岡山県の企業年金基金が運用資産の9割を海外投資に充て、「鯨」と称される世界最大の年金基金の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を上回る運用成績を上げていることが分かった。マイナス金利下で成長力にも乏しい日本での投資は1割にとどめ、欧米や新興国に資金を分散させている。

  この年金基金は、地元の機械金属工業212社が加盟する岡山県機械金属工業厚生年金基金。運用執行理事(CIO)の木口愛友氏はブルームバーグのインタビューで、地域別の資産配分について「米国5割、欧州3割、新興国1割、日本1割」と説明。国内投資が1割にとどまっているのは、「成長力の劣る地域や国には基本的に投資をしない原則があるため」と述べた。

GPIFの高橋則広理事長
GPIFの高橋則広理事長
Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  2016年度の運用資金額は480億円。09ー15年度の平均運用利回り(各年度を単純合算後、7で割った数値)は7.6%と、GPIFの5.3%を上回った。この7年間でGPIFを下回ったのは11年度の1年だけだった。16年4-9月の実績について、木口氏は「マイナス0.5ー0.6%くらいで、国のマイナス2.35%をアウトパフォームしている」と述べた。

  GPIFはパフォーマンスの向上に向け国債偏重の資産配分を見直しているとはいえ、6月末の運用資産構成は国内債(39.16%)と国内株(21.06%)で約6割を占め、外国債は12.95%、外国株は21.31%となっている。

ソブリン投資はせず

  木口氏は、GPIFを上回る運用成績を出している理由について「低い金利の債券を持ち続けるより、他の医薬品特許権やバンクローン、天然資源などに分散した方が利回りが高い」と言う。「バイアンドホールドしているソブリンは一つもない」とも述べ、世界的な低金利の中で国内外の国債には投資していないことを明らかにした。

  全体の4割強を占める低リスク投資(200億円)も「ほとんどがオルタナティブ(代替投資)系」とし、モーゲージ債やエマージング債のロングショートなどを挙げた。今年に入り、日本銀行のマイナス金利政策や英国の欧州連合(EU)離脱問題など市場の波乱要因は多く、相場環境の変化で「あまり被害を受けないようにしよう」という発想で運用に臨んでいると述べた。

  一方、国内投資は日本株投資が中心になっており、価格が上昇している不動産については「非常に怖い」と述べ、投資していないという。日銀が長短金利操作に乗り出したことで、期間の長い金利が上昇する可能性に加えて、「基本的にGDPが伸びない国で不動産価格が上がる理由はない」とみている。

国内投資は無駄

  老後の蓄えを預かる年金基金は積極的なリスクを取りにくいのが実情だ。今年4-6月期まで2四半期連続で巨額の運用評価損を計上したGPIFは、国会でも野党から追及を受けることが多い。

  そうした中、岡山県機械金属工業厚年基金が加盟事業者から、海外投資9割の運用方針で支持を受けているのは、「機械金属業界はメキシコやタイなど海外に工場を持つなど、グローバル化が先行していたからだ」と木口氏は話す。

  同県の機械金属業界には、世界シェア5位の船舶スクリューメーカーのナカシマプロペラなどがあり、「グローバル投資中心に抵抗感がない。国内に投資しても無駄だろうという事業者が多い」と言う。木口氏は住友生命保険やラッセル・インベストメントを経て、09年から同年金基金でCIOを務めている。

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