圧倒的多数が現状維持を予想、今後も追加緩和なし急増-日銀サーベイ

  • 緩和手段は短期金利のマイナス幅拡大が最多、国債買い入れ増は皆無
  • 長期国債買い入れの減額「すでに始まっている」との見方も

日本銀行が来週開く金融政策決定会合は、エコノミストの圧倒的多数が現状維持を予想している。前回9月会合で、マネーの量によって期待に働き掛ける従来の政策から転換したことを受けて、今後も追加緩和はないとの見方が急増している。

  エコノミスト43人を対象に21-25日に実施した調査で、10月31、11月1両日の決定会合での追加緩和の予想は2人(5%)、12月も2人(5%)、来年1月が6人(14%)で、4月までに追加緩和があるとみているのは18人(42%)と半数以下にとどまった。追加緩和なしは15人(35%)と前回9月会合前の調査(14%)から増加した。黒田東彦総裁は18年4月で任期を迎える。

黒田日銀総裁

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  今会合に限らず緩和を予想した人が挙げた手段(複数回答)は、短期金利のマイナス幅拡大(27人)が最多で、長期金利の引き下げ(4人)、不動産投資信託(J-REIT)買い入れ増(2人)、指数連動型上場投資信託(ETF)買い入れ増(1人)と続き、マネタリーベース拡大と長期国債買い入れ増はいずれも皆無だった。

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  日銀は9月21日の金融政策決定会合で、マネタリーベースを操作目標としてきた異次元緩和から、長期金利と短期金利を操作目標とする枠組みに変更。短期金利のマイナス0.1%を維持する一方で、10年物国債利回りは0%程度とすることを決定した。また、消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%の物価目標を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続することも表明した。

  日銀は今会合で経済・物価情勢の展望(展望リポート)を策定し、新たな消費者物価指数(生鮮食品を除くコア)前年比の見通しを示す。2017年度の見通し(政策委員の中央値で1.7%上昇)の下方修正は必至で、黒田総裁も21日の衆院財務金融委員会で、同年度中の2%達成見通しの「修正はあり得る」と述べている。

急激な円高ないと追加緩和なし

  BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「物価見通しの下方修正は不可避だが、年内に日銀が追加緩和に踏み切る可能性は低い」と指摘。マイナス金利の深掘り、長期金利ターゲットの引き下げはともに「金融機関からの反発は強く、実施したところで大きなプラス効果が得られるとは思えない」という。

  さらに、ETFなどリスク資産の買い入れも「市場の価格形成やコーポレート・ガバナンスをゆがめるなど副作用を考慮すれば、これ以上の増額は簡単には踏み切れない」と指摘。2%目標の実現が遅れるとしても、「景気後退リスクが大きく高まる、あるいは急激な円高が進行するといった事態にならない限り、追加緩和には動かないはずだ」とみる。

  黒田総裁は21日の国会答弁で、前回会合から経済、物価、金融情勢は変わっておらず、長短金利の操作目標について「すぐに変更があると考えることは難しい」と述べ、今会合で金融政策運営を変更する可能性は小さいとの見方を示した。

表舞台から消えることに成功した

  みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケットエコノミストは「枠組み変更を経て、日銀はうまく表舞台から消えることに成功した」と指摘する。その上で、「せっかく自己実現的な緩和催促相場から脱却できつつあるのに、自分からまたサプライズ戦略に戻ることはないだろう」という。

  SMBCフレンド証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストも「日銀は当面、様子見」を続けると予想。「期待インフレの大幅な低下、もしくは世界的な市場混乱等がなければ、黒田総裁の任期まで何もしない可能性も十分ある」とみる。

  クレディ・アグリコル証券の尾形和彦チーフエコノミストは副作用などコスト・ベネフィットの観点から、「年内の追加緩和の可能性はゼロに近く、来年以降も日銀が追加緩和を実施する可能性は低い」と指摘する。むしろ、日銀の次なる行動があるとすれば、「より明確な形での長期国債買い入れの減額になる」と予想する。

すでに減額は始まっている

  日銀はこれまで目標としてきた長期国債の年間買い入れ増加ペースについて、80兆円をめどとして当面継続する姿勢を示しているが、黒田総裁は21日の国会答弁で、将来、長期国債を年間80兆円増のペースで買わなくても良くなる「可能性は高い」と指摘。70、60兆円になってもマネタリーベースは増えると述べ、買い入れペースが大きく減ることはあり得るとの見方を示した。

  ブルームバーグ調査では、日銀が80兆円のめどを引き下げる時期について4人が年内を予想、18人が来年4月までに行われるとみている。UBS証券の青木大樹シニアエコノミストは「10月の買い入れペースはすでに75兆円規模であり、事実上の買い入れ縮小はすでに始まっている」と指摘。早ければ、消費者物価の上昇が見え始める来年1月、遅くとも3月には表現を変えてくる可能性は高まっている」とみる。

  野村証券の松沢中チーフ金利ストラテジストは「年末に来年の償還増に合わせて増額しなければ、買い入れはすでに年率72兆円のペースになっている」としながらも、「日銀は引き続き『おおむね年80兆円』と言い続ける」と予想する。

  一方、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケットエコノミストは「債券市場ではこれまでの政策の強烈な残像があるため、国債買い入れ額の変動には敏感だ」と指摘。「日銀政策委員会が80兆円増のめどを明確に引き下げるのは、市場参加者が新しい枠組みに十分に慣れた後、来年度以降ではないか」とみている。

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