1987年の旧国鉄の分割・民営化から29年、本州3社に続き、JR九州が25日に東京証券取引所1部に新規株式公開(IPO)を果たした。初値は公開価格比19%高の3100円となったが、将来の見方には厳しい指摘もある。

  午前9時から買い気配で始まり、9時36分に取引が成立。一時、同20%高の3120円まで上昇した。終値は同15%高の2990円。東証1部の売買金額で1位、出来高は2位だった。時価総額は4784億円となり、鉄道会社では京成電鉄を上回り、東武鉄道や名古屋鉄道に次ぐ規模となった。26日には福岡証券取引所でも株式公開する。

青柳俊彦社長(10月25日、東証)
青柳俊彦社長(10月25日、東証)
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  青柳俊彦社長は東証での会見で「上場はゴールではなく新たな出発点」と話した。「活発な売買で、われわれへの評価、期待を感じる」と述べた。

  JR九州は旧国鉄の分割・民営化時に不採算路線を多く引き継いだため、赤字での立ち上がりとなったが、不動産や外食など鉄道以外の事業にいち早く本格進出するなどし、収益源を分散。訪日外国人需要の取り込みや「ななつ星 in 九州」に代表される観光列車サービスの成功などもあり、2017年3月期には売上高、営業利益ともに過去最高を目指す。

JR九州の800系新幹線
JR九州の800系新幹線
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

「一段の成長戦略必要」

  バリューサーチ投資顧問の松野実社長は25日の電話インタビューで「一過性のお祭り騒ぎになることを懸念する」と述べた。「九州を地盤とした不動産や駅ビル、ホテル展開などで注目を集めているが、中長期的には業績展開は厳しいものがあり、今後一段の成長戦略が必要だ」と指摘した。

  野村證券の投資情報部の澤田麻希氏は、初値は「適正に評価された価格」と話す。「今後も個人投資家を中心に株価は堅調に推移するだろう」との見方を示した。

  楽天証券経済研究所の窪田真之チーフ・ストラテジストは、初値について「想定よりも高く値が付いた」との見方を示した。「高収益の駅ビルや不動産事業などの多角化展開を今後どう成長させ、また不採算のローカル線の赤字をどのように抑制するのか、この2点に注目している」と述べた。

赤字の穴埋め

  収入源は鉄道運輸以外が半分以上を占め、16年3月期は60.3%だった。同期の損益では運輸サービスは105億円の赤字で、駅ビル・不動産は204億円の黒字だった。建設や流通・外食部門も利益を出しており、全体としては運輸サービスの赤字を他事業で穴埋めする構造。鉄道運輸以外の収入比率は19年3月期には62%まで伸ばす方針で、成長のけん引役となる。

  青柳社長は25日の会見で、上場により「国鉄の民営化、分割は正しかったと証明することになる」との認識を示した。不採算の「路線廃止については、地方含めて鉄道のネットワークを維持できて今の力が発揮できていると思うので、維持する形で頑張りたい」と述べた。

  鉄道以外の収益拡大は海外でも模索する。唐池恒二会長は11日、ブルームバーグの取材に対し、「東南アジアあたりで具体的に何かないか検討している。外食のみならずマンションやホテルなど、私どもが持っている全てのサービスの中で検討している」と述べている。

資金使途

  JR九州の全株式を保有する国土交通省所管の独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構による今回の株式売り出しは全株で総数1億6000万株。うち1億2000万株を国内、残り4000万株を海外で販売した。株式売却資金は日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律に基づき、旧国鉄社員への年金や恩給、作業災害補償などの他、JR北海道やJR四国、JR貨物の経営支援にも一部使われる。

  機構の資料によると、JR東日本、西日本、東海の上場時の初値は58%、0.8%、6.7%それぞれ公開価格を上回った。

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