【インサイト】EU離脱という「イチジクの葉」で銀行が覆い隠す真実

フランクフルトにまだ異動していなければ、クリスマスおめでとう。

  英国銀行協会(BBA)のアンソニー・ブラウン最高経営責任者(CEO)の最近の警告を聞く限り、BBAからの今年のクリスマスカードには、そんなメッセージが添えられることになりそうだ。

  ブラウンCEOは23日付の英日曜紙オブザーバーへの寄稿で、英国民投票で欧州連合(EU)離脱が選択されたことを受けて、バンカーの手がリロケート(移転)ボタンの上で「震えている」と指摘し、「多くの比較的規模の小さい銀行」はクリスマス前の移転開始を計画し、より規模の大きい銀行は来年1-3月(第1四半期)に移転を始める可能性が高いと主張した。

  この種の大げさな説明は、かなり割り引いて考える必要がある。こうしたことはこれまでもあったし、大量のスタッフや業務の性急な海外への移転がマイナス面を伴うことも明らかだ。富裕層向け資産運用担当者のアルバン・ドクレルモントネール氏は、荷造り用の箱の用意はできていると仏紙ルモンドに述べたが、来年になるまで、あるいは最終決定向けた正式なEU離脱交渉が開始されるまでは少なくとも引っ越しを急ぐつもりはない。

  しかし、英国のEU離脱という頭の痛い問題を脇に置いても、政治的理由でなく採算面の理由からロンドンのバンカーの数が今後減ることをわれわれは受け入れるべきだろう。低金利や資本規制強化の影響で銀行ビジネスの多くの部分が利益を生んでおらず、そのために金融機関は人員を減らしている。

  私の同僚であるブルームバーグ・ニュースのジャック・シダース記者が執筆した記事によれば、米銀シティグループはスタッフの数を減らした後、ロンドンの高層ビルのオフィススペース部分を英歳入関税局に転貸することを検討している。

  EU離脱の賛否を問う国民投票の実施に先立つ3月時点で、英銀バークレイズがまさに同じことを検討していると伝えられていた。クレディ・スイス・グループは、「ハード(強硬)」ないし「ソフト」なEU離脱という用語がつくられるよりもかなり前の段階で、ロンドンからダブリンに一部業務と人員を移転する計画を明らかにしていた。

理にかなう経営判断

  これらの動きは、銀行業界の構造変化に伴うものだ。英国のEU離脱が、既に進められている必要なコスト削減といった事柄を覆い隠す都合の良い「イチジクの葉」であることがだんだんと分かってきた。2019年、あるいは22年の欧州単一市場の姿よりも今の銀行の収益性の方が、経営陣にとって切実な問題だ。

  投資銀行の株主資本利益率(ROE)は10年の約12%から15年には9%弱に低下し、上位米銀の欧州部門の業績も必ずしも芳しくない。このため英国スタッフの削減や移転をコスト削減の手段として用いることは、全く理にかなう経営判断といえる。英国のEU離脱をめぐり非の打ちどころのない合意ではなく、より現実的な目標を銀行が提示し始めた理由もこれで説明がつく。

  (このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピーの意見を反映するものではありません)

原題:All London Bankers Want for Christmas Is Some Tax Cuts: Gadfly

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