にらみ利かせる日銀、超長期金利「20bp程度跳ねたら何かあるかも」

更新日時
  • スティープ化を日銀がしっかり止めにくるかどうか-バークレイズ
  • 外部環境に揺らされない日銀、スティープ化あり得ない-東海東京証

日本銀行が9月に導入を決めた「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」。新しい政策の枠組みは、金融機関の収益圧迫につながる過度なイールドカーブのフラット化を食い止めただけではなく、世界的な債券売り圧力の中でも長いゾーンの金利上昇ににらみを利かせることに成功しているようだ。

  ブルームバーグのデータによると、日本の30年物国債利回りは過去3カ月で約30ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇した。米国では先週末14日、「緩和的な政策スタンスを長期にわたって維持し過ぎた場合、恩恵以上に代償を伴う恐れがある」などといった米連邦制度理事会(FRB)のイエレン議長による発言をきっかけに国債が売られ、30年債利回りは一時2.56%と、6月3日以来の高水準を付けた。

  ブルームバーグのデータによると、残存期間20年以上の日本国債の7-9月期収益率は、2010年1-3月期以降で最悪。長期金利は日銀による直近の金融政策の発表があった9月21日に6カ月ぶりのプラス圏となる0.005%を一瞬付けたものの、その後は水準を切り下げ、同28日にはマイナス0.09%まで低下した。

  こうしたタイミングで日銀が9月30日に公表した当面のオペ運営方針は、10年超の国債買い入れ額を前回から減額するというもの。長期金利はその後、マイナス0.1%と0%の間を推移している。超長期債の利回りについては、20年債が日銀会合前後の水準となる0.4%付近、30年債が0.5%付近、40年債が0.6%をそれぞれの上限のめどとして市場で意識されている。

黒田東彦日銀総裁

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  海外金利上昇の流れが止まらないと、日本国債利回りももう少しスティープ化するかもしれないと言うバークレイズ証券の押久保直也債券ストラテジストは、「そういう時に日銀がしっかり止めにくるかどうか」が注目だと指摘する。「超長期債の利回りは9月日銀会合時の水準から離れれば離れるほど、警戒感が高まりやすい」とし、「20bp程度跳ねたら何かあるかもしれない」と見込む。

  日本国債のイールドカーブは2月に日銀がマイナス金利を導入して以降、フラット化が進行した。6月にイギリスの欧州連合(EU)からの離脱が決定すると、質への逃避を背景に長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは翌月上旬に過去最低となるマイナス0.3%を付けた。超長期債の利回りも軒並み過去最低水準に沈んだ。

イールドカーブ

  「手前の金利が抑えられていると、投資家は後ろに流れてしまう」。マスミューチュアル生命保険運用戦略部の嶋村哲金利統括グループ長はこう指摘し、その結果「20年金利がマイナスに突っ込むところまでいってしまった」と説明する。「少なからず7月のブルフラットニングは困るという見方の中で、基本的に現行よりもスティープニング方向という見立てでいい」と読む。

  日銀が9月に導入した新たな緩和の枠組みで中心に据えた長短金利操作では、当座預金残高の政策金利残高にマイナス0.1%を適用し、10年物国債金利がおおむね現状程度の0%程度で推移するように長期国債の買い入れを行う。金利が上昇した場合などには10年金利や20年金利を対象に、日銀が指定した利回りで国債買い入れ(指し値オペ)を実施する。

  黒田東彦日銀総裁は講演で、「長期金利は、10年金利の操作目標を示して、これを実現するように国債の買い入れを行う」と説明。それ以外の年限については、「こうした金利操作方針と整合的な形で、マーケットにおいて形成されていくものと考えているが、おおむね現状程度のイールドカーブをイメージしている」と述べている。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の稲留克俊シニア債券ストラテジストは、「20年債や30年債の利回りはおおむね現状程度を超えないということになる」と言い、20年債利回りが0.4%、30年債利回りは0.5%程度が目安になると分析している。「金利水準を決め打ちすることはできないが、上がる方向は日銀によって止められる可能性がとても高いので大幅な上振れはなさそうだ」と語る。

米国のイールドカーブはスティープ化

  14日の米国債市場ではイエレンFRB議長の発言をきっかけにイールドカーブのスティープ化が進行した。5年債と30年債の利回り差は127bpと9月15日以来の水準に拡大した。ブルームバーグがフェデラルファンド(FF)金利先物を基に算出した12月の利上げ確率は65.9%と、1カ月前の52.3%から上昇している。

  三菱モルガン証の稲留氏は、原油相場の上昇に加え、欧州や英国で金融緩和の縮小傾向が意識され始めているほか、FRBの動向など「金利が上がる海外要因がいくつか最近出てきている」と指摘。その一方で、「日銀が指し値オペと国債買い入れの無制限オペといった二つのカードを持っているので、金利上昇を仕掛けようという動きが海外要因があったとしても広がらない」と読む。

イエレン議長の講演内容はこちらをご覧ください。

  ブルームバーグによると、10年物と40年物の日本国債利回り格差は9月14日に69bpと3月以来の水準まで拡大していたが、10月17日時点では約64bpに縮小している。

  東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは、「そもそも日銀の政策は外部環境に揺らされない」とし、「ショートエンドと10年をグリップするので、ロングエンドだけ暴れることはない」と分析。「カーブが基本的に立つことはあり得ない」とし、来年3月までの超長期債利回りの上限を20年債が0.5%、30年債が0.6%、40年債が0.7%と見込んでいる。

(第11段落以降を追加して更新します.)
    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE