつくと述べた。後れをとった企業は、技術を持つベンチャーを買収するか、グーグルから技術ライセンスを受けるのが最善としている。

  これに対し、松本氏は国内にも優秀な学生や研究者がいて、商品化のためのすり合わせ技術に理解がある人材が「あちこちから出てくる」と述べた。特にプロジェクトベースでの商品開発には意義を感じて参加する若手も多く、ハードウエアを持っている日本の研究所と相乗効果で製品や商品につなげていく計画だ。

  これまで研究拠点で培った画像認識や音声認識技術は、既に「かなりのレベルになっていると自負している」と松本氏は捉えており、ホンダの事業の柱である二輪、四輪車、汎用製品以外の分野でも事業化を目指すとしている。欧州市場で発売したクロスオーバーSUV「CRーV」には、研究所で開発した車線逸脱防止機能を搭載している。

  赤坂の研究所では、優秀な人材確保のためプロジェクトの掛け持ちを許容するなど柔軟な働き方を採用し、ホンダの給与体系とは違った待遇を設けるなど「開かれた研究所の理想形」を目指したいと松本氏は述べた。シリコンバレーの優秀な人材には、テクニカルアドバイザーとして数カ月に数回のペースで意見交換するなど、知見やネットワークの活用も平行して検討する。

「真面目さ」は通用しない

  松本氏は「ホンダが決定的に他社と違う点」として、1986年に開発を始めた2足歩行ロボットで培った制御技術があると述べた。11年に誕生した新型「アシモ」は、人の歩く方向を予測してぶつらないよう進んだり、水筒から紙コップに水をそそぐなど5本指をそれぞれ制御した動作が可能となった。

  一方、課題は新分野での経営判断を含めたスピードだ。IT業界では市場拡大のために知財を無料で開放したり、逆に知財を独占し、高額で他社に供与するオープンアンドクローズ戦略が有利な事業を築く経営戦略とされる。松本氏は「いいものをつくればいいでしょうという真面目さ」が自動車会社の良いところでもあったが、そうした考え方を変えていく節目に来ていると述べた。

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