東京・池袋駅北口近くに中国語の会話が飛び交う一角がある。立ち並ぶレストランの看板にも簡体字の中国語が踊る。中国河南州出身のスー・ファンさん(27)は日本に来て8年、今は自動車関係業界で働いている。日本は住みやすくしばらく働きたいと考えている。

  人口減に直面する日本経済の成長には労働力の確保が不可欠だ。8月の日本の失業率は3.1%で経済協力開発機構(OECD)加盟国でも最低レベル。有効求人倍率も1.37倍と高水準が続く。労働力不足が顕著なのが、東京五輪を控える建設やサービス産業など。担い手の不足する農業も衰退に直面している。

東京の街を行き交う外国人
東京の街を行き交う外国人
Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  安倍晋三首相は9月27日の働き方改革実現会議の初会合で、9つの検討項目の最後に「外国人の受け入れの問題」を挙げた。政府は外国人技能実習生制度に加え、国家戦略特区を活用して家事支援や農業などでも人材を受け入れる方針をすでに打ち出している。厚生労働省では経済連携協定(EPA)に基づき看護・介護人材も受け入れている。実現会議では年度末までに提言をまとめる予定だ。

  マンパワーグループの15年の「人材不足に関する年次調査」によると、人材不足を感じている日本の企業は83%に上っている。政府人口推計によると、15年で約1億2700万人近い日本の人口は2040年には約1900万人減る見通しだ。

  住民基本台帳によると、今年1月1日の外国人住民は217万4469人でこの3年間で約1割増えた。日本人住民がこの間にわずかながら減少しているとの対照的だ。厚労省の外国人雇用状況によると、15年10月末現在の外国人雇用者数は約90.8万人で、2008年の48.6万人からほぼ倍増した。

外国人雇用の状況
外国人雇用の状況
厚労省

万能薬には

   米ブルッキングズ研究所のシニアフェローのバリー・ボズワース氏は移民は成長に寄与するとはみているが、同時に政治的な側面からは非常に議論になるところで、経済停滞の万能薬になるとは言えないだろうと指摘する。実際、安倍首相は「移民政策」は取らないと明言している。

   自民党政務調査会の「労働力確保に関する特命委員会」は5月、「『共生の時代』に向けた外国人労働者受け入れの基本的考え方」をまとめた。それによれば、「わが国の活力を維持するためには外国人に今以上に活躍してもらうことが必要」で、現在の外国人労働者数が倍増しても対応できる制度を構築すべきだと提言している。

  同特命委で事務局長を務めた柴山昌彦首相補佐官は、外国人技能実習制度は「労働者受け入れの抜け穴ではないかとか、保護が十分ではないという批判がある」として、「新しい枠を作って適切な管理の下、外国人労働者を正面から受け入れるべきだと思っている」と話す。

   さらに「農業や介護など人材が不足している分野への就労希望者を対象に、5年程度の在留資格を認め、送り出し国との間で枠を定めて受け入れるべきだと思う」と提言する。ただし「永住権を認める移民政策とは異なる」とも指摘した。柴山氏は外国人が「このまま増えていっていいのか」という考えが国民の間にあってもおかしくないが、「外国人労働者を受け入れる文化を創っていくことが大事だ」と話している。
 

外国人の流入
外国人の流入
OECD

  竹中平蔵元経済財政担当相(東洋大学教授)はインタビューで、安倍首相は「ゲストワーカーを受け入れる」という言い方をしていると紹介。世論調査などでは「国内の治安が悪化するのではないか」という「心情的な反発」が強いが、移民が37%を占めるシンガポールの犯罪率が日本より低いことに触れ、「どういう風に受け入れるかが問題」と話した。

   ともに25歳のリン・ジペングさんとジャン・シュアンファンさんは中国南京市から東京に来たばかり。食べ物がおいしく環境もいいと口をそろえ、2人とも携帯電話の店で働く予定だという。日本にどれくらい滞在するつもりかと聞くと、ジャンさんは「ずっと」と即答。リンさんもうなずいて、「多分ずっと」と答えた。

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