米モルガンS、ブローカーが顧客を連れて独立-業界協定で阻止できず

モルガン・スタンレーは先月、22億ドル(約2300億円)を運用するアドバイザーのチームが退社して自分たちの会社を立ち上げるのを黙って見送るしかなかった。ウォール街の大手銀行から巨額の顧客資金を流出させるアドバイザー退社劇の一例だ。

  数カ月をかけてひそかにかつ念入りに準備をした後、カンザス州ウィチタで勤務する13人はある金曜日、800人の顧客の電話番号と電子メールを持ってモルガン・スタンレーを去った。週末は自分たちの会社に資産の預け先を移すように勧誘に大忙しだった。退社したアドバイザーを訴える権利を放棄する業界合意のおかげでこんなことが可能になる。

モルガン・スタンレー本社

Photographer: Victor J. Blue/Bloomberg

  6メリディアンという会社を作った元従業員らは、「ブローカー採用に関する協定書」という業界協約のおかげで、前の勤務先の顧客をすぐに勧誘できる。この協定書は2004年にメリルリンチとシティグループ、UBSグループの3社が作った。訴訟を減らすことや顧客に選択の自由を与えることが目的の協約に、モルガン・スタンレーも2年後に加わっていた。同社はコメントを控えた。

  協約はもともと、大手証券会社間の顧客争奪を想定して作られたが、年月がたつうちに大手を離れて独立するブローカーの手順の指針になってしまった。

  まず、誰かにペーパーカンパニーを設立して協約に参加しておいてもらう。それから退社しペーパーカンパニーを自分たちの会社にする。この方法をとると元の会社に訴えられる心配がない。そういうわけで、全国レベルの大手プレーヤーは数社しかないにもかかわらず、訴訟に関する業界平和条約に今では1500社近くが参加している。最初に協約を作った大手がその後一貫して市場シェアを落とし小規模な新興会社がシェアを伸ばすという興味深いトレンドの説明もこれでつく。

  ここ2年にはバンク・オブ・アメリカ(BofA)とドイツ銀行がそれぞれ30億ドルの顧客資産を持つチームを失うなど、大規模な独立劇が複数あった。アドバイザーの独立支援を専門にする弁護士のブライアン・ハンバーガー氏は協約参加会社の3分の1ほどを手助けしたと言う。6メリディアンもその1社だ。「今は数十億ドル規模の複数のチームとそれぞれの段階の作業をしている。年内にさらに大規模な独立があるだろう」とハンバーガー氏は述べた。

  協定はアドバイザーが顧客に関する5つの重要データに限り持ち出すことを認めている。名前と住所、電話番号、電子メールアドレス、口座タイトルだ。協定参加会社間で移籍する場合、前の会社の顧客の勧誘を禁じるなどの制限が免除される。協定に参加するには1ページの同意書を提出するだけでいい。

  独立したいアドバイザーは数カ月あるいは数年前から計画を練り、弁護士やコンサルタントといった外部の協力者を起用する。この協力者が会社を作り、その会社が協定に参加する。準備が整うとアドバイザーらは通常金曜に退社し、週末を使って顧客を勧誘する。元同僚もこれに対して防戦に努めるというわけだ。

  6メリディアンの創業者らもこれにのっとって9月9日の金曜日に退社。協定メンバーの新会社を自分たちの名前で登記し直した後すぐに勧誘を開始した。最高経営責任者(CEO)となったマーガレット・デチャント氏は、協定に「文字通り従ってやれば、退社後すぐに顧客に接触することが可能だと知っていた」と述べた。

原題:Morgan Stanley Brokers Use Treaty to Flee With Clients (1)(抜粋)

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