【インサイト】ドイツ銀、回復の舞台は米国ではない-今は退却の時

ドイツ銀行のジョン・クライアン最高経営責任者(CEO)の前にはうれしくない選択肢ばかりが並んでいる。それでも、法的問題の費用を払えると市場と監督当局を安心させ資本基盤を強化し、通期黒字を回復するという仕事を、ぐんぐん迫ってくる時間切れまでに果たすために、どれかを選ばなければならない。

  関係者によれば、ドイツ銀は米国から部分的な撤退を検討している。しかし米国は投資銀行にとって世界最大の収入源であり、景気はドイツ銀の地元のユーロ圏よりもはるかにいい。コーリションによれば、ドイツ銀は米国の投資銀行業務番付で7位につけており、この地盤を失うことは利益に響くと同時に地位も失墜させるだろう。

星条旗とドイツ銀行のロゴが記された旗(ウォール街のドイツ銀行支店)

Photographer: Mark Kauzlarich/Bloomberg

  そうではあるが、米国での事業縮小は恐らく、資産運用事業の売却などに比べるとやはり理にかなっているだろう。こうした事業は不安定な投資銀行への依存を減らす貴重な多様性をもたらすからだ。世界全体では投資銀行事業はドイツ銀の利益の重しとなっている。評価損を含めた差し引きでの有形株主資本利益率は昨年、マイナス4.9%だった。これに対し、資産運用部門はプラス30.4%を確保している。

  率直に言って、欧州の銀行は世界的な野心、特に米国に関して考え直す時だ。米銀との競争はますます厳しくなっている。米銀はバランスシートの強さも収益力も欧州銀より上で、世界での市場シェアも大きい。さらに、米国に子会社を置く大手金融機関に対する規制と資本要件は厳しさを増しており、米国での事業展開には高いコストがかかる。

  ドイツ銀が今、米国事業を徹底的に見直せば、同国の新規則への対応や資産圧縮で先行することができるかもしれない。また、欧州やドイツの銀行という性質が強まれば、ドイツの議員らに守ってもらうことが容易になる。さらに、ドイツ銀の差し迫った目標が米司法省からより好条件の合意を引き出すことだとすれば、米国事業の縮小はそれ自体が米当局による罰則の一部になり得る。

  これでドイツ銀の再建が容易になるわけではない。クライアンCEOの再編計画は繰り返し障壁にぶつかっているし、恐らく練り直しが必要になるだろう。しかしともかく、今の新しい環境の中、米国で世界の重量級銀行と競争していくのは厳し過ぎる。撤退すれば米銀が労せずしてシェアを獲得することにはなるだろう。しかしこれは、ドイツ銀にとって望ましくない多くの選択肢の中で、まだしも最善の道の一つだ。株主と監督当局、政治家からもっと支持を得るためになら、決断する価値はある。

(このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピーの意見を反映するものではありません)
原題:The U.S. Is No Country for Deutsche Bank’s Recovery: Gadfly(抜粋)

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