自分の能力、もう信じられない-ヘッジファンド運用者の悲惨な新世界

  • 過去3年の業界リターンは平均2%
  • 「わなにはまってしまった」-理屈で説明できないと現状嘆く声

ヘッジファンド運用会社バッソ・キャピタル・マネジメントを20年以上前に始めたハワード・フィッシャー氏は、米コネティカット州グリニッチにあるジュースバーの窓際で水出しメキシカン・モカを飲みながら、不安な気持ちを吐き出した。

  ここ数年の業界のリターンについて、「悲惨、とにかく悲惨だ」と言うと、「これが業界の一般的な見通しになってしまっては、私のビジネスは成り立たない」と嘆いた。

ウォール街

Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

  フィッシャー氏(57)だけではない。こうした嘆きは業界中で聞かれる。トレーディングの腕前から「万物の支配者」とかつて呼ばれたヘッジファンド運用者らを、現在進行中の危機が襲っている。彼らは今、自らの英知とリターンを生み出す能力を疑問視している。

  ブルームバーグの集計データによると、2兆9000億ドル(約301兆円)規模のヘッジファンド業界の過去3年のリターンは年平均2%と、大半のインデックス型ファンドを下回る。成績不振と高い手数料に年金基金を含む機関投資家は不満で、業界からは今年1-9月に515億ドルが流出。金融危機以来の大きさの資金流出となったことを、ヘッジファンド・リサ-チの集計データが示す。1-6月に清算されたファンド数は530前後と、2008年以降で最も多いペースだ。

  ヘッジファンド運用者らは、インデックス型投資信託の台頭やアルゴリズムに基づく取引が市場をゆがめていると批判し、主要国での超低金利政策や政治・経済をめぐる決定、規制に不満をぶつける。これに世界経済の不透明感や投資プロセスを変えるテクノロジーの激変が加わり、選び抜かれた優秀なファンドマネジャーでさえ自分の能力を疑ってしまう。

マイナス金利

  ワイス・マルチストラテジー・アドバイザーズのジョルディ・ビサー最高投資責任者(CIO)は6月の リポートで、「自分で分かっていると思っていることがもはや役に立たないという認識に、多くの投資家は徐々に至り始めているようだ」とし、「もはや意味を成さない投資の世界のわなにはまってしまったかのような感覚だろう」と記した。

  1980年代後半にスコギン・キャピタル・マネジメントを共同創業したクレイグ・エフロン氏(57)も同じ気持ちだ。ここ数年は、同氏の職業人生で最も不可解な時期だと話す。アルゴリズムと上場投信が値動きを増幅させ、業種別銘柄は同じ方向に動くようになってしまったため、1銘柄に賭けることが難しくなったと説明。10年前の米サブプライム住宅ローンの値崩れは納得できるが、日本やデンマークのマイナス金利の意味を突き詰めると分からないと話した。昨年は最高と自負したトレーディング戦略が最悪の結果となり、ファンドの成績はマイナス10%になったという。

  エフロン氏は「08年より前なら、大半において理屈が機能する戦略があったものだが、ゲームが変わってしまった。理詰めの投資家はまだ、新たな投資手法を見いだせていない」と述べた。また、業界にヘッジファンドが多過ぎるとも批判。今ある8400というファンドの数について、半減の必要があるとも語った。

手数料

  既に困難を乗り越えられないファンドも出てきた。老舗ファンドの一つ、ペリー・キャピタルを約30年前に創業したリチャード・ペリー氏は旗艦ファンドの閉鎖を先月明らかにし、自身の投資スタイルはもはや通用しないと述べた。チェサピーク・パートナーズ・マネジメントは、創業から25年を経て投資家に資金を返還するなど、最近は撤退が相次いでいる。

  生き残っているファンドも無傷ではない。ビル・アックマン氏やジョン・ポールソン氏はそれぞれのファンドが今年に入って成績のマイナス幅が20%以上に達している。ポール・チューダー・ジョーンズ氏は手数料引き下げを余儀なくされたほか、ブレバン・ハワード・アセット・マネジメントやキャクストン・アソシエーツもこれに追随している。

原題:Hedge Fund Managers Struggle to Master Their Miserable New World(抜粋)

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