「憤怒の政治」が世界の成長鈍化招く-英バークレイズが警告

  • グローバル化はナショナリストの怒りの高まりと基本的に両立不可能
  • 英EU離脱、ポピュリズム台頭、トランプ氏躍進などが矛盾浮き彫り

英国民投票での欧州連合(EU)離脱選択や欧州全域でのポピュリズム(大衆迎合主義)の台頭、米共和党の大統領候補ドナルド・トランプ氏の躍進、世界各地で見られる所得格差への反発。

  こうした政治的、経済的な諸力を背景に、グローバル化の動きが風前のともしびの状態にあるとの説明がなされる事例が増えている。これは世界の金融市場にとって流れを変える事態となる可能性がある。市場は冷戦終結以降、国境を越えた自由な流れのおかげで急速に拡大していた。

トランプ氏の台頭

Photographer: Laura McDermott/Bloomberg

  もはやそうした状況にはない。これまで受け入れられていたような政治的、経済的諸制度が正当性を失い、「憤怒の政治」が先進各国で根付く中、貿易量の伸びは停滞している。英銀バークレイズは新たなリポートでこう警告した。その結末は、保護主義への傾斜であり、モノやサービス、労働力、資本の自由な移動に対する制限であり、EUや世界貿易機関(WTO)など超国家的組織の支持減退だ。

  バークレイズの欧州外為戦略責任者マービン・バース氏(ロンドン在勤)はリポートで「緩やかな脱グローバル化であっても、世界のトレンド成長率を鈍化させる公算が大きい」と指摘。「国政レベルで有権者の意思が十分に反映されていない点や、超国家的・政府間組織への主権の委任に伴う経済的および政治的な剥奪感」が反発を招いていると記した。

  バース氏は主な要因の一つとして、先進各国での中道政党への支持低下を挙げる一方、所得格差の役割は誇張されている可能性があると付け加えた。

トリレンマ

  バークレイズのリポートの内容は、米ハーバード大学のダニ・ロドリック教授(経済学)の主張に呼応する。ロドリック教授は、民主主義と主権、グローバル化は「トリレンマ」だと解説。国境を越えた通商関係と、それに付随し、経済問題を決する上での超国家的機関の権限拡大は、議会制民主主義への直接的な脅威であり、逆もまた同様だ。

  こうした分析を示すのはバークレイズが最初の金融機関ではない。バンク・オブ・アメリカ(BofA)メリルリンチは今月早く公表したリポートで、「このところの事態からは、各国が協力することに一層消極的となり、争うことをいとわなくなっているのが浮き彫りとなっている」と分析。財政政策の緩和や保護貿易主義、富の再分配はインフレ高進につながる可能性があるとして、「不平等との闘い」に備えたヘッジとして、実体経済資産を取得するよう投資家に呼び掛けた。

大転換

  アイルランド中央銀行のエコノミストを務めたデービッド・マクウィリアムズ氏は今月14日、英ウッドフォード・インベストメント・マネジメントのホームページに掲載された寄稿で、グローバル化への反発は特に米金融当局とその政策にとって大きな転換を意味するとの考えを示した。

  マクウィリアムズ氏は「ディスインフレを目標とすることにわれわれはすっかり慣れきっているため、次に来る展開に考えを切り替えるのは難しいだろう」とコメント。その内容について「中間層の不安感と、不平等の問題に対処するため、米国の政治が移民規制の強化、保護主義、賃金引き上げにかじを切れば、インフレは単に政策の意図せぬ帰結だけなく、政策そのものになるだろう」と論じた。

原題:Barclays Warns ‘Politics of Rage’ Will Slow Global Growth (抜粋)

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