海外年金マネー日本株を再評価か、安倍長期政権に視線-BNP

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  • 9、10月にロングオンリー投資家の訪問受ける
  • 日銀の総括的検証で風向きに変化、マイナス金利政策で配慮

日本株を動かす海外投資家の主役が、ヘッジファンドなど短期資金から年金など中長期資金に交代する可能性が出てきた。アベノミクスのスタートから間もなく4年、政策面などでサプライズが起きにくくなった半面、主要国における相対的な政治安定への評価が背景にある、とBNPパリバ証券ではみている。

  岡澤恭弥グローバルマーケット統括本部長はブルームバーグのインタビューで、9ー10月は例年になく、日本を訪問する海外投資家の対応に追われたことを明らかにし、「年金などロングオンリーの中長期資金を運用する投資家の訪問が多い」と述べた。一方、アベノミクスは「もはやノーイベントということを見越し、グローバルマクロ戦略を取る投資家の訪問はほとんどない。アベノミクスの華やかな部分が薄れ、簡単に利益を上げる方法がなくなってきたことがある」と言う。

金融市場関係者を前に話す安倍首相

Photographer: Chris Goodney/Bloomberg *** Local Caption *** Shinzo Abe

  日本株の売買代金で7割を占める海外勢は、安倍晋三首相の政権復帰を機にデフレ脱却、構造改革の進展を期待し、2013年に現物株を15兆円、14年に8527億円買い越した。その後、中国経済の減速や米国の利上げなどで世界経済の不透明感が広がり、為替の円高進行で日本の企業業績懸念も浮上した昨年後半以降は売り姿勢に転換。ことし1ー9月の累計売越額6.2兆円は、同期間としては1987年を抜き最大だった。10月に入ると、第1週に2805億円、第2週に1132億円の買い越しと動きに変化が生じている。

  ブルームバーグ・データによると、27日時点のTOPIXの年初来騰落率はマイナス11%。世界の主要94指数の中ではイタリアやサウジアラビア、中国上海などに続きワースト12位だ。

  海外の中長期投資家が日本に目を向け始めた理由として、岡澤氏は安定した日本の政治を挙げた。23日に行われた衆院東京10区と福岡6区の補欠選挙は、いずれも与党側候補が野党統一候補に勝利。同氏は、「補選勝利を受け1月に解散総選挙に踏み切るモチベーションは高い」とし、総選挙なら「自民党の勝利は確実。さらに2021年まで安倍政権が続く可能性が見えてきたことはかなり強烈で大切なメッセージ」と話す。自民党は26日の政治制度改革実行本部の総会で、総裁任期をこれまでの連続2期6年から3期9年に延長することを決めた。

  11月に迫った米国の大統領選挙は民主、共和党両候補とも決定打を欠く混戦模様で、難民問題を抱えるドイツではメルケル首相の支持率が低迷。岡澤氏は、相対的に安倍首相が強いリーダーとして浮かび上がるため、「アベノミクスは最高ではないが、政権の長期化が政策実行力を高める」とみている。財政政策や円高対応、コーポレートガバナンス(企業統治)の推進に加え、構造改革の歩みも「ゆっくりだが、後退はせず、マネーの置き場として日本株のバリュエーションが高いわけでもない」とし、消去法的な観点でも日本株には選ばれる理由があるという。

日本株売りの最大要因はマイナス金利

  海外勢によることし前半の猛烈な売りについて、岡澤氏は「日本銀行による金融政策の不透明感が日本株をアンダーウエートにする理由」と分析した。政官財が一体となり、アベノミクスを応援する流れが続いてきたが、日銀による「1月のマイナス金利導入から『アンチアベノミクス』的な肌色に変わった。為替がさほど円安に進まず、一枚岩がほころび始めた」とみる。

  この動きにストップがかかったのが、日銀が9月に行った金融政策の総括的検証だ。マイナス金利による貸出金利の低下は金融機関の収益を圧迫している、などと配慮を見せ、「これまでの政策を否定することなく方向転換を図った。マイナス金利政策に副作用があることを認め、政策的には有効でも、積極的には使わない考えをにじませた」と同氏は評価する。

  岡澤氏は、日本株のストラテジーを聞いてくる海外投資家に対し、政治の安定や経済政策の対応力などを挙げつつ、「日銀がもはや世の中を驚かせることはしないとの前提に立てば、これがアンダーウエートの市場か」と逆に質問している。海外勢にとって理解しにくい面はあるものの、論点を整理していくと、悪くもないと返答されると言う。

  グローバル投資家がベンチマークとするMSCIワールド指数の地域別比率は、日本が8%。米国は54%、英国を除くユーロが15%、エマージング10%、英国7%などとなっている。北欧を代表する年金基金の1つで、ノルウェー中央銀行・投資運用部門(NBIM)が公表しているリポートによると、6月末時点の株式の市場別比率は米国36.8%、英国10.4%、日本8.9%、スイス5.5%、エマージング9.5%など。日本は15年末に9.3%、14年末は7.4%、13年末は6.7%だった。

  28日の東京株式相場は米国の年内利上げ観測を材料に7月以来、1ドル=105円台に乗せた為替のドル高・円安推移、決算内容を評価する動きから輸出や素材、金融株中心に買われ、東証1部全体の値動きを示すTOPIXは反発、一時4月28日以来の日中高値を更新した。

(文末に28日の日本株市場の動きを追記.)
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