T・F・メーガー氏はちょっと前まで、ヘッジファンドで働いていた。60億ドル(約6200億円)を運用するUBSオコナーだ。資金流出に悩むファンドが多い中で資産を増やしてさえいる優良なファンドだった。

  しかし6年間勤めてエグゼクティブディレクターにまで昇進したメーガー氏(36)はこの春、オコナーに比べればちっぽけな運用会社に転職することを考えていた。廃棄物回収会社ウエイスト・マネジメントの創業に携わったピーター・フイゼンガ氏のファミリーオフィス、フイゼンガ・キャピタル・マネジメントに誘われたのだ。メーガー氏は小さな新天地を試すことにした。

  フイゼンガでは資金を引き揚げようとする顧客に、むしろ投資を増やすように説得する必要はなかった。18人の小所帯の中で、同氏のために創り出された、人脈を広げパートナーを増やすという役割を果たせばよかった。入社以来、他の富裕層一族がフイゼンガに資金を預けるように働きかけファンド・オブ・ファンズのような仕組みを作ったという。

  10-20年前には、ヘッジファンドで働くというのは金融業界で最もホットなキャリアだった。ニューヨークやロンドン、香港のヘッジファンド運用会社に人が集まった。トップは億万長者になり、普通の従業員も百万長者になった。しかし金融危機が起こり、低金利とパッシブ運用、スマートベータ上場投資信託(ETF)、コンピューター生成のポートフォリオなどが現れ、運用業界では何もかもが難しくなった。

ブルームバーグ・マーケッツ誌
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資金流出

  中でもヘッジファンドは大打撃を受けた。イーベストメントのリポートによれば、7月には世界で252億ドルが業界から引き揚げられ2009年2月以来の流出規模だった。年金基金など大口投資家がチューダー・インベストメントやポールソンといった著名ヘッジファンドから資金を引き揚げた。

  従って、ヘッジファンド会社の営業マンは資金集めより投資家つなぎ止めに奔走することになると、メーガー氏は説明する。業界縮小は解雇やファンド閉鎖をもたらす。ファミリーオフィスのアッカド・キャピタル・パートナーズのブレンダン・マクミラン最高投資責任者(CIO)は「ヘッジファンド業界はキャパシティー過剰だ」と述べた。

  こうした荒れ模様の雇用市場を泳ぐ金融業界人にとって、ファミリーオフィスは白砂のビーチにヤシの木が並ぶ理想の島のように見えるだろう。100年以上にわたり、ファミリーオフィスは富裕層一族の資産管理・運用を手掛け、場合によっては個人的な問題解決にも当たってきた。

「本物の長期投資家」

  富裕層は資産額を公表したがらないので正確には分からないが、ファミリーオフィスの運用資産は世界全体で3兆-4兆ドルとみられる。ヘッジファンド業界は2兆9000億ドル前後で、そこにはファミリーオフィスからの預かり資産も含まれる。「ファミリーオフィスがコントロールする資産の規模と最近の設立ラッシュで、ファミリーオフィスという独立した業界が確立した」と、シティ・プライベート・バンクで北米のファミリーオフィスに助言するグループを率いるビル・ウッドソン氏が述べた。

  メーガー氏は、ヘッジファンド業界は今でもキャリアの踏み切り板としてベストだと言う。世界で最も優れた頭脳を持つ投資家たちと触れ合える場だからだ。しかし今は、オコナー時代のように資金集めに追われるのではなく、「本物の長期投資家」であるファミリーオフィスの資産の配分を手掛ける仕事が気に入っていると同氏は語った。

原題:Family Offices Scoop Up Talent Escaping Embattled Hedge Funds(抜粋)

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