【コラム】今回のドル高、FOMCにとって年初と異なる-エラリアン

  • ドル高でも株式市場に影響せず、かえって利上げの可能性増す
  • 市場が織り込む12月の利上げ確率は既に75%、ドル高は障害にならず

ドルは9カ月前の高値水準まで戻した。このドル上昇を主導した材料は、年初にドルを急上昇させた原因に似ている。だが金融市場に対する影響という点では、今回は前回とかなり異なる。これが持続すれば、米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策に対する影響もまた変わってくるだろう。

  トレーダーは中央銀行間の政策乖離(かいり)が近づいているとの確信から、ドルを押し上げた。つまりFOMCが金融政策を引き締める一方で、欧州中央銀行(ECB)や日本銀行、イングランド銀行、中国人民銀行などシステム的に重要な世界の他の中央銀行が緩和姿勢を維持または強化することへの自信だ。これが米国株に及ぼす影響はどうか。前回とは対照的に、米国株は極めて落ち着いている。

  今年1-3月に目の当たりにした売り浴びせに代わり、米国株の動きは今のところ穏やかだ。企業がバランスシート上に抱えていた現金であれ、新たな借入金であれ、合併・買収(M&A)資金の市場への流入を投資家は歓迎しており、相次ぐM&Aが相場を後押ししている。結果としてドル高にあっても、金融市場は極めて緩和的な状態が続いている。

  株式投資家はまた、FOMCによる今回の利上げサイクルが従来の標準的な動きから大きく逸脱するとの見通しに安心感を覚えている。この認識は強まりつつあり、そして正しい。金利が一定間隔でほぼ直線的に上昇していくのではなく、進んだり止まったり、という性質になるだろう。さらに恐らくもっと重要なのは、エコノミストらが「中立金利」と呼ぶ利上げサイクルの終点が近年の歴史的な平均と比べて大幅に低くなるだろうということだ。

  中央銀行の例外的な支援に慣れきった市場を動揺させることなく、FOMCが今回の緩やかで慎重な金融引き締めをやり通すことができるのか、まだ答えは出ていない。ただ明らかなのは、最近のドル高それ自体が年内の利上げの障害にはなりそうにない。これは来週のFOMC会合より、12月の会合で実現する公算が大きい。

  市場はこれを察知し、市場が見込む12月の利上げ確率は既に75%前後にまで上昇した。ここしばらく外国の経済・金融情勢が落ち着いていることも、金融政策の正常化に向け小幅ながら次の一歩を踏み出したい米金融当局を後押しする。また相対的に見れば、この金融政策正常化は世界経済の足場固めに必要な「世界的なリバランス」に貢献する。

  とは言え、最終的に世界経済の繁栄と金融市場の本物の安定を確保するのは、相対的なトレンドではなく絶対的なファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)だ。そして十分にしっかりとした基盤はいまだに成立していない。

  (モハメド・エラリアン氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストです。このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピー編集部の意見を反映するものではありません)

原題:Why This Dollar Surge Is Different for Fed: Mohamed A. El-Erian(抜粋)

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