中国人初の大リーガー誕生も-MLBが野球途上国に描く夢、戦略着々

1980年代の米国の野球映画「ナチュラル」の中国版があったなら、許桂源のような選手がそこに登場することだろう。

  広東省普寧市出身の許(20)は細身だが鋼のような体をしている。彼は今、中国本土生まれとして初の米大リーグ(MLB)選手になることを夢見て努力を続けている。その夢がかなえば、中国で広くファンの関心を呼び起こす画期的瞬間が訪れる可能性がある。

  許は中国沿岸部に3カ所あるMLBデベロップメント・センターの一つで野球を学んだ。現在は米大リーグ、ボルティモア・オリオールズ傘下のマイナーチームに所属し、最初のシーズンを終えたところだ。

MLBが中国で開いたサマートレーニングキャンプ(2010年8月)

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  野球初心者だった許が大リーガーを目指す選手にまで成長した陰には、MLBが多額の資金を投じて中国に野球場や野球アカデミーをつくっていることがある。中国では文化大革命当時、退廃的過ぎるという理由で野球が禁止されていた。中国政府は現在、野球を10年以内に500億元(約7700億円)産業に育てようとしている。

  「自分のパフォーマンスが悪ければ、それは自分自身の問題で、自分だけに影響する。でも、良い選手になれば、その効果は非常に大きなものになる可能性がある」と許は話す。

  中国の発表資料によると、人口約14億人の同国で野球人口は3000人ほどにすぎず、球場は50カ所しかない。プロの中国野球リーグは北京と上海、天津、広州、無錫、成都にある各球団で構成されている。

  MLB中国部門ディレクターのレオン・シエ氏は「中国人のスーパースターが不可欠だ。スポーツが根付くには自国のスターがいなければ駄目だ。市場はスーパースターがいるときに盛り上がる」と述べた。

  中国で野球が復活したのは1970年代半ば。MLBはそれ以降、中国での野球普及に地道に取り組んできた。国際トーナメントやオリンピックのチームにコーチを派遣し、ロサンゼルス・ドジャースは86年に天津に球場を建設。2008年にはエキシビションゲームの中国シリーズを開催した。シエ氏によると、中国はMLBにとり米国以外で最大の投資先となっている。

  許は中国のMLBアカデミー出身で大リーグ傘下チームと契約した初の選手だ。8歳の時に体育の教師から野球を習ったが、当時は土を詰めた袋を練習に使っており、本物の野球のボールに触れたのは11歳だった。

  彼のトレーニングは映画「ナチュラル」に登場するスラッガー、ロイ・ホッブスを想起させる。ホッブスのバットは、落雷で裂けた木から作られていた。オリオールズはこの左利きの外野手兼一塁手と昨年7月に契約。ホームランを打てる長距離砲としての潜在能力を買っている。

原題:MLB’s Field of Dreams in China Needs Lineup of Local Superstars(抜粋)

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